制度のきほん

処遇改善は調理員も運転手も対象です ただし区分で範囲が違います

栄養士はもらえるのか。パートはどうか。園に入った分を園が取っているのではないか。

この3つには、国の資料に答えがあります。 しかも、処遇改善等加算のFAQの1問目と2問目です。よく聞かれるから最初に置かれている、ということだと思います。

ひとまず、この表だけで足ります

区分1(基礎分)区分2(賃金改善分)区分3(質の向上分)
何のお金か平均経験年数の上昇に応じた昇給職員の賃金の改善技能・経験の向上に応じた追加的な賃金改善
誰が対象か調理員・栄養士・事務・運転手・非常勤を含む、通常の教育・保育に従事するすべての職員左と同じ原則は発令を受けたリーダー職。職種と雇用形態は問わない
使い道賃金改善額と突き合わせる条文は無い加算額以上の賃金改善が要件同左
払い方—区分2と区分3を合わせて1/2以上を基本給か毎月の手当同左
1人あたりの上限——月4万円(若手リーダー等は原則5千円)
共通の条件内容を就業規則等で整備し、全職員に周知すること

以下は、それぞれの根拠と、間違えやすいところです。

まず、区分で範囲が違います

処遇改善等加算は3つに分かれています。名前は令和7年度から変わりました。

区分通知での呼び方中身
区分1基礎分職員の平均経験年数の上昇に応じた昇給
区分2賃金改善分職員の賃金の改善
区分3質の向上分技能・経験の向上に応じた追加的な賃金改善

「加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」と呼んでいたものです。 ベテランの先生が「加算Ⅱ」と言っていたら、いまの区分3のことです。3つの整理はこちらの記事にまとめてあります。

そして誰がもらえるかは、区分によって違います。

区分1・2は、職種で切られていません

FAQの1問目です。

問 処遇改善等加算の区分1・区分2による賃金の改善は、保育士や幼稚園教諭だけが対象になるのでしょうか。

答 保育士や幼稚園教諭だけでなく、事務職員、調理員、栄養士やスクールバスの運転手等を含め、通常の教育・保育に従事するすべての職員(非常勤職員含む)が対象になります。

スクールバスの運転手まで名指しで書かれています。 そして非常勤も含みます。

「保育士の処遇改善」という言い方が広まっているせいで、調理室や事務室の人は自分に関係ないと思っていることがあります。 区分1と区分2については、そうではありません。

区分3は原則リーダー職。ただし職種では切られていません

2問目がこちらです。

問 処遇改善等加算の区分3による賃金の改善は、すべての職員(非常勤職員も含む)が対象になるのでしょうか。

答 区分3は、リーダー的な役割などを果たしている中堅の保育士等の専門性の向上を図りつつ、キャリアアップの仕組みを構築するためのものです。そのため、区分3による賃金の改善は、原則として(※)、処遇改善等加算通知第2の3の(1)のⅰ「副主任保育士等」及びⅱ「職務分野別リーダー等」としています。

なお、上記に該当する場合には、事務職員、調理員、栄養士やスクールバスの運転手等であっても、また、非常勤職員であっても、賃金の改善の対象とすることを妨げるものではありません。

区分3は、職種ではなく役割で決まります。 副主任保育士等・職務分野別リーダー等(幼稚園なら中核リーダー・専門リーダー・若手リーダー)としての発令を受けていれば対象で、そこに職種の縛りはありません。

「非常勤だから無理」も、条文上はそうではありません。 発令を受け、経験年数と研修の要件を満たしていれば入ります。

区分2と区分3は、入った額が全額賃金になります

いちばん誤解されているのがここだと思います。通知には「区分2及び区分3に係る共通の要件」として、こう置かれています。

区分2と区分3のそれぞれにおいて、「加算による改善等見込総額」が「加算見込額」を下回っていないこと。また、加算当年度の翌年度において、加算による改善等実績総額が加算額を下回った場合は、その全額を速やかに職員の賃金(略)として支払うこと

入った加算額以上の賃金改善をしていることが条件です。 足りなければ、翌年度に全額を払うことになります。園の運営費として残す、という道が制度上ありません。

FAQにも、残額が出た場合の扱いが書かれています。

なお、賃金改善実績報告書において加算残額が発生している場合には、翌年度に、その全額を一時金等により職員の賃金改善に充てる必要があります。

区分1には、同じ条文がありません

注意したいのは、いま引いた条文が区分2と区分3の共通の要件として書かれていることです。区分1(基礎分)には、この「加算額を下回らない」という形の条文が置かれていません。

区分1は、通知の目的の説明で「職員の平均経験年数の上昇に応じた昇給に要する費用」とされています。職員が長く勤めたぶん人件費が上がる、それを公定価格で見る、という性格のものです。区分2・区分3のように、その年の賃金改善額と突き合わせる作りにはなっていません。

代わりに区分1には、キャリアパス要件がかかります。

ア 職員の職位、職責又は職務内容等に応じた勤務条件等の要件(職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。

イ アに掲げる職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)を定めていること。

アが「どの役職にどういう条件か」、イが「その役職にいくら払うか」です。両方を就業規則等に書いて、全職員に知らせることまでが1セットです。

もう1つ、研修についての条件があります。

職員の職務内容等を踏まえ、職員と意見を交換しながら、資質向上の目標並びに次のア及びイに掲げる具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修(略)の実施又は研修の機会を確保し、それを全ての職員に周知していること

ア 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施するとともに、そのフィードバックを行うこと。

イ 幼稚園教諭免許状・保育士資格等を取得しようとする者がいる場合は、資格取得のための支援(例えば、研修受講のための勤務シフトの調整や休暇の付与、交通費、受講料等の費用負担の援助等)を実施すること。

イが具体的です。資格を取ろうとしている人がいるなら、シフトの調整、休暇、交通費、受講料の援助まで例に挙がっています。 これを実施していることが、区分1の条件に入っています。

半分以上は、基本給か毎月の手当です

払い方にも指定があります。

区分2と区分3を併せた加算による改善見込額は、1/2以上を基本給・決まって毎月支払われる手当により改善すること。

これは「半分は園が自由に使える」という意味ではありません。 残り半分も賃金改善で、形が一時金などでもよい、というだけです。

なぜ半分以上を基本給側に寄せるのかは、通知の目的から読めます。

賃金体系の改善を通じて「長く働くことができる」職場環境を構築し

一時金は年によって出したり出さなかったりできますが、基本給は下げにくい。そこを狙った条文です。

なお、下回ってしまった場合の扱いもFAQにあります。

年度途中に職員が急に休業を取得した場合など、賃金改善計画書策定時に想定していなかった事情が発生した影響により、(略)1/2を下回った場合については、加算認定を取り消す必要はありません。

配分に傾斜はつけられます

全員に同額、ではありません。FAQの44問目です。

処遇改善等加算に係る賃金改善要件分を特定の保育従事者等に合理的な理由なく偏って配分するといった、恣意的な賃金改善が行われないよう留意する必要があります。

従って、若手職員への配分を厚くする、保育従事者の経験に応じて傾斜をつけるなど、合理的な理由により施設の方針に基づき賃金改善を行うことは差し支えありません。

禁じられているのは「合理的な理由なく偏らせること」です。 園の方針で差をつけること自体は認められています。だから、同じ園の同じ職種でも金額が違うことがあります。

明日、確かめられること

  1. 自分がどの区分の話をしているのかを確かめる。 区分1・2なら調理員も栄養士も事務も運転手も非常勤も対象、区分3は発令を受けたリーダー職が原則です
  2. 調理室や事務室の人にも伝える。 「保育士の処遇改善」という呼び方のせいで、自分は関係ないと思っている人がいます
  3. 賃金改善の内容が周知されているかを見る。 就業規則等で整備して全職員に周知することが要件です。加算の仕組みそのものが分かっていると、聞きやすくなります
  4. 金額が人によって違っても、それ自体は制度違反ではありません。 合理的な理由があれば傾斜は認められています。気になるなら、理由のほうを聞きます
  5. 資格を取ろうとしているなら、園の支援を聞いてみる。 シフトの調整、休暇の付与、交通費や受講料の援助。これらを実施していることが、区分1の条件として通知に例示されています

加算が入っているのに実感がない、という話の原因は、園が抜いているからではないことが多いはずです。 対象が限られていたり、一時金に寄っていたり、そもそも知らされていなかったり。制度の側は、区分2と区分3について全額を賃金に回すことを求め、どの区分でも内容を全職員に知らせることを要件にしています。

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