ニュース解説

こども家庭庁の来年度予算、7兆7436億円を要求 保育士に関係する項目を拾ってみた

こども家庭庁が、来年度(令和9年度)の予算の概算要求を公表しました。総額は7兆7436億円で過去最高です。

ニュースでは総額と、子どもの自殺対策の話が取り上げられていました。ただ資料そのものを読んでみると、保育士さんに直接関わる項目がいくつも入っています。そこを拾ってみます。

まず、「概算要求」は決定ではありません

これが前提として大事です。

概算要求は、各省庁が「来年度はこれだけ使いたい」と財務省に出す要求です。8月末に出して、年末の予算編成で削られたり形が変わったりしたあと、最終的に国会で決まります。

なのでこの時点の数字は「そうなる」ではなく「そうしたい」です。資料にも、事業ごとの金額の下にこう注記されています。

記載の単価は令和9年度概算要求時点のものであり、今後の予算編成過程において変更があり得る

では読む意味がないかというと、そんなことはありません。国が来年度どこに力を入れようとしているかが分かります。 現場から見ると、先の見通しを立てる材料になります。

総額はこうなっています

令和9年度(要求)令和8年度
一般会計4兆4,896億円4兆2,795億円+2,101億円
子ども・子育て支援特別会計3兆2,540億円3兆2,161億円+379億円
合計7兆7,436億円7兆4,956億円+2,480億円

前年度から約2,480億円の増額を求めている形です。

保育士に関係する項目

要求は5つの柱に整理されていて、その中に保育に関わるものが散らばっています。気になったものを挙げます。

保育所保育指針の改定が進んでいます

新規事業として「新しい保育所保育指針等の円滑な実施に向けた環境の整備事業」(要求額0.9億円)が入っています。資料にはこう書かれています。

現在、こども家庭審議会において、令和7年4月の「保育所、認定こども園における保育の内容の基準等の在り方について(諮問)」を踏まえ、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改定に向けた審議が行われているところ

つまり指針の改定はすでに審議に入っていて、来年度はその周知にお金を使う段階、ということになります。

指針は保育の拠り所です。 日々の計画の立て方も、記録の書き方も、園内研修の中身も、ここを起点にしています。改定されれば、現場のやり方に一通り影響します。

来年度に予定されている取り組みは、具体的にこう書かれています。

  • 全国8ブロックで説明会を実施(オンライン配信も併用)
  • 告示の趣旨や理念を解説する冊子の作成
  • 指針のコンテンツサイトの構築 — 告示と解説の検索機能に加えて、実践事例のデータベースやオンライン研修まで載せる総合プラットフォーム

3つ目が個人的に気になりました。指針を「読む」ものから「調べて使う」ものにしようという発想です。実際にどこまで使えるものになるかは分かりませんが、園内研修の下調べが楽になる可能性はあります。

なお、改定後の指針がいつ告示されて、いつから適用されるかは、この資料からは分かりません。審議の状況は改めて追いかけたいと思います。

「保育士等の平均給与の増加」が目標に入っています

今回の要求では、政策ごとに数値目標を設定する方針が示されていて、その例のひとつがこれです。

保育士等の平均給与の増加、保育人材の増加傾向の維持

給与を上げることが、達成すべき目標として明記されているわけです。目標に入っているということは、達成度が測られるということでもあります。

もっとも、これは目標であって、いくら上がるという話ではありません。実際の処遇改善の中身は、年末の予算編成を待つことになります。

保育のDX(デジタル化)も続きます

「こども政策DXの推進」の中に「保育DXの推進」が入っています。

前に書いた保育ICT推進加算は令和8年度に新設されたものですが、その流れは来年度も続く、ということになりそうです。

性犯罪歴の確認制度も項目に入っています

「こども性暴力防止法の円滑かつ確実な運用」という項目があります。いわゆる日本版DBS、教員や保育士などの性犯罪歴を確認する仕組みのことです。

保育士は確認の対象になる職種です。 この制度自体は今回の要求とは別に動いているものですが、運用のための予算が要求されている、という位置づけです。

制度の中身については、また別で調べて書きたいと思います。

まだ決まっていないものがあります

資料に、こういう一文があります。

0~2歳を含む幼児教育・保育の支援や令和9年度障害福祉報酬改定等については、予算編成過程で検討。

つまり0〜2歳の保育の支援については、この段階では要求に金額を載せず、年末の予算編成で議論するということです。

待機児童の記事で書いたとおり、東京都では保育料の第一子無償化が申込者増加の要因として挙げられていました。0〜2歳の扱いがどうなるかは、園の申込者数に直接効く話です。ここは年末に注目しておくとよさそうです。

減らす話も入っています

増額の話ばかりではありません。約130億円分の補助金等を見直したと明記されています。

  • 単発のイベントや広報啓発の委託費の見直し(▲4.4億円)
  • 効果検証が十分にできていない交付金の統合(▲87億円)
  • 各種の相談支援事業の統合・一元化(▲1.5億円)
  • 執行率が低い事業の縮減(▲34億円)

もう一つ、来年度からこども家庭庁の全ての予算事業について、支出先をインターネットで公開するという計画も入っています。自治体を経由した最終的な支出先まで含めて公開するそうです。

同時に、自治体側の申請や報告の事務負担を軽くする仕組みも作るとされています。園から自治体への書類のやり取りにも、いずれ影響してくるかもしれません。

まとめ

概算要求の段階なので、確定した話は一つもありません。ただ、資料からは国が来年度の保育について何をしようとしているかが読み取れます。

保育士さんの立場で気に留めておくとよさそうなのは、この3つだと思います。

  • 保育所保育指針の改定が審議に入っていて、来年度は周知の段階に進む
  • 保育士等の平均給与の増加が政策目標に入っている
  • 0〜2歳の支援は、まだ決まっていない

年末に予算案が固まった時点で、このうちどれが残ってどれが変わったかを見ると、来年度の見通しが立てやすくなります。そのときにまた整理したいと思います。

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