制度のきほん

特別地域保育体制確保対応加算とは 今年度できた過疎地の園向けの加算

長い名前の加算です。特別地域保育体制確保対応加算。

令和8年度、つまり今年度に新しくできたものなので、まだ解説がほとんど出ていません。名前だけ見ても何のことか分からないので、原典から整理します。

先に結論を書きます。過疎地や離島にある、子どもが減って定員が埋まらなくなった小さい園が、地域の中で保育を続けるための取組をした場合につく加算です。

なぜ作られたのか

背景は、園が維持できなくなってきていることです。

全国の定員充足率は88.4%(令和7年4月1日)ですが、地域差が大きく、過疎地域では74.6%まで落ちています。しかも5年前の83.0%から下がり続けています。

国はこう書いています。

定員充足率が下がることで、安定的な運営が困難になる施設や、統廃合等が必要となる施設が生じる可能性がある

そこで作られたのがこの加算です。

保育機能の維持・確保に向けた検討・取組を進める過疎地域等の自治体に所在する小規模な施設(利用人数が15人以下の保育所・認定こども園)が、保育の質の確保に係る取組や保育機能の維持・確保に向けた取組を行う場合に算定できる「特別地域保育体制確保対応加算」を創設する

「園が減るのは仕方ない」ではなく、「減らし方を地域で考えるなら支える」という組み立てになっています。ここは読んでいて印象に残りました。

対象になるのは、かなり狭い

要件は3つあり、全部満たす必要があります。

要件1 市町村が協議をしていて、園も入っていること

当該施設が所在する市町村が、地方版子ども・子育て会議等で当該施設の設置者やその他関係者と教育・保育の提供体制の確保に係る協議・検討を行っており、当該協議・検討に参画していること

園が単独で申請しても取れません。 市町村が地域の保育をどうするか話し合う場を持っていて、そこに園が参加していることが前提です。

しかも協議の中身まで指定されています。市町村が作る「保育提供体制の確保のための実施計画」をもとに、次の2点を協議することとされています。

①市町村における保育提供体制の在り方、課題

②①を踏まえた今後の保育提供体制の確保に向けた方針や計画

さらに市町村には報告義務があります。

市町村においては、管内において当該加算を取得する施設が1つでもある場合については、翌年4月末日までにこども家庭庁に報告を行うこととし

報告様式まで用意されていて、協議に誰が参加したか(市町村の保育関連部署、都市づくり関連部署、地域住民、学識経験者など)をチェックする形式になっています。

要件2 定員20人ちょうど、利用は15人以下

当該施設の利用定員が20人であり、かつ、当該施設の利用子ども数が15人以下であること

「20人以下」ではなく「20人」です。 定員19人でも21人でも対象外という書き方になっています。

そして利用人数のほうは、月ごとに見ます。

各月毎に利用定員が20人であり、かつ利用子どもの人数が15人を下回っていることが必要である。そのため、当該年度中に利用子どもが15人を上回る月が発生した場合には、当該月は当該加算の対象外となる

年度単位ではなく月単位の判定です。

要件3 2種類の取組を両方やること

  • 他の施設との交流・合同研修

他の施設や子ども・子育て支援を提供する施設等との連携により、他の施設の子ども等との交流活動、他の施設や子ども・子育て支援を提供する施設等との合同研修、勉強会等を行う

  • 多機能的な取組

教育・保育の他、乳幼児期以降のこども・若者を支援する取組や子ども・子育て家庭を支援する取組、障害者や高齢者等を対象とした支援の取組、地域づくりのための取組などの多機能的な取組を行う

2つ目が特徴的です。保育以外のことをやってください、と言っています。 高齢者支援や地域づくりまで例に挙がっているので、園を「地域の拠点」にしていく方向を想定しているのだと読めます。

対象になる「特別地域」

10種類の法律で指定された地域が挙がっています。

地域根拠法
離島振興対策実施地域離島振興法
奄美群島奄美群島振興開発特別措置法
辺地辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律
特別豪雪地帯豪雪地帯対策特別措置法
振興山村山村振興法
小笠原諸島小笠原諸島振興開発特別措置法
半島振興対策実施地域半島振興法
特定農山村地域特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律
過疎地域過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法
沖縄の離島沖縄振興特別措置法

「過疎地」だけではありません。 豪雪地帯や半島も入っているので、自分の市町村が該当するかは調べてみる価値があります。対象施設は保育所と認定こども園です。

実務で引っかかりそうなところ

FAQに、細かい2つの答えが載っていました。

分園だけでは取れません。

分園単独で本加算を取得いただくことはできません。中心園と分園それぞれの利用定員及び利用子ども数を総和した上で差を算定いただきますようお願いいたします

加算できるのは最大5人分です。

1号(2・3号)認定こどもの利用定員から1号(2・3号)認定こどもの利用子ども数を減じた数以下の数であって、合計で最大5人分を算定することができます

定員20人・利用15人なら差は5人なので、いちばん条件のいい場合で5人分ということになります。認定こども園の場合、どの認定区分に何人分を割り振るかは施設の裁量とされています。

申請様式(保育所)でも、確認欄はこの3つになっていました。

  • 定員20人
  • 利用児童が15人以下の月があることが見込まれる
  • 人口減少地域における保育の質の確保や保育機能の維持・確保に向けた取組の実施

3つ目には「取組の内容が分かる資料」の添付が要ります。

いくらつくのかは、確認できませんでした

肝心なところですが、単価は公表資料からは確認できませんでした。

算定のしかたは決まっています。

加算額は、定められた額に対象数を乗じ、各月初日の利用子ども数で除して得た額(算定して得た額に10円未満の端数がある場合は切り捨てる。)とし、各月初日に利用する子どもの単価に加算する

この「定められた額」が告示の別表にあるはずなのですが、今回あたった範囲では見つけられませんでした。金額を知りたい場合は、市町村の担当課に聞くのが確実です。

確かめられること

  1. 自分の市町村が「特別地域」に該当するか調べる。 過疎地域だけでなく、豪雪地帯・半島・山村・辺地も対象です
  2. 定員が20人ちょうどかどうか。 ここで多くの園が外れます
  3. 市町村が地方版子ども・子育て会議で提供体制の協議をしているか。 これは園からは見えにくいので、市町村に聞くしかありません

対象は狭いですが、当てはまる園にとっては、地域で保育を続けるための取組にお金がつく制度です。要件の3つ目が「他施設との交流」と「多機能化」なので、すでにやっていることが該当する園もあると思います。

なお、国はこの先も動いていて、令和9年度の概算要求では、過疎地の園を「子育て拠点保育施設」にする新しい事業(1自治体あたり1,200万円、原則1自治体1施設)が新規で要求されています。この加算とは財源も仕組みも別のものです。

この加算が生まれた背景には、人口減少と定員割れがあります。加算の仕組みそのものは「加算」って何?にまとめました。

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