制度のきほん( 更新)

幼保小の接続に年31万円の加算 行事の交流だけだと額が変わります

小学校に入った子どもが、先生の話が入らなかったり、授業中に席を立ってしまったりする。「小1プロブレム」と呼ばれてきた話です。

対策として言われてきたのが幼保小連携で、いまは国の事業として「幼保小の架け橋プログラム」が動いています。そして、小学校との連携には公定価格の加算がついています。 年長を担当している人にも、園の運営に関わる人にも、金額の話まで含めて関わってきます。

9割の園がやっていて、半数以上が行事どまり

文部科学省の「幼保小の架け橋プログラムの実施に向けての手引き(初版)」が、成果と課題を並べています。まず成果のほうです。

・小学校との連携の取組を行っている園が約9割に上るなど、取組が進展

ほとんどの園がやっている、という状態です。そのうえで、同じページの課題の欄にこうあります。

・幼稚園・保育所・認定こども園の7~9割が小学校との連携に課題意識、各園・小学校における連携の必要性に関する意識の差

・半数以上の園が行事の交流等にとどまり、資質・能力をつなぐカリキュラムの編成・実施が行われていない

・「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が到達目標と誤解され、連携の手掛かりとして十分機能していない

・スタートカリキュラムとアプローチカリキュラムがバラバラに策定され、理念が共通していない

やっている園が9割で、半数以上が行事の交流どまり。 この2つが並んでいるのが、いまの幼保小連携の姿として国の資料に書かれているものです。

小学校の側についても書かれています。

・小学校側の取組が、教育方法の改善に踏み込まず学校探検等にとどまるケースが多い

年長さんが一度小学校を見に行く、あの行事のことです。国の資料の中で、名指しで課題の側に置かれています。

「形式的な連携」という言葉が使われています

同じ手引きの「はじめに」に、こうあります。

現在、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が示され、幼保小間での交流行事や、小学校でのスタートカリキュラムの実施などの取組が進みつつあるものの、形式的な連携にとどまるのではないかといった課題が指摘されています。

交流行事をやっていない園が問題だ、という書き方ではありません。やっているけれど形式的ではないか、という書き方です。

「架け橋期」は5歳児と小学1年生の2年間

この2年間をひとまとまりで扱う、というのがプログラムの骨格です。文部科学省の事務連絡では、こう定義されています。

架け橋期(5歳児から小学校1年生までの2年間)

年長の1年間ではありません。小学校に上がったあとの1年も含めて2年です。だから園だけでは完結せず、小学校と一緒に作ることが前提になります。

加算の要件は3段階です

ここからがお金の話です。公定価格に「小学校接続加算」があります。こども家庭庁の公定価格FAQ(第27版)が、要件を3つ挙げています。

ⅰ 小学校との連携・接続に関する業務分掌を明確にすること。

ⅱ 授業・行事、研究会・研修等の小学校との子ども及び教職員の交流活動を実施していること。

ⅲ 小学校と協働して、5歳児から小学校1年生の2年間(2年以上を含む。)のカリキュラムを編成・実施していること。なお、小学校との継続的な協議会の開催等により具体的な編成に着手していると認められる場合を含む。

そして、同じ回答にこう書かれています。

ⅰ~ⅱの要件を満たす場合と、ⅰ~ⅲの要件を満たす場合で、加算される額が異なります。

行事の交流までで止まるか、2年分のカリキュラムまで作るかで、入るお金が変わります。 冒頭の「半数以上が行事の交流等にとどまり」は、この線のことでもあります。

令和6年度から317,130円になりました

上の3つを満たす施設の額について、文部科学省の事務連絡にこうあります。

架け橋期の教育の更なる充実を図るため、令和6年度から以下の取組等を行う施設への加算額を317,130円とした。

小学校と協働して、5歳児から小学校1年生の2年間(2年以上を含む。)のカリキュラムを編成・実施していること。(なお、小学校との継続的な協議会の開催等により具体的な編成に着手していると認められる場合を含む。)

ハードルは思ったより低く書かれています。 完成したカリキュラムがなくても、「小学校との継続的な協議会の開催等により具体的な編成に着手していると認められる場合」は含む、とあります。

さらに、同じページに注記があります。

※ 幼児教育施設に対して卒園した幼児が入学する全ての小学校と連携することまで求めるものではありません。

卒園児が5つの小学校に散らばるから無理だ、という園がありますが、全部とやることは求められていません。

なお、公定価格の単価は年度ごとに見直されます。この317,130円は令和6年度からの額として国の資料に書かれているものなので、自分の園の今年度の額は自治体の担当課に確認してください。 加算そのものの仕組みは「そもそも加算って何?」の記事にまとめてあります。

国が挙げている成果は「登校渋りの減少」です

令和6年10月30日の事務連絡は、これまでの事業の成果をこう書いています。

幼保小の接続に関する取組を行っている地方自治体では、幼児教育施設・小学校ともに教員等の子供への関わりや指導に変化があったことや、小学校において登校渋りの児童が減少したことなどの成果が報告された

小1プロブレムという言葉は使われていませんが、指している中身はここです。

一方で、全国の状況については厳しい書き方をしています。

「幼保小の架け橋プログラム」の取組については、一部の地域では成果が上がっているものの、全国的に見ると未だ不十分であることや、地方自治体によって取組状況に差があることなどが課題として指摘されました

自分の自治体がどちらなのかで、園がやれることの前提が変わります。

いじめと不登校の話にもつながっています

同じ事務連絡には、有識者検討会の最終報告としてこう書かれています。

小学校低学年においていじめの認知件数が多く、また、不登校児童の増加率が高いことを踏まえると、いじめ・不登校対策の観点からも、幼保小接続期の教育の充実に取り組むことが重要であること

接続期の話が、小学校側のいじめ・不登校の文脈から来ている、という位置づけです。園の行事の話として閉じていません。

なお、幼稚園と小学校をどうつなぐかという問題そのものは新しくありません。倉橋惣三が1926年に、つなぎ方には「外的の結び付け」と「内的の結び付け」があると整理しています(幼保小の接続は100年前も課題でした)。国がいま「形式的な連携にとどまるのではないか」と書いているのは、同じところを指しています。

明日、確かめられること

  1. 自分の園が小学校接続加算を取っているかを、園長か事務に聞く。 取っている場合、3つの要件のどこまでを満たした額なのかまで聞けると、次に何をすれば額が変わるかが見えます
  2. 今年度の小学校との予定を数える。 交流行事だけなら要件のⅱまでです。ⅲに進むには「小学校と協働して5歳児から小1までのカリキュラムを編成・実施」が要りますが、継続的な協議会を開いて着手していれば含まれると書かれています
  3. 「全部の小学校とやらないといけない」と思っていたら、それは違います。 国の資料に、全ての小学校と連携することまで求めるものではない、と明記されています
  4. 自分の自治体が架け橋プログラムの取組をしているかを調べる。 文部科学省のページに自治体ごとの取組概要が載っています

「単発の交流会をやめて継続的に関わろう」という心構えの話ではありません。国が課題として「行事の交流等にとどまり」と書き、その先に進んだ園に別の額をつけています。 そこまで含めて、来年度の年間計画を組む材料になります。

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