自由保育の園で何をすればいいのか 要領と指針が役割を並べています
一斉保育の園から自由保育の園に移ると、何をすればいいか分からなくなることがあります。これは本人の問題ではありません。幼稚園教育要領解説は教師の役割を5つ挙げ、保育所保育指針解説は援助の種類を並べています。国自身が「ただ遊ばせているだけでは教育は成り立たない」と書いていました。
一斉保育の園から自由保育の園に移ってきた人が、何をすればいいか分からなくなる。これは実際によく起きます。
本人が保育をできないわけではありません。 一斉保育の園では「次に何をさせるか」が決まっていて、そこに自分の動きを合わせられました。自由保育の園では、その問いに答えが返ってきません。手が空いているように見えるのに、何をすればいいのか分からない。
ただ、やることが決まっていないわけではありません。 要領にも指針にも書かれています。
「ただ遊ばせている」は否定されています
幼稚園教育要領解説の「教師の役割」の節に、こうあります。
その際,幼児の主体性を重視するあまり,「幼児をただ遊ばせている」だけでは,教育は成り立たないということに留意すべきである。教師は,主体的な活動を通して幼児一人一人が着実な発達を遂げていくために,幼児の活動の場面に応じて様々な役割を果たさなければならない。
要領の本体にも、教師がすることが「しなければならない」の形で3つ並んでいます。
その際,教師は,幼児の主体的な活動が確保されるよう幼児一人一人の行動の理解と予想に基づき,計画的に環境を構成しなければならない。 この場合において,教師は,幼児と人やものとの関わりが重要であることを踏まえ,教材を工夫し,物的・空間的環境を構成しなければならない。 また,幼児一人一人の活動の場面に応じて,様々な役割を果たし,その活動を豊かにしなければならない。
問題は「様々な役割」が何を指すかです。そこは解説に書いてあります。
幼稚園教育要領解説が挙げている5つの役割
1. 理解者
まず,幼児が行っている活動の理解者としての役割である。集団における幼児の活動がどのような意味をもっているのかを捉えるには,時間の流れと空間の広がりを理解することが大切である。
その2つが何を指すかも書かれています。
時間の流れとは,幼児一人一人がこれまでの遊びや生活でどのような経験をしているのか,今取り組んでいる活動はどのように展開してきたのかということである。
空間的な広がりとは,自分の学級の幼児がどこで誰と何をしているのかという集団の動きのことであり,これらを理解するには,個々の幼児の動きを総合的に重ね合わせ,それを念頭に置くことが大切である。
立っているだけに見えても、この2つを追っているなら役割を果たしていることになります。
2. 共同作業者、共鳴する者
幼児に合わせて同じように動いてみたり,同じ目線に立ってものを見つめたり,共に同じものに向かってみたりすることによって,幼児の心の動きや行動が理解できる。
3. 憧れを形成するモデル
教師がある活動を楽しみ,集中して取り組む姿は,幼児を引き付けるものとなる。「先生のようにやってみたい」という幼児の思いが,事物との新たな出会いを生み出したり,工夫して遊びに取り組んだりすることを促す。
4. 遊びの援助者
ここがいちばん判断の要る役割です。
しかし,このような場合でも,いつどのような援助を行うかは状況に応じて判断することが重要である。 教師がすぐに援助することによって幼児が自ら工夫してやろうとしたり,友達と助け合ったりする機会がなくなることもある。
5. 精神的に安定するためのよりどころ
このような役割を果たすためには,教師は幼児が精神的に安定するためのよりどころとなることが重要である。
そして、これらは順番に切り替えるものではないと書かれています。
実際の教師の関わりの場面では,これらの役割が相互に関連するものであり,状況に応じた柔軟な対応をすることが大切である。
保育所側には、もっと具体的な一覧があります
保育所保育指針解説には、【子どもの主体的な活動を促す保育士等による多様な援助】という囲みがあります。
子どもに対する保育士等の援助は、一緒に遊ぶ・共感する・助言する・提案する・見守る・環境を構成するなど、多岐にわたる。子どもが自分でしようとする姿に、言葉をかけたり手を添えたりすることもあれば、何も言わずにただ近くにいて、子どもが不安そうに振り向いた時には目を見て頷くようにするということもある。
場に働きかける援助も入っています。
また、子どもにとって居心地がよく、生活の見通しがもちやすいように環境を整えたり、集中して遊び込めるように時間のゆとりをとるようにしたりするなど、子ども自身に直接関わるのではなく、場や生活の流れを調整することを通して子ども自身による活動の展開を促す援助もある。
そして、答えが1つに決まらないことも書かれています。
同じ子ども、同じような場面であっても、その時々の状況によって援助のあり方は一律なものではない。
問いの形が違うだけです
並べると、移ってきた人が詰まる理由が見えます。
| 手がかりになる問い | |
|---|---|
| 一斉保育 | 次に何をさせるか |
| 自由保育 | いま自分はどの役割をとるか |
一斉保育では、答えが時間割の側にあります。自由保育では、答えが目の前の子どもの側にあります。だから「何をすればいいですか」と聞いても、返ってくるのが「子どもを見てください」になる。聞いた側には答えになっていません。
「ついて来れない」のは、本人の資質ではなく、役割が言葉になっていないからです。 要領と指針の解説は、それを言葉にしています。
明日、確かめられること
移ってきた側
- 手が空いたと感じたら、理解者の役割に戻る。いま誰がどこで何をしているかを数えるだけでも、それは役割のひとつです
- 援助するかどうか迷ったら、迷っていること自体が正しい。「いつどのような援助を行うかは状況に応じて判断する」と解説に書かれています
- 「一緒に遊ぶ・共感する・助言する・提案する・見守る・環境を構成する」の6つを手札として持っておく。何も言わずに近くにいるのも援助です
受け入れる側
- 「見てれば分かる」で渡さない。要領解説は5つ、指針解説は6つの形で言葉にしています。 園の言葉に置き換えて渡すほうが早い
- その人が困っているのは方式の好き嫌いではなく、問いの形が変わったからです
自由保育か一斉保育かは、園が選ぶことです。ただ、どちらを選んでも保育者がすることは書かれています。 分からないと言っている人に渡すものは、ここにあります。
「これって放任では?」と感じたときに、一斉保育の経験をどう使うかはこちらの記事に書きました。
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