ニュース解説

一口ゼリーは「避ける食材」の表にない 国の資料では窒息の多い食品です

奈良県香芝市の認定こども園で、4歳の男の子が、凍らせた一口サイズのゼリーをのどに詰まらせて亡くなったと報じられました。市は第三者委員会を設けて、原因と再発防止策を調べるとしています。

この園で何があったのかは、その検証を待つことになります。ここで書くのは、どの園にも関わる国の資料のほうです。

「ゼリーなら、こんにゃく入りでなければ大丈夫」「国の表に載っていないから大丈夫」。そう思っていたなら、一度読んでほしい内容です。

ひとまず、この表だけで足ります

国の資料ゼリーについて
誤嚥事故防止のための食材整理表(令和8年1月)「使用を避ける食材」に載っていない。ただし、載っていない食材でも事故は起こりうると注記
事故防止ガイドライン(平成28年)の本文過去に事故が起きた食材は使わないことが望ましい、と書かれている
同じガイドラインの参考例(浦安市のマニュアル)ミニカップゼリーは、一口あたりの窒息事故の頻度が餅に次いで高い。保育園給食でカップゼリーを使っていない例も載っている

「使用を避ける食材」の表に、ゼリーはない

こども家庭庁は今年1月、節分の前に、食品による窒息事故を防ぐための事務連絡を自治体に出しました。そこに添えられたのが「誤嚥事故防止のための食材整理表」です。

整理表で「使用を避ける食材」とされているのは、もち、白玉団子、乾いたナッツ・豆類、ミニトマト、ぶどう、さくらんぼ、個装チーズ、うずらの卵、アメ類・ラムネ、いか、こんにゃくです。ミニトマトやぶどうなどは、使うなら4等分して形や大きさを変える、といった工夫も書かれています。

ゼリーは、この表に入っていません。

ただ、表の冒頭にこう書かれています。

なお、本整理表に掲載した食材以外でも、誤嚥事故が発生する可能性があることを念頭に置いて、食事の見守りを行いましょう。

表は「ここに載っているものだけ避ければいい」という一覧ではない、ということです。

同じ国のガイドラインには、ゼリーが出てくる

整理表のもとになっているのは、平成28年に国が出した事故防止のガイドラインです。本文には、こう書かれています。

過去に、誤嚥、窒息などの事故が起きた食材(例:白玉風のだんご、丸のままのミニトマト等)は、誤嚥を引き起こす可能性について保護者に説明し、使用しないことが望ましい。

このガイドラインには、参考例として千葉県浦安市の「誤嚥・窒息事故防止マニュアル」が収められています。そこに、食品安全委員会のリスク評価を引いて、こうあります。

一口当たり窒息事故頻度(注1)は餅が最も高く、次いでミニカップゼリー、あめ類、パン、肉類、魚介類、果実類、米飯類となっている。

こんにゃく入りのミニカップゼリーについては、冷やしたときのことも書かれています。

こんにゃく入りミニカップゼリーは、上を向いたり吸い込んで食べたりすると気道に吸い込まれやすくなる。また、冷やすとさらに固さを増すため、十分に噛み切れないまま飲み込もうとして気道を塞ぐことがある。

香芝市の件のゼリーにこんにゃくが入っていたかどうかは、報道からは分かりません。ただ同じマニュアルは、こんにゃくに限らず、窒息に関わる食品側の要因として「食品表面の滑らかさ、弾力性、固さ、噛み切りにくさといった食感や、大きさ、形状など」を挙げています。凍らせれば、固さは変わります。

浦安市のマニュアルには、家庭への呼びかけとして、こんな一文もあります。

プチトマト、カップゼリー、ぶどう等は、誤嚥を防ぐために保育園給食で使用していないことを家庭へも伝えていく。

子どもの側から見ると

消費者庁によると、平成26年から令和元年までの6年間に、食品を誤嚥して窒息したことで、14歳以下の子どもが80人亡くなっています。そのうち5歳以下が73人で、9割を占めていました。

4歳になると乳歯は生えそろい、たいていのものは自分で噛んで食べられるようになります。それでも浦安市のマニュアルは、子どもの窒息には「あわてて食べるなどの行動が関連する」と書いています。食べ方を毎回すべて見守り切るのは難しいので、出すものの形や固さの側でも備えておく、という考え方になります。

見守りだけでなく、出すもので防ぐ

窒息は、食べている最中の一瞬で起きます。ガイドラインも、食べているときは継続的に観察するよう書いています。ただ、どれだけ見ていても、出された食べ物の形と固さは変えられません。

かといって、献立を立てる人ひとりの判断に寄せる話でもありません。ゼリーへの注意は、国の「使用を避ける食材」の表の外にあります。 書かれているのは、平成28年のガイドラインの参考例の中です。最新の表を確かめて献立を立てていても、そこまでたどり着くのは簡単ではありません。

それに、冷やしたおやつや凍らせたゼリーは、給食室からだけ出てくるものではありません。暑い日のおやつ、夏祭りや誕生会、保育室でのちょっとしたお楽しみ。出す場面は、保育の側にもあります。

国の事務連絡は、自治体に対して、この情報を「保育や給食に従事する者をはじめ、全職員や関係事業者に情報を共有する」よう周知を求めています。給食室も保育室も、同じ情報を持っていること。 それを用意するのは、職員一人ひとりではなく、園という組織の役割です。

同じ時に配られた「行事やイベント食の注意点」には、節分の豆まきで煎り大豆の代わりにボールを使う、お月見や餅つきで団子や餅を出さずに飾りや遊びで風習を伝える、といった例が並んでいます。行事を残したまま、出すものだけを変えるやり方です。

明日、確かめられること

  1. 今月の献立表とおやつ表、行事の予定を、食材整理表の「使用を避ける食材」と見比べる。 整理表はこども家庭庁のページで誰でも見られます。給食室だけでなく、保育の側で見ても構いません
  2. 表に載っていない食材を「載っていないから大丈夫」としない。 ゼリーは、国のガイドラインの参考例で、一口あたりの窒息事故の頻度が高い食品として名前が挙がっています
  3. 暑い日や行事で、冷やしたり凍らせたりして出すものがあるなら、給食室と保育室の両方で共有する。 冷やすと固さが増す食品があることは、国のガイドラインの参考例に書かれています
  4. 遠足のお弁当やおやつについて、家庭への便りで何を伝えているか確かめる。 浦安市のマニュアルは、園で使っていない食材を家庭にも伝えることを挙げています

事故が起きたときの国の集計は死亡事故の記事に、見守りだけに頼らず環境の側で防ぐ考え方は骨折事故の記事に書きました。

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