「小1プロブレム」、単発の交流会だけで防げるものではないらしい
幼保小連携はもう当たり前になっているのに、なぜギャップは埋まらないのか。元保育士で小学校長も務めた小崎恭弘先生のインタビューから、「単発で終わらせない」という視点を読み解きます。
小学校に入学した子どもが、環境の変化についていけず、先生の話が入らなかったり、授業中に席を立ってしまったりする。いわゆる「小1プロブレム」は、以前から教育現場の課題として語られてきました。
元保育士で、小学校の校長も務めた小崎恭弘先生(大阪教育大学教授)へのインタビュー記事を読んで、いくつか気づきがあったので紹介します。
そもそも、なぜ最近よく聞くようになったのか
「小1プロブレム」という言葉自体は、実は1990年代から使われていました。当時から現象そのものはあったものの、社会的な問題として広く認識されるようになったのは2000年代に入ってからのようです。2005年に新潟県教育委員会が「小1ギャップ」という言葉で表現したことをきっかけに、教育問題として全国的に注目されるようになったといわれています。
「昔もこういう子はいたけれど、4〜5月にはたいてい落ち着いていた」という指摘もあります。最近目立つのは、この状態が数ヶ月、長いと1年ほど続いてしまうケースだそうです。つまり、現象そのものが新しく生まれたというより、長期化・深刻化してきたことで、あらためて注目されるようになった、という理解が近そうです。
背景としてよく挙げられるのが、子どもを取り巻く環境の変化です。近所で群れて遊ぶような機会が減り、少子化や核家族化も進んだことで、子ども同士が人間関係を経験しながら育つ場面自体が少なくなっている、という指摘があります。2020年度には、幼児教育と小学校教育をなめらかにつなぐ「スタートカリキュラム」が全国で導入されるなど、国としても対策に乗り出している段階です。
今回紹介する幼保小連携の話も、この流れの中にあるものです。
「幼保小連携」はもう当たり前になっているけれど
小1プロブレムの原因の一つとされているのが、幼児教育と小学校教育の”つながりの弱さ”です。これを埋めるために、園と小学校が協力する「幼保小連携」の取り組みは、今では全国的に広がっています。
ただ、小崎先生はそれでも「まだ両者のギャップは埋まっていない」と指摘しています。連携という言葉自体は浸透しても、実際の中身が伴っているかは別の話、ということのようです。
ポイントは「単発で終わらせない」こと
印象的だったのが、小崎先生が紹介していた大阪市の取り組みです。
幼稚園や保育園の子どもたちを小学校に招いて、いっしょにプールで遊んだり、音楽会のリハーサルを見学したりする機会をつくっていたそうですが、ここで大事にされていたのは「単発の交流で終わらせない」ことだったといいます。
一回きりのイベントだと、子どもにとっては”特別なお出かけ”で終わってしまいます。そうではなく、継続的に小学校の環境に触れる機会を重ねることで、入学した時に「ここで泳いだことがある」「来たことのある体育館だ」という感覚を持てるようにする。この積み重ねが、小1プロブレムの軽減につながる、という考え方です。
言われてみれば当たり前のようですが、多くの園でやっている「年長さんが小学校を一度見学に行く」という単発の行事は、この視点で見ると”きっかけ”にはなっても、それだけでは十分ではない、ということになります。
保育士にとってのヒント
この話が示唆しているのは、幼保小連携を「小学校側の行事に一度参加させてもらう」ものとして受け身で捉えるのではなく、園の側から「継続的な接点をどうつくれるか」を考える、という視点の転換だと思います。
年に一度の交流会を企画するだけでなく、例えば同じ小学校の校庭や体育館に、行事の合間に何度か足を運ぶ機会をつくれないか。近隣の小学校との関係次第で難しいところもあると思いますが、「回数を増やす」「同じ場所に繰り返し触れさせる」という発想自体は、大きな予算や特別な準備がなくても取り入れられる部分があるかもしれません。
まとめ
小1プロブレムは、子ども本人の問題としてではなく、幼児期と学童期の”環境の連続性”の問題として捉えられている、ということがこの記事から伝わってきました。単発のイベントを増やすことより、同じ場所・同じ人に繰り返し触れる機会をどうつくるか。来年度の年間計画を考える際、少し意識してみると違うかもしれません。
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