制度のきほん

「こども誰でも通園制度」って何? 2026年4月から全国で始まりました

「こども誰でも通園制度」という名前を、どこかで見たことがあるかもしれません。

ひとことで言うと、保護者が働いていなくても、0〜2歳の子どもを園に通わせられる制度です。令和8年度(2026年4月)から、法律に基づく給付になり、全国の自治体で実施されることになりました。

保育所で働いていると、いずれ自分の園にも関わってくる可能性があります。国の資料を読んでみたので、順番に整理します。

そもそも、なぜこんな制度ができたのか

きっかけになった数字があります。

こども家庭庁の資料によると、0〜2歳の子どものうち、約5割(約125万人)はどこにも通っていません。 一方、3〜5歳で通っていない子は約3%です(いずれも令和6年度の推計)。

つまり0〜2歳のときだけ、「家にいるのが普通」という状態になっていた、ということです。

これまでの保育は「保育が必要な家庭」を対象にしてきました。働いている、病気である、介護している——そういう理由がある家庭です。理由がなければ、園に通う道はほとんどありませんでした。

そこを変えたのがこの制度です。理由を問わず、どの子も通えるようにする。国の資料では、その目的がこう書かれています。

全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備する

「通ったほうが育ちにいい」の根拠は?

そもそも、園に通ったほうが子どもの成長にいいと、なぜ言えるのでしょうか。

資料を読み直してみると、「こどもの成長の観点からの意義」として、こう書かれています。

家庭とは異なる経験や、地域に出て行って家族以外の人と関わる機会が得られる。

同じ年頃のこども同士が触れ合いながら、家庭だけでは得られない様々な経験を通じて、ものや人への興味や関心が広がり、成長していくことができる。

年齢の近いこどもとの関わりにより、社会情緒的な発達を支えるなど成長発達に資する豊かな経験をもたらす。

ただ、これを裏づける研究や調査は、資料の中に示されていません。 「意義」として3行並べてあるだけです。

そして同じ資料に、こうも書かれています。

こども誰でも通園制度の実施状況を随時把握・確認することに加え、制度の趣旨・目的が達成されているのかを確認する等、効果検証していく必要

効果があるかどうかは、これから確かめる段階ということになります。全国で始めてから検証する、という順番です。

資料の中に、ひっかかる点もあります

同じ資料に、こういう記述があります。

乳幼児期は、安全が守られ、安心して過ごすことができる環境のもと、周囲の人やものとの相互的な関わりを通して、心身が成長・発達していく時期。この時期は、とりわけ、身近な人との応答的な関わりの中で、その後の発達の土台ともなる自己肯定感や他者への信頼感などが育まれていくことが大切

安定したつながりが土台になる、という話です。ところが月10時間の通園は、その条件とは違います。資料自身がそれを認めています。

こどもと保育士が同じ顔触れで日々過ごす保育所とこども誰でも通園制度では、こどもとの関係性などの条件に違いがあります

「関わりの安定が大事」と言いながら、月に数回だけ通う制度を作っている。 資料の中で、この2つは並んだままになっています。

資料はこれを、定期利用を勧めることで埋めようとしているように見えます。園や曜日を固定すれば「保育者とこどもの関係が構築される」と書かれています。

保育士の側から見ると、ここが分かれ目になります。毎回ちがう子が来るのか、同じ子が通ってくるのかで、できることがまったく変わります。

もうひとつの狙いがあります

「こどもの育ちのため」とは別に、もっと具体的な狙いが書かれています。見えていない子を見つけることです。

本制度の創設により、多くの未就園児が通ってくることから、支援を必要としているにも関わらずこれまで把握が困難であったこどもについて、児童虐待の未然防止や要支援児童等の早期発見に結び付けていくきっかけとなることが考えられ

0〜2歳の約5割が、どこにも通っていない。裏を返せば、その子たちは日常的に保育の専門職の目に触れていないということです。健診や訪問はあっても、毎週会う大人はいません。

市町村については、こうも書かれています。認定を申請する人としない人、認定を受けた人がどのくらい使っているか。その情報自体を、支援が必要な家庭を見つける手がかりにする、と。

そして現場に対しては、こうです。

気になるこどもや保護者を把握した場合には、保育所等と併設している事業所では保育所等の園長や主任保育士等に相談する

保育士が、その「気づく人」になります。 月に数回しか会わない子の変化に気づけるのか、という問題はありますが、少なくとも制度はそれを期待しています。

2つ目の狙いのほうが、話としてはっきりしています。 「通ったほうが育ちにいい」はまだ根拠が示されていませんが、「今どこにも繋がっていない子が、月に数回でも専門職に会う」のは、それ自体がはっきりした変化です。

一時預かりと、どう違うのか

いちばん混乱するのがここです。「一時預かりと同じでは?」と思うところです。

国の資料に、この2つを並べた表があります。要点はこうです。

こども誰でも通園制度一時預かり事業
考え方こどもの成長のために「通う」保護者の必要に応じて「預ける」
きっかけ保護者のニーズに関わらない利用保護者のニーズが生じたときに利用
位置づけ給付(全国どこでも共通)事業(自治体が判断して実施)

主語が違います。

一時預かりは「保護者が困ったから預ける」。誰でも通園は「子どものために通う」。だから資料には、保護者の用事のために近くの園に預けるような使い方は「望ましい利用方法とは言えません」とはっきり書かれています。そういうときは、まず一時預かり事業を利用することが考えられる、と。

もうひとつの大きな違いが「給付」であることです。給付になったので全国どの自治体でも実施され、子どもに一定の権利性が生じるとされています。一時預かりは自治体が実施するかどうかを判断する事業なので、ここが根本的に違います。

どんな子が、どのくらい来るのか

ここが現場にとって、いちばん実感のわく部分かもしれません。

対象は0歳6か月から満3歳未満で、保育所などに通っていない子です。

使えるのは月10時間まで。 最低1時間から、そのあとは30分単位で使えます。

10時間と聞いてピンとこないかもしれませんが、1回2時間なら月5回です。毎日来るわけではありません。ここが保育所とまったく違うところです。

そして、自分の自治体が何時間に設定しているかは調べる必要があります。 令和8・9年度は経過措置があって、市町村が条例で3時間〜10時間未満の範囲で決められることになっているからです。10時間とは限りません。

使い方も2通りあります。

  • 定期利用 … 園・曜日・時間を固定して通う
  • 柔軟利用 … 子どもに合う園を探している間や、里帰り出産のときなど、そのつど使う

資料では、定期利用のほうが保育者と子どもの関係をつくりやすく、園としても体制の見通しが立てやすいと書かれています。実際、毎回違う子が来るより、同じ子が来るほうが見やすいはずです。

誰が見るのか

配置と資格は、一時預かり事業に準じた形です。

園の空き定員を使う「余裕活用型」なら、その園の基準がそのまま適用されます。定員とは別に枠を設ける「一般型」の場合は、設備運営基準にこう定められています。

年齢従事者1人あたり
乳児おおむね3人
満1歳〜満3歳未満おおむね6人

これに加えて、従事者の半数以上が保育士であること、配置する従事者が2人を下回らないことが必要です。

保育士以外の人が入る場合は、子育て支援員研修の新しいコース(乳児等通園支援事業)を修了する必要があります。ただし制度は令和8年4月1日に全国一斉に始まる一方、この研修が開講するのは令和8年の夏以降。多くの保育人材が必要になることもあって、経過措置が置かれています。地域型保育や一時預かりのコースを修了した人は、当面そのまま従事できる形です。

その場合、園には宿題があります。従事し始めてから3か月以内に「習熟度チェックリスト」で理解度を確認し、足りなければ令和9年3月末までに研修動画を見せるなどの対応をとり、実施日を記録することが求められています。市町村は指導監査でここを確認します。

現場の仕事は、どう増えるのか

正直なところ、預かって終わりではありません。

初めて来る子には、事前面談と事後面談があります。

  • 事前面談は30分以上。制度の説明に加えて、子どもの特徴や保護者の意向を聞き取ります。対面が基本とされています
  • 事後面談は初回利用の直後に10分以上。その日の子どもの様子を保護者に返します

面談記録を残すことも求められています。この2つをやると園に加算がつく仕組みなので、やるかやらないかではなく、やる前提の設計です。

さらに、こういうものも必要になります。

  • 全体的な計画と、一人ひとりの個別計画(保育所に併設なら、園の全体的な計画の一部にしてもよい)
  • 活動や子どもの記録、それを使った振り返り
  • 安全計画の策定(法令で義務づけられています)

毎回ちがう子が、月に数回だけ来る。 そのうえで一人ひとりの記録を残し、振り返る。これは保育所の日々の保育とは、けっこう性質の違う仕事だと思います。

「慣れるまで」をどうするか

初めて園に来る0〜2歳の子です。当然、すぐには慣れません。

資料では、慣れるまで時間のかかる子への対応として「親子通園」が挙げられています。保護者と一緒に来てもらう形です。子どもも親も不安が減り、保育者も親子の様子を見ながら関われる、とされています。

ただし条件がついています。

  • 親子通園が長期間続かないように留意すること
  • 親子通園を利用の条件にすることは適当ではないこと

「慣れないから毎回お母さんと来てください」では、この制度の趣旨から外れる、ということです。

短時間から始めて徐々に伸ばすやり方についても、保護者の意向を踏まえて検討すると書かれています。園が一方的に決めるものではない、という書き方になっています。

やってはいけないこと

資料に、はっきりこう書かれています。

リトミック教室や英語教室、スイミングスクールなどの習い事に類する内容、形態によるものを本制度に当てはめて提供するなど、早期教育の場の形とすることは適切ではない

利用料をこうした習い事の対価として取ることも認められていません。「誰でも通園枠でうちの英語教室に来ませんか」は駄目、ということです。

保育の内容については、保育所保育指針に準じるとされています。

保護者はいくら払うのか

利用料は1時間あたり300円程度が標準とされています。給食費などの実費は別です。金額や使い道は、あらかじめ書面で示して同意をもらう必要があります。

保護者に聞かれたら答えられるようにしておくと安心です。

なお、園に入るお金のほうは別の記事にまとめました。 単価が3年で倍近くになっていること、加算が8種類あること、財源が「子ども・子育て支援金」であることなど、そこそこ驚く内容でした。

→ こども誰でも通園制度のお金の話

安全とこどもの権利

最後に、押さえておきたい点です。

この制度の事業所の職員による虐待については、通報義務が新しく作られました(令和7年の児童福祉法等の改正)。また、こども性暴力防止法の対象にもなっていて、従事者の性犯罪歴の確認などが義務づけられています。

性犯罪歴の確認の話は、概算要求の記事でも触れた、いわゆる日本版DBSのことです。

初めて来る子を、短い時間だけ預かる。顔なじみでない大人と子どもが出会う場なので、ここは厚めに設計されているのでしょう。

明日、確かめられること

長くなったので、現場の立場でやれることを3つにまとめます。

  1. 自分の園がやるのか(もうやっているのか)を聞いてみる。 保育所も幼稚園も認定こども園も、実施できる場所に入っています
  2. 自分の自治体の利用可能時間を調べる。 月10時間とは限りません。3時間〜10時間未満で設定されている可能性があります
  3. 保護者に聞かれたときに答えられるようにしておく。 対象は0歳6か月〜満3歳未満で保育所などに通っていない子、就労要件なし、利用料は1時間300円程度が目安

なお、「誰でも通園制度を使っても、在宅育児の手当がもらえる」という自治体も出てきました。千葉県市川市の例を別の記事に書いています。

そして、前に書いた幼稚園の記事ともつながります。0〜2歳をどこが受け止めるのかは、いま同時にいくつもの道が開いているところです。誰でも通園はそのうち、いちばん間口の広い道ということになります。

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