制度のきほん

いい保育室とはどんな部屋か 国の資料は家具の高さまで書いています

環境が大事だ、という話はあちこちで出てきます。ただ「では具体的にどうすればいいのか」になると、急に言葉が抽象的になります。

資料のほうは、そこそこ具体的でした。 家具の高さや、玩具の持ちやすさまで書いてあります。

保育室に求められているのは、2つの顔です

保育所保育指針は「保育の環境」に4つの事項を置いています。保育室そのものはこれです。

ウ 保育室は、温かな親しみとくつろぎの場となるとともに、生き生きと活動できる場となるように配慮すること。

くつろぐ場と、活動する場の両方、と書かれています。解説はこう噛み砕きます。

一日の生活が、発達過程や時期、季節などに即して静と動のバランスのとれたものとなるよう配慮することが重要である。

一日の中で、子どもが保育士等と一緒に落ち着いて過ごしたり、くつろいだりすることのできる時間や空間が保障されることが大切である。それとともに、一人又は少人数で遊びに集中したり、友達と一緒に思い切り体を動かしたり、様々な活動に取り組むことができるなど…

どちらか片方の部屋ではなく、一日の中に両方の居場所がある状態を指しています。

コーナーの作り方が、いちばん具体的です

乳児の保育室について、解説はここまで書いています。

例えば、保育室の遊びのコーナーを、一人一人に合わせて遊べるよう更に小さなコーナーに分け、玩具やものを用意する。コーナーは保育士等からは全体が見えるように背の低い安定した家具で仕切るなどして、圧迫感を感じさせないよう考慮しながら、子どもにとって落ち着ける空間にする。

短い一文に、条件が4つ入っています。

条件中身
分ける大きなコーナーを、さらに小さく割る
見える保育士から全体が見える
低い背の低い、安定した家具で仕切る
圧迫しない囲いすぎて息苦しくしない

「仕切る」と「見える」を同時に満たすのが、背の低い家具、という順序で書かれています。棚の高さを変えるだけで条件を3つ満たせる、とも読めます。

コーナーの管理についても続きます。

コーナーの玩具等は、破損や衛生に気を配り、怪我や事故などが起きないように留意する。日頃から状態の点検や確認を心がけるとともに、素材の強度や手入れのしやすさなどに配慮して用意することも大切である。

動線という言葉は、定義されていません

ここから「動線」が何度も出てきます。ただ、資料はこの言葉に説明を付けていません。出てくるのは、いつも何かとセットの形です。

  • 子どもの動線に配慮した手洗場や遊具の収納
  • 子どもの動線に配慮した園庭や遊具の配置
  • 5歳の子どもの動線と、3歳の子どもの水汲みの動線が交差する

並べると読み取れます。置き場所で決まり、他の子の道とぶつかることがあるもの。 つまり、入口からロッカー、ロッカーから遊びの場、遊びの場から手洗場と、子どもが一日に引く線のことです。

もうひとつ、解説は「行動範囲」と並べて使います。

一人一人の子どもの興味や関心に沿った環境を構成するとともに、その行動範囲や動線を視野に入れて空間の取り方や区切り方を工夫することが重要である。

範囲が広がれば線も伸びる、という関係です。線どうしがぶつかる話は、園庭のところで出てきます。

見るのは広さだけではありません

空間の見方が、こう書かれています。

また、一人一人が充実して遊べるように、場所の広さや動線、他者の存在の気配など、空間のつくり方にも配慮する。

「他者の存在の気配」という言葉が入っているのが目を引きます。誰かがいる感じがするかどうかも環境のうち、という捉え方です。

この「他者の存在の気配」は0〜2歳の節の言葉ですが、空間の見方としては年齢を問いません。

保育室の広さには1人あたりの基準がありますが、測れるのは面積までで、動線は測れません。 ここは各園が決める部分です。

3歳以上になると、動線は物の置き場所の話になります

ここまでは0〜2歳のところの記述です。3歳以上の節では、動線の出てくる場所が変わります。

保育所でも、例えば、子どもの動線に配慮した手洗場や遊具の収納など保育所の生活環境に十分配慮することも必要である。

片付けや手洗いが進まないとき、置き場所のほうを見るという読み方ができます。絵本についても同じ形で書かれています。

絵本が子どもの目に触れやすい場に置かれ、落ち着いてじっくり見ることができる環境があることで…そのために、保育室における子どもの動線などを考えて絵本のコーナーを作っていくようにすることが求められる。

園庭にも動線があります

指針の本文に、園庭の条文があります。

その際、子どもの動線に配慮した園庭や遊具の配置などを工夫すること。

解説はこれを3つに分けています。

第一に、子どもの遊びのイメージ、興味や関心の広がりに応じて行動範囲が広がることを考慮することである。例えば、室内でままごとをしている子どもがイメージの広がりとともに、「ピクニックに行こう」と戸外に出ていくことがある。この場合、戸外にもままごとのイメージを実現できるような空間や遊具が必要になろう。

第二に、園庭全体の空間や遊具の配置を子どもの自然な活動の流れに合わせるということである。

3つ目がいちばん具体的です。

例えば、ルールのある活動に取り組む活発な5歳の子どもの動線が、3歳の子どもの砂場の水汲みの動線と交差するような場合には危険を伴うので、保育所全体で園庭の使い方について話し合い、見直す必要があるだろう。

重大事故がいちばん多いのは5歳児で、半分は園庭で起きています。動線が交差する場所を1か所見つけるだけでも、事故の話につながります。

戸外が動かしにくいことにも触れています。

室内環境に比して、戸外の環境は年間を通して同じ遊具が配置され、空間が固定的になっている傾向がある。 子どもの興味や関心に即したものになるように配慮しなければならない。

そして、外に出ない子について、はっきり書かれています。

室内の活動に偏り、戸外に関心を示さない傾向があるとすれば、戸外の環境の見直しをしなければならない。

子どもの性格の話にせず、外の側を見直すという順序になっています。

園庭に要る空間も、3つに分けて書かれています。

イメージを実現する面白さを味わおうとする子どもには遊びの拠点となるような空間や遊具が、友達とルールのある運動的な遊びを展開しようとする子どもには比較的広い空間が、木の葉や虫に触れて遊ぼうとする子どもにはその季節に応じた自然環境が必要である。

玩具の選び方も書いてあります

この時期の子どもにふさわしい玩具を選ぶ際には、その音の大きさや質、形や手触り、色合い、大きさや重さ、持ちやすさなど、子どもの感覚や動きに照らして吟味する。

「好きそうか」ではなく、感覚と動きに照らして選ぶ、という書き方です。

長くいる子には、別の場所が要ります

認定こども園向けに、国が「園児が心を寄せる環境の構成」という資料を出しています。長時間いる子どもについて、こう書かれています。

長時間在園するため、疲労することもあれば集中力が続かないこともあり得ます。…そのようなときに、家庭的な雰囲気の空間や自分のペースでゆっくりと遊べる遊具など、くつろいで過ごせるような環境があると、園児は安心して過ごすことができます。

4歳以上であっても、午睡はしないけれど静かに横になって休みたい園児もいます。…例えば、保育室に隣接した空間に、自分のペースでのんびりと過ごすことができるスペースを設けるなどの配慮が、環境の構成として必要となるかもしれません。

そのうえで、釘を刺しています。

特に猛暑の季節や風邪などが流行る時期は、先に述べたようなスペースに保育教諭等不在で園児のみ休息させることは避けなければなりません。

休める場所を作ることと、そこに人がいることはセットだ、という書き方です。

どこの園でも同じ環境でよい、とは書かれていません

同じ資料に、こう断りが入っています。

同じ時期にどこの園でもこの環境を構成すればよいということではないということに留意が必要です。

正解の配置図は配られていません。 だから資料を読んでも、そのまま真似できる図面は出てきません。出てくるのは、判断するときの条件のほうです。

その条件をもう一度並べると、こうなります。

  • 一日の中に、くつろぐ場と体を動かす場の両方があるか
  • コーナーは小さく割れているか。仕切りは背が低く、安定していて、全体が見えるか
  • 動線を見ているか。人の気配が届くか
  • 玩具は感覚と動きに照らして選ばれているか
  • 疲れた子が横になれる場所があり、そこに大人がいるか

明日、確かめられること

  1. 棚の高さを測ってみる。 大人が立って全体を見渡せない高さなら、指針解説の条件から外れています
  2. コーナーが大きすぎないか見る。「更に小さなコーナーに分け」と書かれています
  3. 自分のクラスの動線を1本だけ追ってみる。入口から自分のロッカー、そこから遊びの場まで、途中で何かにぶつからないか
  4. 午睡をしない子が横になれる場所があるか見る。無ければ、その子を静かに過ごさせる工夫を足すより先に、場所を用意できないかという相談にできます。資料には「保育室に隣接した空間に」と書かれています
  5. 玩具を1つ持ってみる。重さと持ちやすさは、その年齢の手に合っているか
  6. 園庭で、動線が交差している場所を1か所探す。 5歳の走る線と3歳の水汲みの線が重なっていないか
  7. 外に出たがらない子がいるとき、その子ではなく戸外の環境のほうを見る。解説はその順序で書かれています

環境の話は、保育者の気配りの話にすり替わりやすい部分です。ただ、資料が挙げているのは棚の高さや動線や玩具の重さで、どれも人ではなく物の側にあります。 手を入れれば変わるところから見ていくほうが、たぶん早いです。

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