ニュース解説

自分の園の離職率が公開されています 有給消化率も残業時間もです

去年から、園ごとの数字が公開されるようになりました。

離職率。有給休暇の消化率。平均の残業時間。経験年数ごとの給料。

求人票にはまず載らないものばかりです。 それが今、名前で検索すれば誰でも見られる状態になっています。

8月19日のこども家庭庁の分科会に、その1年目の集計が出ていました。

どこで見られるのか

「ここdeサーチ」というサイトです。福祉医療機構(WAM)が運営しています。

もともとは保護者が園を探すためのサイトでした。定員や開所時間を調べるものです。そこに令和7年度から「経営情報」が足されました。子ども・子育て支援法の第58条が根拠で、園には報告の義務があります。

毎事業年度終了後五月以内に

決算から5か月以内に出しなさい、ということです。

令和8年2月24日までに34,202か所が報告を終えていました。対象施設のおおむね8割です。

園ごとに、こういうものが出ます

実際に1園開いてみました。園名は伏せますが、こんな形です。

人員配置

職員配置公定価格基準実際の配置比率
施設長1.0人1.0人100.0%
保育士10.0人11.0人110.0%

国が何人分のお金を出していて、実際に何人いるかが並びます。ここが100%を割っているのか、超えているのか。園を移ろうか迷っている人にとっては、かなり大きい情報だと思います。

モデル給与

経験年数と学歴で分けて出ます。ある園では、大学卒・経験1年の保育士が給料19万円+諸手当5万6千円で月24万6千円、年収の目安336万円。経験8年だと月31万5千円、年収450万円と書かれていました。

所定勤務時間(月160時間)や、手当の中身(資格手当・役職手当など)まで載ります。園の地域区分も一緒に表示されるので、他の地域の園と比べるときの前提もそこで分かります。求人票の「月給20万円〜」より、はるかに具体的です。

人的資本

ここがいちばん生々しいところでした。

  • 平均有給休暇消化率(5段階のどれか)
  • 主な法定外休暇(夏季休暇、看護休暇・介護休暇など)
  • 平均時間外労働時間(5段階のどれか)
  • 離職率
  • ICTツールの導入状況(9項目)

離職率は「5.6%」のように小数点まで出ます。有給消化率と残業時間は幅で答える形式です。

収支の状況

人件費比率が出ます。しかも同じ種類の園の平均と並べて表示されます。「この園59.1%/グループ平均49.0%」というように。

なお、収支差そのもの(黒字か赤字か)は園ごとには出ていません。ここは集計値だけです。

なぜ公開しているのか

資料に目的が書いてありました。

処遇改善や配置改善等の検証を踏まえた公定価格の改善を図るほか、幼児教育・保育が置かれている現状・実態に対する国民の正確な理解の促進、求職者や保護者等に対し各施設等に係る情報の透明化を図ることを目的にしています

「求職者」が名指しで入っています。 保護者だけではありません。

つまりこれは、保育士が園を選ぶときに見る材料として国が用意したものだということになります。あまり知られていない気がします。

1年目の集計で分かったこと

公立と私立で、月6万円違いました

保育所の常勤保育士の給与月額(賞与の1/12を含む)です。

給与月額平均の経験年数
公立397,027円10.4年
私立335,236円9.8年

差は月61,791円。年にすると74万円です。経験年数はほとんど変わりません。

「公立のほうがいい」とは以前から言われてきましたが、金額で出たのは初めてです。公立は自治体の給与表で決まるので、公定価格の話とは別のところで差がついています。

同じ私立でも、施設の種類で4万円違います

私立の常勤の平均です。

給与月額
家庭的保育事業388,113円
保育所335,236円
認定こども園323,374円
小規模保育事業(A型)292,387円
事業所内保育事業(A型)278,321円

保育所と小規模A型で4万円以上あります。ただし家庭的保育事業は、私立の平均経験年数が11.3年と保育所(9.8年)より長く、報告数も400か所(保育所は17,494か所)と少ないので、そのまま比べられる数字ではありません。

非常勤は常勤の6割台です

資料の言い方はこうです。

非常勤保育士等の平均給与月額は、常勤保育士等の平均給与月額の概ね50~70%程度にとどまる

保育所だと私立の非常勤が221,271円。常勤335,236円の66%でした。

配置は基準より手厚い。ただし上乗せは非常勤です

資料はこう書いています。

ほとんど全ての施設類型において、公定価格基準上の配置状況よりも実際の配置が上回っている

私立の保育所で見ると、公定価格で措置されている保育士が平均12.5人に対して、実際は常勤12.1人+非常勤3.5人の15.6人(いずれも常勤換算)。確かに上回っています。

ただ内訳を見ると、常勤だけでは12.1人で基準に届いていません。 上乗せ分は非常勤で埋まっている形です。認定こども園でも幼稚園でも同じ形をしていました。

人件費に7割いっています

いずれの施設類型においても、約6割強~8割弱程度が人件費に充てられている。うち、保育所は、7割程度

保育所の人件費比率は70.9%でした。一方で小規模保育事業(A型)は65.1%で、収支差率は10.5%と突出しています。同じ保育でも、お金の使われ方の形が違います。

加算Ⅱを取っていない園があります

処遇改善等加算をどれだけ取れているかも集計されていました。保育所はこうです。

取得割合
加算Ⅰ97.3%
加算Ⅱ90.9%
加算Ⅲ96.6%

ここは資料の表記をそのまま使っています。3つの加算は令和7年度から区分1・2・3に統合されましたが、この集計は令和6年度のデータなので旧の呼び方です。加算Ⅱが、いまの区分3にあたります。

保育所はほぼ全部取れています。ところが施設の種類を変えると景色が違いました。加算Ⅱの取得割合が、幼稚園で67.3%、家庭的保育事業で53.4%、事業所内保育事業(B型)では44.7%です。

加算Ⅱは副主任保育士や専門リーダーの処遇改善に使うもので、キャリアアップ研修を修了していることが要件になっています。取っていない園では、研修を終えても上乗せの原資がありません。 研修を受けるかどうか迷っている人は、自分の園が加算Ⅱを取っているかを先に確かめたほうが早いです。

数字を読むときの注意が2つあります

ひとつ。収支差率はいま少し膨らんでいる可能性があります。資料自身がこう断っています。

令和6年度補正予算による公定価格上の改善率:+10.7%)による一時的な影響を受けている可能性があるため、留意が必要

人件費の改定分が収入にだけ入って支出に入っていない園があるためです。「園は儲かっている」と読むには早すぎます。

ふたつめ。データの質そのものについても、こう書かれています。

データのばらつきや報告誤り等が含まれている可能性があります

始まったばかりの制度です。1つの園の数字だけを見て決めつけないほうがよさそうです。

明日、確かめられること

「ここdeサーチ」で自分の園の名前を入れてみてください。施設のページを開いて下までスクロールすると、「経営情報等」という欄があります。

見るなら、この3つだと思います。

  • 離職率 … 数字ひとつなので比べやすい。自分の実感と合っているか
  • 平均有給休暇消化率 … 幅で出ます。有給の記事に書いたとおり、取るのに理由は要りません
  • 人員配置の比率 … 100%を超えているか。国が出しているお金に対して人がいるかどうか

そして、まだ報告していない園が2割あります。 開いても経営情報の欄が空だったら、それはそういうことです。責める話ではありませんが、事実として空欄です。

転職を考えている人なら、気になっている園を先に開いてみるのが早いと思います。園見学では聞きにくいことが、そこには先に書いてあります。

この数字は自分たちに返ってきます

最後にひとつだけ。

目的の筆頭に書かれていたのは「処遇改善や配置改善等の検証を踏まえた公定価格の改善」でした。集めたデータは、公定価格をどう直すかの材料に使われます。

人件費比率が7割だという集計も、常勤が基準に届いていないという内訳も、来年度以降の議論の土台になります。自分の園が出した数字が、巡って自分の給料の話になる。 そういう仕組みだということです。

来年の同じ時期に、2年目の集計が出るはずです。

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