制度のきほん( 更新)

「明日、監査だから」の監査とは 原則は事前通知、見られるのは記録です

「明日、監査だから」。園の空気が少しぴりっとする言葉です。書類をそろえて、掲示物を直して、保育室を片づける。けれど、監査が誰の、何を見るものなのかは、あまり説明されないまま準備だけが進むことが多いのではないでしょうか。

国の法律と通知を読むと、監査の形はかなりはっきり決まっています。原則として事前に通知され、見られるのは主に記録です。

ひとまず、この表だけで足ります

指導監査確認の監査(実地指導)
誰が都道府県・政令市・中核市など市町村
何のために認可の基準が守られているか給付費(公定価格)を受ける施設として適切か
根拠児童福祉法 第46条子ども・子育て支援法 第14条・第38条
頻度年度ごとに1回以上、実地が原則市町村が決める
事前の通知原則あり原則あり

同じ園に、2つの監査が入ることがあります。国は、市町村の監査をできるだけ都道府県と同時に行うよう求めています。

指導監査は「年1回、実地で」が原則

都道府県などが行う指導監査の根拠は、児童福祉法第46条です。

都道府県知事は、第四十五条第一項及び前条第一項の基準を維持するため、児童福祉施設の設置者、児童福祉施設の長及び里親に対して、必要な報告を求め、児童の福祉に関する事務に従事する職員に、関係者に対して質問させ、若しくはその施設に立ち入り、設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

頻度は、国の通知「児童福祉行政指導監査の実施について」にあります。

原則として、年度ごとに1回以上、実地による検査

一定の条件を満たせば、実地でなく書面などで行うこともできます。ただし通知は、その理由に「職員の多忙など、都道府県側の事情は対象とならない」とわざわざ書いています。

抜き打ちではない

監査は、原則として前もって知らされます。同じ通知です。

期日、指導監査職員の氏名その他必要な事項を特別な場合を除き事前に通知すること。

例外は、死亡事故などの重大事故が起きたときの「特別指導監査」で、この場合は事前に知らせずに行うことが適切とされています。

実際にこの形で監査が行われた例があります。2026年9月、奈良県香芝市の教育・保育施設で、子どもが凍らせたゼリーを喉に詰まらせて亡くなりました(ゼリーの記事)。市は10月15日、職員6人でこの施設に事前の通告をせずに指導監査に入っています。市の発表では、根拠は子ども・子育て支援法第38条です。あわせて、死亡事故などの重大事故が起きたときは必要に応じて事前通告をしない指導監査を行う、という国の通知(2026年3月30日)を挙げています。監査の結果は、市が設ける事故の検証委員会の検証を踏まえて公表される予定です。

つまり「明日、監査だから」と言えるのは、通常の監査が予告されているからです。

実地で行われたのは、全国の保育所の54.6%

ただ、原則どおりに行われているとは限りません。国がまとめた令和4年度の実施状況では、全国の保育所23,543施設のうち、監査が行われたのは18,386施設(78.1%)。実地で行われたのは12,853施設(54.6%)でした。

東京都の令和6年度の報告書では、都が担当する認可保育所2,558施設のうち、実地の検査をしたのは220施設(8.6%)です(区による監査は別に行われています)。

「毎年、必ず人が来て見ている」とは言えない数字です。沖縄の不正受給の記事で、県自身が「関係書類が整備されていれば、不正等の事実を見抜くことは難しく」と書いていたのも、この延長にあります。

指摘は3段階

監査で問題が見つかったときの指摘は、国の通知で3つに分けられています。

  • 文書指摘:基準や通知に違反している場合。改善報告書を出す
  • 口頭指摘:単発の事務ミスなど、報告書なしで改善が見込める場合
  • 助言指導:努力義務の違反や、「口頭指摘事項」に至らない軽微な指摘、水準を上げるための助言

文書指摘には期限つきで改善の報告が求められ、繰り返し指示しても改善されないと、法令にもとづく処分に進みます。

保育士に関わる項目

令和8年3月、国は初めて「標準監査調書」をまとめました。改正の経緯を示した資料には、国の調査研究で「自治体ごとに保育所に係る監査調書の項目等に差異があること」が課題として整理された、とあります。保育所版では、項目ごとに「着眼点」がついています。保育士個人に関わるものを拾うと、こうなります。

配置と資格は、こう確認されます。

職員名簿やシフト表、児童出席簿等を確認する

各職員について、保育士証等の資格を確認する

研修は、常勤だけが対象ではありません。

常勤職員以外を含む全職員に対して研修の機会を確保しているか

午睡の記録も項目になっています。

睡眠時の呼吸・体位、睡眠状態の確認を定期的に行い記録しているか

書類の項目に見えますが、守っているのは子どもの命です。国の有識者会議の年次報告によると、令和6年に保育施設などで起きた死亡事故3件のうち2件は、0歳児と1歳児の睡眠中でした(死亡事故の記事で扱いました)。

そして、子どもへのかかわりそのものも見られます。

保育士の言動や児童の反応を確認し、不自然な点があればヒアリングを行い

多くは書類で確かめる項目ですが、保育士が直接話を聞かれることもある、ということです。

「形式的、画一的」にしないことも書かれている

監査が書類の点検だけで終わらないよう、国の通知には次の一文があります。

個々の施設の運営努力をも勘案し、形式的、画一的指導にならないよう留意すること。

続けて、保育所保育指針の守られ方を見るときは、「取組の結果のみに着目するのではなく、取組の過程(保育実践及びその振り返り、自己評価の取組等)についても尊重」するように、とあります。

監査の側も、整った書類だけを見ればいいとはされていません。 監査の前日に掲示物を作り直すより、日々の記録と振り返りが残っているほうが、通知の書き方には合っています。

明日、確かめられること

  1. 自分の保育士証の写しが園にあるか確かめる。 監査では「各職員について、保育士証等の資格を確認する」とされています
  2. 非常勤でも、研修の機会があるか聞いてみる。 監査の着眼点は「常勤職員以外を含む全職員」です
  3. 午睡チェックが、確認だけでなく記録まで残っているかを見る。 「定期的に行い記録しているか」が項目になっています
  4. 監査の前日にだけ慌てなくていい。 監査は原則として事前に通知され、通知には過程を尊重するよう書かれています。見られるのは、普段の記録です

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