制度のきほん

研修を修了しても手当は出ません 発令されて初めて対象になります

園には処遇改善の加算が入っているはずなのに、自分の給与明細には出てこない。研修も受けたのに、という人がいます。

研修の修了は、条件の1つでしかありません。 国の通知を読むと、条件は3つあります。

この記事は、施設型給付を受けている幼稚園・認定こども園の話です。私学助成のままの幼稚園はこの加算の対象外です。その違いは私立幼稚園には2つの制度がありますに書きました。

条件は3つです

令和7年4月11日の通知(施設型給付費等に係る処遇改善等加算について)に、区分3の要件としてこう書かれています。

ⅰ 副主任保育士等(次に掲げる要件をすべて満たす職員をいう。以下同じ。)

a 副主任保育士・専門リーダー(保育所、地域型保育事業所及び認定こども園)若しくは中核リーダー・専門リーダー(幼稚園及び認定こども園)又はこれらに相当する職位の発令や職務命令を受けていること

b 概ね7年以上の経験年数を有するとともに、別に定める研修を修了していること。

若手リーダーのほうは、こうです。

b 概ね3年以上の経験年数を有するとともに、「乳児保育」「幼児教育」「障害児保育」「食育・アレルギー」「保健衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」のいずれかの分野…を担当するとともに、別に定める研修を修了していること。

つまり ①発令されていること ②経験年数 ③研修の修了、の3つが揃って対象になります。研修だけ修了しても、園が発令しなければ対象になりません。

「概ね」については、通知に注記があります。

「概ね」の判断については、施設・事業所の職員の構成・状況を踏まえた柔軟な対応が可能である。

7年ちょうどでないと駄目、という読み方ではありません。

4万円は上限です

金額の決まり方も通知にあります。

区分3-① 副主任保育士等 月額4万円を超えないものとする。

区分3-② 職務分野別リーダー等 原則として月額5千円。ただし、副主任保育士等の改善額のうち最も低い額を上回らない範囲において、月額5千円以上4万円未満とすることができる。

4万円は上限であって、その額が保証されているわけではありません。 若手リーダーのほうは原則5千円です。「中核リーダーになったのに4万円ではない」は、制度上ありえます。

金額の決まり方をもう少し詳しく知りたい場合は、キャリアアップ研修の記事に、園に入る加算額そのものの計算まで書いてあります。

幼稚園の研修は「合計60時間」です

ここからが、意外と知られていないところです。幼稚園と保育所では、研修の数え方が違います。

令和7年9月16日の通知(研修修了要件について)を見ると、保育所はこうなっています。

ア 副主任保育士 専門分野別研修のうちの3以上の研修分野及びマネジメント研修

イ 専門リーダー 専門分野別研修のうちの4以上の研修分野

そして「研修時間は各分野15時間以上とする」。15時間の塊を3つ、4つと積む形です。

幼稚園は違います。

ア 中核リーダー及び専門リーダー

合計60時間以上(ただし、中核リーダーについては、15時間以上のマネジメント分野に係る研修を含む。また、園内研修については、15時間以内の範囲で含めることができる。)

分野ごとの区切りがありません。 総量が60時間です。中核リーダーだけ、そのうち15時間以上をマネジメント分野にする必要があります。専門リーダーはその縛りもありません。

2時間の研修も、2時間として積めます

同じ通知に、わざわざ注記が置かれています。

(注)各分野15時間を修了する必要はなく、受講した時間数を加算に係る研修の修了時間として算入することが可能であること。

注記をつけているということは、混同されているということです。 保育所の「15時間×分野」の印象が強く、2時間や3時間の研修は意味がないと思われているのだと思います。そうではありません。

積み上げる前提であることは、別の条文からも読めます。

幼児教育センター、教育委員会等が行う経験年数や園内の役割に着目した研修やテーマ別の研修、都道府県が適当と認めた者が行う研修、旧免許状更新講習、免許法認定講習、都道府県等が行う保育士向けの研修及び園内研修など、各加算対象職員が受講した多様な研修の修了状況を把握し、加算対象職員の発令の種類に応じた研修受講歴の一覧化を行うこと。

出どころの違う研修を並べて足します。しかも、

なお、加算認定自治体が個別の研修についてあらかじめ認定を行うことは不要である。

1本ごとに事前の認定を取る必要もありません。

園内研修は15時間までです

上限があるのはここだけです。研修の実施主体は5つに分かれていて、園自身が企画・実施するものだけが別扱いになっています。

① 都道府県又は市町村(教育委員会を含む。) ② 幼稚園関係団体又は認定こども園関係団体のうち、都道府県が適当と認めた者 ③ 大学等 ④ その他都道府県が適当と認めた者 ⑤ 園内における研修を企画・実施する幼稚園又は認定こども園

⑤だけが、中核リーダー・専門リーダーで15時間まで(若手リーダーは4時間まで)です。①〜④の研修には時間の上限がありません。

②や④に当たる団体・事業者は、都道府県が認定しています。東京都は認定団体一覧を公表していて、令和8年7月時点で19団体。研修を申し込む前に、その主催者が載っているかを引けます。 認定事務は都道府県ごとなので、他の道府県も同じ形で出していることがあります。

受講歴は、自分で持つものです

ここは知っておいて損がありません。通知にこう書かれています。

ア 個別の研修の受講歴については、職員個人が管理することを基本とする。

修了証は人に付きます。園が変わっても残ります。さらに、

加算認定自治体により加算に係る研修を修了していることが確認された研修修了の証明については、他の加算認定自治体においても引き続き効力を有するものとして取り扱うこと。

自治体をまたいでも有効です。過去分についても道があります。

平成30年度以前に受講した研修については、加算認定自治体において、Ⅰに定める研修と内容が同等であると認められ、研修の受講が適切に確認できる場合に限り、要件を満たすものとして差し支えない。

制度が始まる前の研修すら、確認が取れれば認められます。「昔のものだから無駄」と思って捨てないことです。

「知らされていない」は、要件を満たしていません

冒頭の「もらえない」に戻ります。区分3の要件には、金額の話とは別に、こういう条項があります。

職員の職位、職責又は職務内容等に応じた勤務条件等の要件(職員の賃金に関するものを含む。)及びこれに応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)を定めて就業規則等の書面で整備し、全ての職員に周知していること。

区分1のキャリアパス要件にも、同じ形の条項があります。

それらの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての職員(非常勤職員及び法人の役員等を兼務している職員を含む。以下同じ。)に周知していること。

そして区分2には、これがあります。

賃金改善の具体的な内容を職員に周知していること。

どの区分にも「周知」が要件として入っています。 自分の園がどの職位にいくら払う仕組みなのかを職員が知らない状態は、国が求めている状態ではありません。聞くのは遠慮ではなく、要件の確認です。

私学助成のままの幼稚園は対象外です

この加算は施設型給付の制度なので、新制度に移行していない幼稚園は対象になりません。東京都のFAQにも、私学助成の補助について「施設型給付費を受ける(略)幼稚園(略)は対象外です」と、逆向きにはっきり書かれています。

ただし、認定こども園にならなくても新制度に移れます。 こども家庭庁の資料では「施設型給付を受ける幼稚園」と「施設型給付を受けない幼稚園」が別々の選択肢として並んでいます。

移行を考えている園にとっては、研修の扱いが効いてきます。修了証は職員個人に残るので、移行前に受けた分も後から積算できます。 中核リーダーは60時間なので、移行してから始めると発令までに時間がかかります。

明日、確かめられること

  1. 自分が発令を受けているかを確認する。 中核リーダー・専門リーダー・若手リーダーのいずれかの発令か職務命令がないと、研修を修了していても対象になりません
  2. 自分の受講歴を数える。 園の研修、教育委員会の研修、テーマ別の研修、旧免許状更新講習。全部足して60時間です。2時間のものも2時間として入ります
  3. 修了証を自分でまとめておく。 受講歴は職員個人が管理するのが基本、と通知に書かれています。転職しても、自治体が変わっても残ります
  4. 園の賃金体系がどこに書いてあるかを聞く。 就業規則等で整備して全職員に周知することが要件です。「知らない」状態は要件を満たしていません

加算は、園に入って職員に渡るまでに、発令という段があります。 そこが見えていないと「園はもらっているのに自分には来ない」に見えます。制度の側は、その段を書面にして全員に知らせることまで要件にしています。

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