そもそも「加算」って何? 園の収入がどう決まるのかを調べました
処遇改善等加算、ICT推進加算、療育支援加算——「加算」とつく言葉が多すぎて混乱したので、大もとの仕組みを調べました。保育所の場合、加算は23種類。減らされる項目も6つあります。国の通知を読んで、園の収入の決まり方と、人件費が何を前提に積算されているのかを整理しました。
「処遇改善等加算」「保育ICT推進加算」「療育支援加算」。
「加算」とつく言葉が多すぎます。 これを書いている本人が、処遇改善の記事とICT加算の記事を書いたあとで「この2つは同じものだっけ?」と分からなくなりました。
なので大もとを調べました。結論から言うと、「加算」は制度の名前ではありません。
まず、園に入るお金の全体像
保育所や認定こども園に入る運営費は「公定価格」といいます。国が単価を決めていて、園ごとに勝手に決められるものではありません。
組み立て方は、国が出している申請様式を見るとよく分かります。保育所の様式は「施設型給付費等にかかる加算(調整)」という表題で、項目がこの順番に並んでいます。
| 区分 | 項目数 | 中身の例 |
|---|---|---|
| 基本加算部分 | 10 | 処遇改善等加算、配置改善加算、休日保育加算 など |
| 加減調整部分 | 5 | 分園の場合、施設長を配置していない場合 など |
| 乗除調整部分 | 1 | 定員を恒常的に超過する場合 |
| 特定加算部分 | 13 | 主任保育士専任加算、療育支援加算、保育ICT推進加算 など |
土台になるのが「基本分単価」で、その中身は国の通知にこう書かれています。
基本分単価 = 事務費(人件費、管理費) + 事業費
子ども1人あたりいくら、という土台の単価で、年齢・定員規模・地域・保育時間で変わります。
まとめると、土台の単価があって、そこに23の加算が乗り、6つの調整で増減する——これが園に入るお金の形です。
調整のなかには、引かれるものが含まれています。 ここはあとで書きます。
加算は23種類あります
保育所の場合、国の通知は加算を2つに分けています。
人件費に関係するもの
| 処遇改善等加算(区分1・2・3) | 職員の賃金改善 |
| 1歳児・3歳児・4歳以上児の配置改善加算 | 基準より手厚く配置した場合 |
| 主任保育士専任加算 | 主任を担任から外すための代替職員 |
| 療育支援加算 | 障害児を受け入れ、地域の療育支援に取り組む場合 |
| 事務職員雇上費加算 | 事務職員の配置 |
| チーム保育推進加算 | 経験年数の長い職員を加配する場合 |
| 栄養管理加算 | 栄養士の配置など |
管理費に関係するもの
| 減価償却費加算/賃借料加算 | 建物にかかる費用 |
| 冷暖房費加算/除雪費加算/降灰除去費加算 | 地域の事情によるもの |
| 高齢者等活躍促進加算 | 高齢者などを雇用した場合 |
| 施設機能強化推進費加算 | 防災の取り組み |
| 小学校接続加算 | 小学校との連携 |
| 第三者評価受審加算 | 第三者評価を受けた場合 |
| 保育ICT推進加算 | ICTの導入 |
| 特別地域保育体制確保対応加算 | 離島や過疎地域 |
これに休日保育加算、夜間保育加算、副食費徴収免除加算が加わります。基本加算部分の10項目と特定加算部分の13項目、あわせて23種類です。
除雪費や降灰除去費まであります。 北海道の園と鹿児島の園で必要なものが違う、というところまで単価が分かれているわけです。
だから「加算」は制度の名前ではありません
ここが混乱のもとでした。
処遇改善等加算も、保育ICT推進加算も、この23個のうちの1つずつです。同じシリーズの続き物ではありません。名前が似ているだけで、中身はつながっていません。
「加算」は、公定価格に上乗せされる仕組みの総称です。「保険」という言葉が生命保険と火災保険をまとめて指すのと同じで、それ自体は中身を表していません。
引かれる項目も6つあります
加算の裏に「調整」があります。
保育所の場合、こうなっています。
加減調整部分(5項目)
- 分園の場合
- 施設長を配置していない場合
- 土曜日に閉所する場合
- 安全計画の策定等をしていない場合
- 経営情報等の報告を行っていない場合
乗除調整部分(1項目)
- 定員を恒常的に超過する場合
後ろの2つは新しいものです。とくに「安全計画の策定等をしていない場合」については、国の資料に「減算を創設」とはっきり書かれています。
これを行っていない施設・事業所を対象とした「安全計画の策定等をしていない場合」の減算を創設し、令和8年7月から適用する。
安全計画は法令で義務づけられているものですが、作っていないと収入が減るところまで来ました。園内で「安全計画を見直す」という話が急に出てきたら、これが背景かもしれません。
いちばん大事な違いは「使い道が縛られているか」
23種類あるといっても、性格は同じではありません。保育士にとっていちばん効くのは、ここです。
- 処遇改善等加算 … 別の記事で書いたとおり、職員の賃金に充てる義務があります。 賃金改善の内容を職員に周知することも要件です
- 保育ICT推進加算 … こちらの記事で書いたものですが、賃金に充てる義務はありません
同じ「加算」でも、片方は自分の給与に直結し、片方はしません。 「加算がついた」と聞いたときに、どちらの話なのかで意味がまったく変わります。
算定の仕方も違います。処遇改善等加算の区分1は、職員の平均経験年数で加算率が決まります。
| 職員1人あたりの平均経験年数 | 加算率 |
|---|---|
| 10年以上 | 12% |
| 5年以上6年未満 | 7% |
| 1年未満 | 2% |
一方で定額のものもあります。種類ごとに計算方法がばらばらです。
加算を取るために「やっていること」が要るものもあります
もうひとつ、知っておくと園の動きが読めるものがあります。
主任保育士専任加算や事務職員雇上費加算には、「複数事業等実施要件」というものがあります。次のようなことを実施していないと、加算が取れません。
- 延長保育事業
- 一時預かり事業(一般型)
- 病児保育事業
- 乳児が3人以上利用している
- 障害児が1人以上利用している
- 災害等が発生した場合の取組の体制整備 など
つまり「この事業をやると、別の加算が取りやすくなる」という関係があります。
そして令和8年度から、この選択肢に「乳児等通園支援事業」が追加されました。こども誰でも通園制度のことです。
主幹教諭等専任加算、主任保育士専任加算、事務職員雇上費加算、高齢者等活躍促進加算及び主幹教諭等の専任化により子育て支援の取組を実施していない場合の減算の、複数事業等実施要件について、乳児等通園支援事業の実施を選択肢の一つに追加し、実施の促進を図る。
園が誰でも通園制度に手を挙げる理由の一つが、ここにあります。 その事業単体の収支だけでなく、他の加算が取れるようになるという効き方をします。
人件費は、いくらで積算されているのか
最後に、扱いに注意がいる数字を1つ。
私立保育所についての通知に、委託費がどんな給与を前提に積算されているかが書かれています。通知自身の言葉では、こういう位置づけです。
この表は、私立保育所への委託費に係る予算積算上の給与格付けやそれに基づいて算出した人件費(年額)を参考として示したもの
保育士の場合、こうなっています。
| 地域区分 | 人件費(年額) |
|---|---|
| 20/100地域(いちばん高い) | 548万円 |
| 12/100地域 | 512万円 |
| その他地域(いちばん低い) | 458万円 |
| 全国平均 | 491万円 |
「20/100地域」って何のこと?
この「20/100」は、地域手当の支給割合のことです。20%という意味になります。
公定価格の地域区分は、こう決められています。
国家公務員及び地方公務員の地域手当の支給割合に係る地域区分に準拠する
国が出している一覧を見ると、20/100地域は東京都の特別区(23区)でした。区分は 20/100・16/100・15/100・12/100・10/100・6/100・3/100 と「その他地域」の8段階で、一覧に載っていない市町村は「その他地域」になります。上乗せはありません。
もうひとつ知っておくとよいのは、適用されるのは園がある場所の区分だということです。子どもがどこに住んでいるかではありません。
他の市町村の子どもが利用する場合も、地域区分は施設の所在地の区分が適用されます
だから、地域で90万円の幅があります
地域手当が地域区分ごとに違うので、東京23区の園と、一覧に載っていない市町村の園では、保育士1人あたりの積算額に90万円の差がついていることになります。
なお「全国平均」も実在する地域の額ではなく、加重平均で出した地域手当の全国平均値を使って計算した額とされています。
ほかの職種の全国平均は、所長572万円、主任保育士559万円、調理員等429万円です。
いずれも賞与や地域手当を含めた年額で、処遇改善等加算の区分1・2・3は含まれていません(これに上乗せされる想定です)。
「自分の給与と違う」と思った方が多いと思います。ただし、通知自身が2つの注意を書いています。
ひとつは、単純には比べられないということ。
職員の人数や経験年数、賃金体系等は保育所ごとに異なり、例えば、委託費で算定されている職員数(配置基準)を超えて職員を雇用している保育所では、その職員数に応じた職員1人当たりの給与水準となることも考えられるなど、本通知で示す人件費と実際に支払われる人件費との差額のみをもって単純に給与水準の適否を判断することはできないこと。
基準より多く職員を雇っていれば、1人あたりの額は下がります。 これは園が悪いという話ではありません。
もうひとつは、逆向きの注意です。
本通知で示す1人当たりの人件費を理由に給与水準を低下させることは不適切であること
「国の積算がこの額だから、それに合わせて下げる」は駄目、ということです。上限として使うものではない、と国が明示しています。
この2つはセットで読む必要があると思います。低いことの説明にも、下げることの根拠にも使えない数字です。
明日、確かめられること
3つにまとめます。
- 「加算」という言葉が出てきたら、どの加算の話か確かめる。 23種類あって、中身はつながっていません
- 使い道が縛られているかを見る。 処遇改善等加算なら自分の給与に直結します。それ以外はしません
- 自分の園がどの加算を取っているか、聞いてみてもいい。 特に処遇改善等加算は、賃金改善の内容を職員に周知することが要件です。聞くのは特別なお願いではありません
園長先生が園児数を気にする理由も、ここにつながります。待機児童の記事で書いたとおり、公定価格は基本的に実際の利用児童数に連動します。加算の多くも児童数や職員数に紐づいています。
園の収入は、子どもの数と、園が何をやっているかで決まる。 そう考えると、日々の話の背景が少し見えてきます。
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