「処遇改善」って結局どこに入ってるの? 3種類ある加算を整理する
処遇改善の加算は3種類あって、性格がまったく違います。昇給の原資になるもの、全員の給料を上げるためのもの、役職についた人への上乗せ。「ついてるはずなのに実感がない」の理由と、園には配分を職員に知らせる義務があることを整理します。
「保育士の処遇改善」というニュースは、これまで何度も流れてきました。でも自分の給与明細を見て、「どこが処遇改善の分なんだろう」と思ったことはないでしょうか。
実は、この分かりにくさには理由があります。処遇改善のお金は1種類ではなく、3つに分かれていて、それぞれ性格がまったく違うからです。
まず、3つをざっくり
こういう役割分担になっています。
① 昇給のためのお金
毎年少しずつ給料が上がる、その原資です。園の職員の平均経験年数が長いほど、園に入る額が増えます。制度上の名前は「区分1(基礎分)」です。
大事なのは、これは「今月からいくら増える」という性質のお金ではないということ。定期昇給を支えるためのものなので、変化はゆっくりです。
② 全員の給料を上げるためのお金
こちらは職員全員が対象で、はっきり「賃金改善」を目的にしたお金です。名前は「区分2(賃金改善分)」。
③ 役職についた人への上乗せ
副主任保育士・専門リーダーや、職務分野別リーダーなど、決められた研修を修了して役職についた職員が対象です。名前は「区分3(質の向上分)」。
金額の目安は、副主任保育士等が月額4万円、職務分野別リーダー等が月額5千円という単位で計算されます。
「ついてるはずなのに実感がない」の理由
3つ並べると見えてきます。
①は昇給の原資なので、そもそも急に増えるものではありません。③は役職についていないと対象外です。新人〜数年目のうちは、③は基本的に関係ありません。
では②はどうかというと、こちらは全員が対象です。ただし、これは園に入るお金であって、誰にいくら配るかは園が決めます。
つまり「園に加算がついている」ことと「自分の給料が上がる」ことは、自動的にはつながっていません。ここが「実感がない」の正体だと思います。
でも、園が好きに使えるわけではありません
配分は園が決めますが、守らなければいけないルールがあります。
②と③に共通するルール
- 加算額の半分以上は、基本給か「毎月決まって払われる手当」で改善すること
- 前の年度より、職員に払う賃金の総額が下がらないこと
- ほかの手当を下げて帳尻を合わせないこと
1つ目が効きます。半分以上はボーナスや一時金ではなく、毎月の給与として支払われる必要があります。 「加算はもらってるけど賞与に少し乗ってるだけ」という状態は、ルール上そうはならないはずだ、ということです。
③だけ、さらに厳しくなっています
- 加算額の全額を賃金改善に充てること
- 基本給か、役職手当・職務手当のように毎月決まって払われる手当で支払うこと
②が「半分以上」なのに対して、③は全額です。支払い方も限定されています。役職についた人への上乗せは、より確実に毎月の給与へ届くようになっている、ということです。
いちばん知っておいてほしいこと
②と③を受け取るための条件の中に、こういう項目があります。
賃金改善の具体的な内容を職員に周知
園には、加算をどう配分したか職員に知らせる義務があります。 お願いすれば教えてもらえる、という話ではありません。知らせることが、加算を受け取るための条件そのものです。
さらに①の条件にも、職位や職責に応じた賃金の決まりを就業規則などに書面で整備して、非常勤の職員も含めた全員に周知することが含まれています。
つまり「自分の園の加算がどうなっているか分からない」という状態は、制度としては想定されていません。聞くのは特別なお願いではない、ということです。
聞いてみるなら
面談や説明の機会があれば、こういう聞き方ができます。
- うちの園は、区分2と区分3を取っていますか
- その分は、基本給と手当のどちらで支払われていますか
- 自分は区分3の対象になりますか。なるとしたら何の研修が必要ですか
最後の質問は、若いうちほど意味があります。③は研修を修了しないと対象になりません。 そして園に入る加算額そのものも、研修を修了した職員が少なければ、その分だけ小さくなる仕組みです。研修を受けることが、自分の給与にも園の収入にもつながっています。
補足:「加算Ⅱ」という言い方を聞いたら
ベテランの先生や園長先生が「加算Ⅰ」「加算Ⅱ」「加算Ⅲ」と言うことがあります。これは令和7年度まで使われていた古い呼び方です。
3つあった加算は令和7年度から1つに統合され、いまは区分1・2・3という呼び方になりました。対応はこうです。
| 古い呼び方 | いまの呼び方 |
|---|---|
| 加算Ⅰ(基礎分) | 区分1(① 昇給のためのお金) |
| 加算Ⅰ(賃金改善要件分)+ 加算Ⅲ | 区分2(② 全員の給料を上げるお金) |
| 加算Ⅱ | 区分3(③ 役職への上乗せ) |
統合されたのは、「制度が複雑で分かりにくく、事務作業も煩雑」という声が現場や自治体から上がっていたためです。分かりにくいと感じていたのは、あなただけではありませんでした。
まとめ
処遇改善の加算は、昇給の原資・全員の賃金改善・役職への上乗せ、の3つに分かれています。実感が湧きにくいのは、性格の違う3つがまとめて「処遇改善」と呼ばれているからです。
そして、その配分を職員に知らせることは園の義務です。気になったら、聞いていい話だと思います。
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