在宅育児なら月1万5000円 市川市が9月から始めた手当
千葉県市川市が、保育園などに通っていない子どもに月1万5000円を支給する制度を9月から始めました。所得制限なし。制度の名前は「選べる市川子育てスタイル」で、保育料無償化と手当のどちらかを選ぶ形です。そして「こども誰でも通園制度」は使っても手当がもらえます。
千葉県市川市が、保育園などに通っていない子どもに月1万5000円を支給する制度を9月から始めました。所得制限はありません。
保育の仕事をしていると、「園に来ない子」に給付が出るという話はあまり聞きません。市のページを読んでみたら、思っていたより考え抜かれた設計でした。
「選べる市川子育てスタイル」という名前がついています
手当だけの話ではありませんでした。市のページには、こう書かれています。
すべてのこどもに対する公平な支援を実現するため、保育園等に預けても、在宅で育児をしても、どちらを選んでもサポートを受けられる「選べる市川子育てスタイル」を開始することになりました。市川市のこどもは、保育料無償化もしくは市川こども手当のどちらかを受けることができます。
つまり2本立てです。
| 支援の中身 | |
|---|---|
| 保育園などに通う | 保育料が無償(同じ9月から第1子まで拡大) |
| 通っていない | 月1万5000円の手当 |
保育料の無償化のほうも、同じ9月からです。ただしここは少し整理が要ります。
3〜5歳児クラスは、国の制度でもともと無償です。令和元年(2019年)10月から全国で無償化されています。
変わったのは0〜2歳児クラスのほうでした。この年齢は、国の無償化だと市民税非課税世帯に限られます。
市川市はそこを広げていて、今回の変更を市の言葉では「保育料の無償化を第1子まで拡大」と説明しています。つまり、これまでは第1子が対象外だった、ということです。
9月からは0〜2歳児クラスのすべての児童が無償になります。所得は問いません。市外の認可保育施設に通う子も対象です。
つまり市川市では、0歳から5歳まで、認可保育施設に通う子の保育料が全員無料になりました(給食費などの実費は別です)。
どちらを選んでも支援を受けられる状態を作った、というのがこの制度の考え方です。
手当の中身
市のページから拾うと、こうなっています。
- 対象:生後57日から小学校入学前まで。市川市に住民登録があり、保育施設等を利用していないこども
- 金額:1人につき月額15,000円
- 所得制限:なし
- 支給:年4回(3月・6月・9月・12月)に3か月分ずつ
- 申請:オンラインのみ
- 振込先:こども名義の口座に限る(保護者名義は不可)
年4回まとめてというのが少し独特です。毎月ではありません。
なお今年度(令和8年度)だけは、支給の時期が別に決められています。 9月分は12月、10〜12月分は3月、1〜3月分は5月です。初回の振込は12月ということになります。
「こども誰でも通園制度」は使ってもいい
対象の説明に、こんな注記がありました。
認可保育施設、認可外保育施設、幼稚園(「一時預かり」や「誰でも通園制度」等の短期サービス利用者は本手当を受けられます)
誰でも通園制度を使っても、手当はもらえます。
こども誰でも通園制度は、働いていなくても0〜2歳を園に通わせられる国の制度で、今年度から全国の自治体で実施されることになりました。月10時間までです。
つまり市川市では、こういう組み合わせができます。
- 保育園に通う → 保育料が無償
- 在宅で育てる → 月1万5000円
- 在宅で育てながら、誰でも通園を月10時間使う → 手当はそのままもらえる
国が「通わせるほう」に給付を作った年に、市は「通わせないほう」にも給付を作り、しかも併用できるようにしたということになります。
市が想定している使われ方
「在宅育児」と聞くと、働いていない家庭の話に見えます。ただ市の説明を読むと、もう少し幅がありました。
こどもと向き合う時間を大切にしたい、保育園と幼稚園のどちらがこどもに合うのかゆっくり在宅育児をしながら考えたい、ファミリーサポートや一時預かりなどを利用しながら3歳になったら幼稚園に通いたい、といった家庭の選択を後押しします
市は「3歳から幼稚園」を明示的に想定しています。0〜2歳は在宅で、一時預かりや誰でも通園を使いながら過ごし、3歳で幼稚園へ。そういう道筋を、手当で支える形です。
幼稚園が0〜2歳を預かる話を前に書きましたが、そちらとは逆向きの動きです。あちらは幼稚園が0〜2歳に降りてくる話、こちらは0〜2歳を在宅で過ごして3歳で幼稚園に上がる話になります。
児童手当とは、作りが違います
「年4回」「こども名義の口座」と聞いて、児童手当と同じような感覚で読んでいたのですが、並べてみたらかなり違いました。
| 児童手当 | 市川こども手当 | |
|---|---|---|
| 支給 | 年6回(偶数月)・2か月分ずつ | 年4回(3・6・9・12月)・3か月分ずつ |
| 振込先 | 請求者(保護者)名義 | 対象児童名義 |
口座のところが、同じ市川市の中で正反対になっています。児童手当のページには、こう書かれています。
請求者名義の金融機関の口座のわかるもの
※配偶者、児童の口座は指定できません。
一方、市川こども手当は「対象児童名義のものに限ります。保護者の名義には変更できません」です。
理由は、手当を受け取る人が違うからでした。
本来、手当を受け取る方が申請者となりますが、本制度においてはこどもとなるため、保護者の方に代理申請者として申請していただきます
児童手当は保護者に払うもの、市川こども手当はこども本人に払うもの、という建て付けです。だから口座も名義も変わります。名前は似ていますが、別の種類の制度です。
保育士の側から見ると
正直なところ、これがどう効くかはまだ分かりません。分かる範囲で書きます。
まず、0〜2歳の未就園児は少なくありません。 誰でも通園制度の記事で書いたとおり、0〜2歳の約5割(約125万人)がどこにも通っていません(令和6年度の推計)。 その層に、初めて現金が向いたことになります。
園児数にどう効くかは、両方向がありえます。 「手当がもらえるなら在宅で」と考える家庭が増えれば0〜2歳の申込は減りますし、逆に「3歳から幼稚園」という道筋が示されたことで幼稚園には効くかもしれません。市の資料からは、どちらとも書かれていません。
ただ確実に言えることが1つあります。「園に通わせない」という選択に、市が値段をつけたということです。これまで保育の支援は「保育が必要な家庭」に向いていました。そこが変わりつつあります。
幼稚園の話でもあるのかもしれません
もうひとつ、読んでいて気になったことがあります。
市の説明が想定する使われ方に、「3歳になったら幼稚園に通いたい」が明示されていました。0〜2歳は在宅、3歳から幼稚園、という道筋です。
その幼稚園はいま、こういう状況です。全国の幼稚園は昭和60年度の15,220園から、令和6年度は8,530園まで減っています。1園あたりの在園児数は平均89人です(幼稚園型認定こども園を含む数字です)。
0〜2歳を在宅で過ごした子が3歳で幼稚園に上がる流れが太くなれば、幼稚園にとっては追い風になります。
ただし、市の資料に「幼稚園のため」とは一言も書かれていません。 そう読むこともできる、という以上のことは言えません。
細かいけれど気になった点
読んでいて引っかかったところを3つ。
なぜ生後57日からなのか。 市のQ&Aに答えがありました。
保育施設を利用できる日が生後57日からであり、保育料無償化等と支給開始時期を合わせています
保育園に入れる日と揃えてあるわけです。「どちらを選んでも」を徹底するなら、開始日も揃える必要がある、ということだと思います。
振込先がこども名義の口座に限られます。 保護者名義には変更できないと明記されています。子どもへの手当という位置づけを、口座の名義で示している形です。
生活保護を受けている場合は受給できません。 「手当が収入認定の対象となるため」と書かれています。所得制限はないのに、ここだけ例外になっています。
明日、確かめられること
- 自分の自治体に似た制度がないか調べてみる。 「(自治体名) 在宅育児 手当」で検索してみてください。ほかにも同じような制度を持つ自治体があるのかは、今回は確認できませんでした
- 保護者に聞かれたときのために、「誰でも通園制度は併用できる自治体がある」と知っておく。 制度の組み合わせ方は自治体によって違います
- 自分の園の0〜2歳の申込状況を、来年度に向けて気にしておく。 こうした制度がある地域では、動きが出る可能性があります
国がこども誰でも通園制度で「通わせるほう」を広げ、市川市は「通わせないほう」にも支援を置きました。0〜2歳をどう支えるかが、いろいろな方向から動いているところです。市川市の効果が見えてくるのは、来年度の申込状況が出てからだと思います。
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