ニュース解説

重大事故がいちばん多いのは5歳児 81%は骨折で、半分は園庭です

「重大事故」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。

午睡中の窒息。食事中の誤嚥。プール。送迎バスの置き去り。研修で繰り返し扱われるのは、だいたいこのあたりだと思います。

こども家庭庁が7月29日に、「令和7年教育・保育施設等における事故報告集計」というものを公表していました。認可の施設・事業には事故を国に報告する法令上の義務があり、認可外や放課後児童クラブなども自治体への報告が義務になっています。その報告を、令和7年1月1日から12月31日までの1年ぶん数えたものです。

数えている対象は、この3つに限られます。

  • 死亡事故
  • 意識不明事故(どんな刺激にも反応しない状態に陥ったもの)
  • 治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故

全治30日以上。 かすり傷やちょっとしたケガの話ではありません。それが令和7年に3,130件ありました。

中身を見ると、思っているのとかなり違いました。

まず、死亡事故は1件でした

先にこちらを書きます。

死亡の報告は1件(対前年-2)

しかもその1件は放課後児童クラブでの溺死で、未就学児を預かる施設の死亡事故は0件でした。

過去と並べると、この数字の意味が分かります。

死亡事故
平成16年14件
平成19年15件
平成27年14件
令和2年5件
令和6年3件
令和7年1件

20年前は年に14〜15件ありました。分科会でも委員が「死亡事故が明らかに減っている」「ぜひ全国の施設に共有されては」と発言していました。

睡眠中の窒息対策も、誤嚥の注意喚起も、バスの安全装置も、やってきたことは効いています。 そこは先に確認しておきたいところです。

中身の81%は骨折です

では死亡以外の3,129件は何かというと、こうです。

負傷等の報告は 3,129 件(対前年-59)、そのうち 2,533 件〔81%〕(対前年-5)が骨折によるもの

全治30日以上の重篤な事故の、8割が骨折でした。

いちばん多いのは5歳児でした

年齢別を見て、いちばん意外だったのがここです。

年齢件数(全施設)
0歳7
1歳113
2歳235
3歳306
4歳514
5歳777
6歳(未就学)400
小学生以上778

小学生以上の778件は、そのほとんどが放課後児童クラブです。保育施設の話にしぼると、年齢が上がるほど増えて、5歳がピークになります。0歳の7件に対して5歳は777件。100倍以上あります。

認可保育所だけで見ても同じで、0歳0件・1歳79件に対して、5歳は408件でした。

0〜2歳の事故防止は、研修でも園内のルールでも繰り返し扱われます。実際に死亡事故が減ったのもそこです。一方で、いちばん多く起きているのは4〜6歳のクラスだということになります。

場所は、半分が園庭です

施設内が 2,799 件〔89%〕

のうち、

1,400 件〔50%〕 ( 対前年-51)は施設内の室外で発生

室内が1,399件、室外が1,400件。ちょうど半々です。園庭が室内と同じだけ事故の場所になっています。

中身を1件ずつ見てみました

こども家庭庁は、報告のあった事故をデータベースにして公開しています。Excelで落とせて、1件ごとに発生場所、年齢、何をしていたか、職員が何をしていたか、改善策まで入っています。

ここまでの集計とは別のデータで、期間もずれます(データベースのいちばん新しい令和6年度分は、令和6年12月までの報告分)。それを承知のうえで、認可保育所で起きた骨折659件を数えてみました。

何が原因か

割合
自らの転倒・衝突54.6%
遊具等からの転落・落下24.9%
こども同士の衝突9.1%
玩具・遊具等の安全上の不備1.5%

半分以上が自分で転んでいます。 誰かとぶつかったわけでも、遊具が壊れていたわけでもありません。

どこを折るか

上肢(腕・手・手指)が67.4%、下肢が25.2%。手をついて腕を折る形が3分の2です。

何歳か

5歳が34.6%、4歳が21.5%、6歳が18.7%、3歳が13.7%。4〜6歳で4分の3を占めます。

何をしていたか

自由記述を拾うと、走っていた、鉄棒、鬼ごっこ、跳び箱、ボール遊び。特別な行事ではなく、どこの園でも毎日やっていることばかりでした。

いつ起きているか

割合
午前中44.2%
夕方(16時頃〜夕食提供前頃)22.9%
午後18.2%
朝(始業〜午前10時頃)12.1%

いちばん多いのは午前中の活動時間です。ただ5件に1件は夕方でした。人数が減って合同保育になり、担任が変わる時間帯です。件数のわりに、対策の話題に上がりにくいところだと思います。

7割は、職員が見ている中で起きています

ここがいちばん書きたかったところです。

同じ659件について、事故が起きたときの状況がこう記録されていました。

割合
こどもは「いつもどおりの様子であった」83.0%
「集団活動中・見守りあり」だった75.1%
職員が至近で見ていた36.6%
職員が離れたところから見ていた34.0%
職員が見ていなかった25.2%

マニュアルがあった園は96.5%です。職員配置は、基準どおりだった園が64.0%、基準以上に配置していた園が36.0%でした(全国の園がふだんどちらなのかは公表されていないので、この数字から「人を増やせば防げる/防げない」は言えません)。

国の研修資料も、同じことを別の言い方で書いています。

担当職員がそばで見ていても、

離れた場所から見ていても

骨折事故の約7割が発生している、と。そして、

適切に見守りを行っていても、とっさに防ぐことは難しいものです

骨折事故は、わかりやすい前兆がなく起きうるもの であるといえます

こどもの様子についても、

職員からは普段と変わりなく見える中で発生

マニュアルがあって、見守りがあって、職員が近くで見ていて、こどもはいつもどおりで、それでも折れています。 見ていなかったから起きた、という話ではありません。

事故が起きたとき、現場は「自分が目を離したせいだ」と考えます。周りもそう見ることがあります。ただ、国が集めた数字が示しているのはそこではありません。

国は「見守りだけでは防げない」と書いています

では何をするのか。研修資料の結論はこうでした。

見守り(ソフト面 )のみに注力するのではなく、骨折などの大けがに至ることを防ぐ環境

(ハード面)の整備も併せて行っていく必要がある、と続きます。

転ぶことは止められないので、転んでも折れないようにする。 そちらに軸足を移そう、という話です。

この「個人の頑張りではなく環境を変える」という向きは、不適切保育の記事に書いた「叱らなくて済む環境」と同じ形をしています。つい叱ってしまうのを自分の性格のせいにしない。目を離したから折れたと自分を責めない。どちらも、人の注意力で支えている部分を、環境の側に移すという話です。

違うのは、今回はそれを国が集めたデータが言っていることです。挙げられている対策は、たとえばこういうものでした。

  • 遊具や設備を、こどもの目線になって手で触って確かめる。メジャーで高さや幅を測る
  • 走り出しやすい場所、ぶつかりやすい場所に色付きの目印をつける
  • 家具や収納の配置を変えて動線を変える
  • 床・段差・角・老朽化している部分から手をつける

見守りの側にも、具体的な提案がありました。

見守りを複数で行う場合、全体を見る職員と、児童の近くで見守る職員に役割分担をする

声のかけ方の例もあります。

「走ってはダメ」

ではなく

「ぶつからないようゆっくり歩こう」

に言い換える、という書き方でした。

明日、確かめられること

この調査研究には、そのまま園で使えるものが3つ用意されています。どれも無料で誰でも落とせます。

  • 研修資料(4ページ) … 骨折事故の現状、ハード面・ソフト面の対策、応急対応のフロー、そして最後の1枚が「あなたの施設ではどうする?」という記入式のワークシートになっています。職員会議でそのまま議事録に使える作りです
  • ポスター(1枚) … 近隣の医療機関を書き込む欄と、「119番する場合」「病院を受診する場合」の見分け方。事務室に貼る用です
  • 事故情報データベース(Excel) … 実際に起きた事故が1件ずつ読めます。自分の園に似た規模・似た遊具のケースを探せます

いちばん手が早いのはポスターだと思います。骨折を疑うときの目安が書いてあって、「軽く触れると痛がる」「ひどく腫れる」「指などが曲げられない」なら受診、意識や呼吸がおかしい・出血が多い・骨が見えているなら119番、という分け方です。判断に迷う場面で、壁にあるかどうかは違います。

そして5歳児クラスの担任なら、自分のクラスがいちばん件数の多い年齢だということは、知っておいて損はないと思います。0〜2歳ほど「事故が起きる年齢」として扱われていないぶん、盲点になりやすいところです。

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