辞めた保育士の名前で配置を埋める 発覚のきっかけは税金でした
沖縄県の保育園グループ7施設で、勤務実態のない職員の名前を職員表に載せて給付費を受け取っていたことが、県と市の特別指導監査で分かりました。5年間で延べ119人、返還額は約1億5,059万円。始まりは、退職した元保育従事者の「辞めたのに給与の申告が出ている」という苦情でした。県と市の発表資料から読みます。
保育園は、決められた人数の保育士を置いていることを前提に、市から給付費を受け取っています。その人数を、働いていない人の名前で埋めていた園がありました。
沖縄県那覇市・宜野湾市・浦添市で7つの保育施設を運営していた法人グループの件です。県と市が2024年から2025年にかけて発表した資料に、何が行われていたか、どうやって分かったかが書かれています。分かったきっかけは、名前を使われた側の保育従事者自身でした。
7施設すべてで、虚偽の職員配置
対象は、社会福祉法人と株式会社が運営していた7施設です。認可保育所が2、小規模保育事業所が3、企業主導型保育施設が2でした。
2025年2月の県の発表です。
法人が運営する全ての保育施設において、勤務実態のない職員等の氏名を、毎月の給付費等支払算定に係る職員表等に記載するとともに、勤務しているよう装うため関係書類をねつ造するなど、実態と異なる虚偽の職員配置等の報告を行っていたことを確認した。
令和元年度まで遡って調査した結果、実態と異なる虚偽の職員配置等の報告の数は、5年間で延べ 119 人にのぼる。
認可保育所と小規模保育の5施設について、3市が返還を求めた額は約1億5,059万円(平成31年4月から令和6年3月まで)です。
始まりは「辞めたのに、給与が出ていることになっている」
2024年8月の県の中間報告には、経緯が日付つきで書かれています。最初の行はこうです。
4月5日 ライオンの子ホールディングス株式会社が設置した保育施設の元保育従事者(以下「元保育従事者A」という。)から、令和3年5月に施設を退職し、それ以降勤務していないにも関わらず、系列の認可保育所からの給与として、那覇市に対し所得申告がなされているとの苦情があった。
辞めたあとも、自分が働いていない系列の園の給与として、市に所得の申告が出されていた。そのことに本人が気づいて、2024年4月に苦情を出したのが始まりです。
同じ報告書は、その「給与」の行き先も書いています。
元保育従事者Aの給与口座に係る通帳は、そらみライオンの子保育園において保管されており、振り込まれた給料は元保育従事者Aへ支払われることなく、振り込み直後に引き出し、現金化されていた
本人に払われていない給料が、本人の口座を通って約4年間振り込まれていた、ということです。
筆跡を写して、雇用契約書を作っていた
名前を使われたのは、辞めた人だけではありません。2025年2月の発表には、監査をすり抜けた手口として、こう書かれています。
(イ) 法人が運営する他の施設で勤務する職員の氏名等を使用し、虚偽の雇用契約書等を作成し提示するなど、巧妙な手口で指導等を免れていた。
中間報告では、さらに具体的です。
勤務実態の無い職員が配置されているよう装うため本人の筆跡を複写し雇用契約書を作成、加えて勤務地と居住地が近いようにみせかけるため複数の施設の労働者名簿にそれぞれ異なる住所を記載するなど書類をねつ造し
同じグループの別の園で働いている人の名前が、本人の知らない書類に載っていたことになります。
その間、子どもの側では保育士が足りていなかった
書類の上では足りていても、実際には足りていませんでした。中間報告の「保育士の不足」の項です。
宜野湾市にある認可保育所(そらみライオンの子保育園)で少なくとも 14 か月の期間1人、小規模保育事業所(ライオンの子保育園プンバァ)でほぼ全ての期間1人から2人、子どもを安全に保育し、質の高い保育を提供するための年齢別配置基準に基づく保育士の数が不足している状態であった
名前で埋められた穴の分だけ、現場では、いる保育士で回していたということです。
宜野湾市と浦添市は、3施設に対して、2025年3月から1年間、新しい子どもの受け入れを止める処分をしています。
監査では「見抜くことは難しい」
ここがいちばん重いところだと思います。県は中間報告で、監査の限界をそのまま書いています。
通常の指導監査では、監査調書に基づき、雇用契約書や賃金台帳等により職員の勤務実態を確認しているため、今回の事案のように各施設単独でみた場合、関係書類が整備されていれば、不正等の事実を見抜くことは難しく、特に、市町村や制度を跨いで複数施設を運営している団体等の場合は、施設監査等団体が異なるため、より一層困難となる。
7施設の監査の担当は、県、那覇市、浦添市、中部広域市町村圏事務組合(宜野湾市の分を共同で処理)、企業主導型については児童育成協会と、ばらばらでした。県はこのあと、同じ法人の複数施設を同時に監査するなど、監査の在り方を関係市町村と検討するとしています。
書類が揃っていれば見抜けない。だとすると、本人が気づくことが、いまのところいちばん確かな入り口になっています。
名前を使われた人に落ち度はない
念のため書いておくと、名前を使われた保育士は被害を受けた側です。筆跡まで写された雇用契約書を、本人が見る機会はありません。
そして、その園で実際に働いていた保育士は、書類より少ない人数で子どもを見ていた側です。どちらも、不正をした側ではありません。
明日、確かめられること
- 前の職場を辞めたあとの年の、住民税の通知や課税証明書を見てみる。 自分が働いた分より給与収入が多くなっていたら、市町村に問い合わせられます。今回の始まりも、市に出された所得の申告でした
- 自分の園を監査しているのがどこかを知っておく。 今回の7施設でも、認可保育所は県か市、小規模保育は市、企業主導型は県と児童育成協会と、施設の種類によって分かれていました
- 配置が足りていないと感じたら、園の外にも相談先があることを覚えておく。 県の資料のとおり、書類の上で足りていれば外からは見えません
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