制度のきほん

こども誰でも通園制度のお金の話 単価は3年で倍近くになっていました

前の記事で、こども誰でも通園制度の中身を整理しました。制度の話はそちらに書いたので、こちらはお金の話だけです。

結論から書くと、国はかなり本気でお金をつけています。

単価は3年で倍近くになっています

園に入るお金は、子ども1人1時間あたり0歳児1,700円、1・2歳児1,400円です。

この3年でこう変わってきました。

実施した自治体単価(こども1人・1時間)
令和6年度(試行)118自治体一律850円
令和7年度(制度化)252自治体0歳1,300円/1歳1,100円/2歳900円
令和8年度(給付化)全自治体0歳1,700円/1・2歳1,400円

0歳児は2年で2倍です。実施する自治体も118 → 252 → 全国と広がっています。

制度が「試行 → 地域の事業 → 法律に基づく給付」と格上げされるのに合わせて、単価も上がってきた形です。

加算が8種類あります

基本の単価に、こういう加算がつきます。

  • 障害児(1時間600円)/医療的ケア児(1時間2,500円)/要支援家庭のこども(1時間600円)
  • 初回対応加算(1回 0歳児1,700円・1・2歳児1,400円)… 事前面談と事後面談を実施した場合
  • 保護者支援面談加算(1回1,400円)… 子育ての相談に30分以上応じた場合
  • 生活困窮家庭等負担軽減加算/賃借料加算/特別地域加算

このうち5つが今年度の新設です。

現場の立場でいちばん意味があるのは、面談にお金がついていることだと思います。前の記事で書いた事前面談30分・事後面談10分は、業務のおまけではなく加算の対象になっている仕事です。園がそこに時間を割く根拠になります。

医療的ケア児の加算は1時間2,500円で、基本単価より高くなっています。 看護師等の配置が前提の加算です。

ただし、1人あたりの総額は小さい

単価は高いのですが、月10時間が上限です。1・2歳児なら1,400円×10時間で、1人あたり月14,000円にしかなりません。

つまり人数を集めないと成り立たない設計です。少ない子を長く見るのではなく、多くの子を短く見る。現場で「入れ替わりが多い」と感じるとしたら、単価の作り方がそうなっているからです。

ここは制度の趣旨とぶつかりうるところでもあります。国の資料は定期利用(園や曜日を固定して通う形)を勧めていて、そのほうが保育者と子どもの関係をつくりやすいとしています。一方で単価の作りは、人数を集めるほうに効きます。

始めるときの費用にも補助があります

日々の運営費とは別に、始めるときの費用にも補助がつきます。

  • 部屋を改修する場合 … 1事業所あたり約452万円まで(保育所等改修費等支援事業)。ほかに礼金と開設前月分の賃借料で60万円まで
  • ICT機器の導入 … 1施設あたり20万円
  • 新しく建てる・増築する場合 … 就学前教育・保育施設整備交付金の対象。しかも誰でも通園制度を実施する市区町村は、補助率が2分の1から3分の2に嵩上げされます

嵩上げの対象は、待機児童対策・人口減少対策と、この誰でも通園制度の3つです。国がどこに力を入れているかが、補助率に出ています。

細かい条件もありました。

  • 改修は、共用部分(調乳室や保育室など)も、必要な改修なら対象になり得る
  • ただし園庭の整備は対象外
  • 誰でも通園制度専用の建物を整備した場合、他の事業(一時預かりなど)との併用は不可
  • WAM(福祉医療機構)の優遇融資も使える

「園が急に部屋の改修を始めた」というときは、これが背景かもしれません。

別の加算が取りやすくなる、という効き方もあります

もうひとつ、見落としやすい効き方があります。

主任保育士専任加算や事務職員雇上費加算には「複数事業等実施要件」というものがあって、延長保育や一時預かりなどを実施していないと加算が取れません。

そして令和8年度から、この選択肢に「乳児等通園支援事業」(=こども誰でも通園制度)が追加されました。

主幹教諭等専任加算、主任保育士専任加算、事務職員雇上費加算、高齢者等活躍促進加算及び主幹教諭等の専任化により子育て支援の取組を実施していない場合の減算の、複数事業等実施要件について、乳児等通園支援事業の実施を選択肢の一つに追加し、実施の促進を図る。

つまり誰でも通園制度をやると、公定価格の別の加算が取りやすくなるということです。その事業単体の収支だけを見ていると、この効き方は見えません。

加算のしくみそのものは別の記事にまとめました。

幼稚園が0〜2歳を預かる事業と比べてみる

同じ0〜2歳を預かる事業として、幼稚園が3歳未満児を受け入れる仕組み(一時預かり事業の幼稚園型Ⅱ)があります。時間あたりで比べると、差がかなりありました。

福岡市の補助単価を例にとると、2歳児は日額2,250円(8時間までの利用)。時間に直すと約281円です。誰でも通園制度の1・2歳児は1時間1,400円なので、時間あたりでは5倍近くになります。

ただし前提が違うので、そのまま比べられる数字ではありません。

  • 幼稚園型Ⅱは月〜金で毎日預かる想定。月20日なら1人あたり月45,000円ほど
  • 誰でも通園制度は月10時間が上限。1人あたり月14,000円ほど
  • 保護者が払う利用料の仕組みも違う(幼稚園型Ⅱは保育所並みの保育料で、福岡市の場合は上限49,000円)

それでも、1時間あたりの手厚さがこれだけ違うのは事実です。誰でも通園制度は「短い時間を、手厚い単価で」という設計になっています。

一時預かり事業との差も、お金に出ています

前の記事で、誰でも通園制度と一時預かり事業の考え方の違いを書きました。この差は、制度の位置づけにも出ています。

  • 一時預かり事業 … 市町村が地域のニーズに応じて実施を判断する「事業」。令和5年度の実績で1,269自治体が実施
  • こども誰でも通園制度 … 子ども・子育て支援法に基づく「給付」。全自治体で実施され、こどもに一定の権利性が生じる

事業は「やるかどうかを自治体が決める」もの、給付は「対象なら受けられる」ものです。同じ0〜2歳の預かりでも、制度としての格が違います。 そしてその格の違いが、単価と予算の付き方にもそのまま出ている、ということになります。

財源は「子ども・子育て支援金」です

令和8年度の予算額は349億円。負担の内訳はこうです。

支援納付金:1/2 国:1/4 都道府県:1/8 市町村:1/8

半分が「子ども・子育て支援金」です。こども家庭庁のページには、こう書かれています。

この制度には全ての世代や企業のみなさまから拠出いただく子ども・子育て支援金が充てられます

医療保険料に上乗せして集めているお金のことです。この制度は、そこから直接お金が出ています。

批判されることの多い財源ですが、具体的に何に使われているのかを1つ挙げるなら、これがその答えの1つということになります。

「1施設あたりの上限はない」という話

最後に、園の運営に関わる方から聞くことのある話について。

令和7年度のQ&Aに、こういうやり取りがありました。

1施設当たりの委託料等の上限額はありますでしょうか。

これへの答えがこうです。

市町村ごとの補助基準額の設定はありますが、1施設当たりの委託料等の上限はございません。

「1施設あたりの上限はない」のは事実です。ただし読むときに2つ注意がいります。

  • 市町村ごとの補助基準額はあります。 自治体全体には枠があって、その中での話です
  • これは令和7年度のQ&Aです。令和8年度は給付になって仕組みが変わっているので、そのまま当てはまるとは限りません

「青天井で出る」という言われ方をすることがありますが、施設整備のほうには上記のとおり上限額があります。 ここは混ざりやすいところです。

まとめ

  • 単価は3年で倍近く(0歳児850円 → 1,700円)
  • 加算8種類、うち5つが今年度の新設。 面談にも加算がつく
  • ただし月10時間が上限なので、1人あたりは月14,000円程度。人数を集める設計
  • 始めるときの改修費・ICT・整備交付金にも補助。整備交付金は補助率が嵩上げされる
  • 別の加算が取りやすくなるという効き方もある
  • 財源の半分は子ども・子育て支援金
  • 幼稚園が0〜2歳を預かる事業と比べると、時間あたりの単価は5倍近い

制度の中身のほうはこちらの記事に書きました。お金の付き方を見ると、国がこの制度をどう位置づけているかが分かります。 少なくとも、様子見の予算の付け方ではありませんでした。

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