来年度の保育予算、2兆7221億円を要求 処遇改善は金額なしのまま
こども家庭庁が9月4日、令和9年度の保育関係予算の概算要求を公表しました。総額は2兆7221億円。ただし保育士の処遇改善は「検討する」だけで金額が入っていません。76ページを読むと、お金がついているのは人口減少対策と誰でも通園制度でした。
9月4日、こども家庭庁が来年度(令和9年度)の保育関係に絞った概算要求を公表しました。76ページあります。
先日書いた記事は庁全体の要求でしたが、今回は保育の中身が細かく出ています。そこで気になっていた点の答え合わせができたので、整理します。
総額はこうです
| 令和9年度(要求) | 前年度予算 | |
|---|---|---|
| 保育関係 | 2兆7,221億円 | 2兆5,747億円 |
前年度から約1,474億円の増額を求めている形です。
ただし「概算要求」は決定ではありません。 各省庁が「これだけ使いたい」と財務省に出す要求で、年末の予算編成を経て国会で決まります。資料にも注記があります。
記載の単価は令和9年度概算要求時点のものであり、今後の予算編成過程において変更があり得る
処遇改善は、まだ金額が入っていません
保育士にとっていちばん大事なところから書きます。
76ページの資料で「処遇改善」という言葉が出てくるのは、2回だけです。しかも書き方がこうなっています。
民間給与動向等を踏まえた保育士等の更なる処遇改善を検討する
もう1か所も同じです。
併せて「こども未来戦略」に基づき、民間給与動向等を踏まえた更なる処遇改善を進める
どちらにも金額がありません。 これは「事項要求」という扱いで、金額を示さずに項目だけ立てて、年末の予算編成で議論するというやり方です。給付費の要求額にも「+事項要求」と付いています。
令和9年度概算要求額 1兆9,174億円+事項要求
つまり 「上げます」とも「いくら上げます」とも書かれていない状態です。前の記事で「保育士等の平均給与の増加」が政策目標に入っていると書きましたが、目標のままで、金額はまだ出ていません。
お金がついているのは、別のところです
では何に力が入っているのか。資料を通して数えると、はっきり出ます。
| 言葉 | 76ページ中の出現回数 |
|---|---|
| こども誰でも通園 | 22回 |
| 人口減少 | 14回 |
| 公定価格 | 10回 |
| 処遇改善 | 2回 |
人口減少と誰でも通園制度が中心です。
過疎地の園を「子育て拠点」にする新規事業
別の記事で書いた特別地域保育体制確保対応加算の、さらに先の話が出ていました。新規事業として、こう書かれています。
実施市町村は地域分析ツールの活用による検討結果を踏まえ、地方版子ども・子育て会議等で子育て拠点保育施設を位置付け、公表する
その園がやることも決まっています。
- 保育機能を強化する取組
- 乳幼児期以降のこども・若者を支援する取組
- こども・子育て家庭を支援する取組
- こども・子育て支援以外の様々な支援の取組
- 地域づくりのための取組
資料には「123は必須、45は任意」とあり、2と3については「地域で求められるニーズに応えるものとする」と注記されています。補助基準額は1自治体あたり1,200万円(国2/3・市町村1/3)です。
さきほどの加算とは、別物です
名前も対象地域も似ているので、混ざりやすいところです。財源からして違います。
| 特別地域保育体制確保対応加算 | 子育て拠点保育施設支援事業 | |
|---|---|---|
| 財源 | 公定価格の加算 | 補助金(保育対策総合支援事業費補助金) |
| お金の出方 | 園の運営費に上乗せ | 1自治体あたり1,200万円 |
| 受け取る主体 | 園 | 自治体(国2/3・市町村1/3) |
| 状態 | 今年度から実施中 | 来年度の要求段階(新規) |
| 対象の数 | 要件を満たす園すべて | 原則1自治体1施設 |
| 主な要件 | 定員20人・利用15人以下 | 定員の指定なし |
加算は「園を維持する」ためのもの、こちらは「園を子育て拠点に作り変える」ためのものです。加算の要件にも多機能的な取組が入っていましたが、あちらは運営費の上乗せでした。
そして効いてくるのが「原則1自治体1施設」という条件です。加算は条件を満たせば複数の園が取れますが、こちらは自治体の中で1つ選ぶ形になります。「存続が不可欠な施設」という書き方とあわせると、どの園を残すかを決める事業という色が出ています。
なお、この2つを両方受けられるかどうかは、資料には書かれていませんでした。
対象は「特別地域」を有する市町村で、離島・奄美・辺地・特別豪雪地帯・振興山村・小笠原・半島・特定農山村・過疎地域・沖縄の離島の10種類。加算と同じ枠組みです。
特別地域に所在する既存の認可保育所、認定こども園及び小規模保育事業所であって、子育て拠点化により地域の維持や発展のために存続が不可欠な施設
原則1自治体につき1施設。「存続が不可欠な施設」という書き方は、裏を返すと残す園を選ぶということでもあります。
施設整備の補助率も、人口減少対策で嵩上げ
整備交付金(820億円+事項要求)では、補助率を1/2から2/3に上げる条件が3つ挙がっています。
- 待機児童対策
- 人口減少対策(過疎市町村で施設の統廃合や多機能化に伴う整備)
- こども誰でも通園制度
統廃合にお金がつく、という点は押さえておいていいと思います。
保育士の養成課程が見直されます
これは知らない方が多いはずです。
保育士養成課程等検討会の議論を踏まえた保育士養成課程、保育士等キャリアアップ研修及び保育士試験の見直しにあたり、保育士を養成する大学・短期大学等や都道府県において円滑な運用が行われるよう、幼稚園教諭の教職課程と保育士養成課程を併設する大学・短期大学等に向けたガイドラインや保育士等キャリアアップ研修の質の向上を図るためのマニュアルの作成を行う
養成課程・キャリアアップ研修・保育士試験の3つとも見直しの対象です。すでに働いている人に効くのはキャリアアップ研修で、処遇改善の区分3は研修の修了が要件なので、無関係ではありません。
検討会は9月10日に第5回が開かれる予定です。
安全関係も入っています
- 熱中症対策に係る整備の充実
- 設備における性被害防止対策の支援
- 保育士DB(保育士特定登録取消者管理システム)の活用徹底。自治体が管内の園の登録状況を確認できるよう改修し、こども性暴力防止法関連システムとの連携も進める
保育士DBは、性犯罪などで登録を取り消された人を確認する仕組みです。自治体側から園の状況が見えるようになる、という改修です。
まだ決まっていないもの
前の記事で「0〜2歳の支援は決まっていない」と書きましたが、今回も同じでした。
「新しい経済政策パッケージ」に基づく幼児教育・保育の無償化等については、予算編成過程において検討する
3か月経っても、そこは動いていません。
明日、確かめられること
- 給与の話は、まだ何も決まっていません。 「来年度から上がるらしい」と聞いても、金額が出るのは年末です。そのときに改めて見るのが確実です
- 園が過疎地域などにあるなら、「子育て拠点保育施設」は要チェック。 1自治体1施設が原則なので、手を挙げるかどうかは自治体との相談次第になります
- キャリアアップ研修が見直されます。 受講の予定がある方は、内容が変わる可能性を頭に入れておくとよさそうです
概算要求は「そうしたい」の段階です。ただ、どこに力を入れようとしているかは読み取れます。 今年の資料から読める限りでは、力点は人口減少への対応で、処遇改善は年末まで持ち越しでした。年末に予算案が固まったら、また突き合わせたいと思います。
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