記録は1日1つ、はっとした場面から 明日の環境はそこから決まります
一斉保育の園では、記録は「今日何をしたか」を書くものでした。遊びを中心にした保育では、記録は明日何を置くかを決める材料になります。文部科学省の指導資料に載っている先生の記録を手がかりに、何を書けばいいのか、どう明日につなげるのかを、明日からできる形で整理しました。
一斉保育の園では、記録といえば「今日、何をしたか」でした。製作をした、リズムをした、全員できた。活動が決まっているので、書くことも決まっています。
遊びを中心にした保育に移ると、子どもはそれぞれ違うことをしています。全員の活動を書き出すことはできません。それに、ここでの記録には別の役目があります。明日、何を置くかを決める材料になることです。
文部科学省の指導資料『指導計画の作成と保育の展開』には、幼稚園の先生が実際に書いた記録が、何が良かったのかの説明つきで載っています。それを手がかりに、何を書けばいいのかを整理しました。
ひとまず、この表だけで足ります
| 行動だけの記録 | 次につながる記録 | |
|---|---|---|
| 書くこと | 誰が何をしたか | 心に残った場面と、そのとき自分が感じ取ったこと |
| 量 | 全員分を書こうとする | 1日1つでいい |
| 書き方 | 1つの欄に続けて書く | 「子どもの姿」と「自分が感じ取ったこと」を分ける |
| 見返すと分かること | その日の出来事 | 子どもの興味の続き方、自分が見ていなかった子 |
| 次の日へ | つながりにくい | 明日、何を置くか・どう関わるかが浮かぶ |
最初は、行動だけの記録になる
指導資料には、ある先生の記録が、書き始めのころの様子から紹介されています。その先生も最初は、何を書けばいいのか分からなかったそうです。当時の記録はこんな具合でした。
「誰と誰がけんかして誰が泣いた」、「女児は今日もままごとや折り紙が多く、絵をかいたり、絵本を読んだりする姿も見られた」、「男児はブロック、積み木、ヒーローごっこなどで元気に遊んでいた」
間違ったことは書いていません。でも、これを読み返しても、明日何をすればいいかは出てきません。一斉保育で身についた「何をしたかを書く」記録は、遊びの保育ではこうなりやすいのだと思います。
1日1つ、心に残った場面を書く
その先生の記録が変わったきっかけは、4歳児の5月、ある子とのやりとりでした。入園から1か月ほど毎朝泣いていて、保育室に入ってもすぐテラスに戻ってしまう子です。その子がテラスの水槽のカメを一人で見ていたので、先生が声をかけ、えさを持ってくると、その子は自分でカメにやろうとしました。その子が「カメさん、食べて、食べて」と小さな声で話しかけるのを、先生は初めて聞きました。
先生はこの場面を記録に書き、ほかの先生と話し合いました。そこから出てきたヒントのひとつが、これです。
Y児にとって、保育室はまだ心が安定できる場所ではなく、テラスの方がほっとする自由感のある空間だったのではないか。
子どもの側から見ると、この子は「保育室に入れない子」ではなかったのかもしれません。テラスが、いちばん落ち着ける場所だった。記録を書いて読み返したことで、先生にはそう見えるようになりました。テラスに小鳥や虫を置いて一緒に世話をすれば、ほかの子と親しくなるきっかけになるかもしれない、というヒントも出ています。記録から、次に置くものが出てきたということです。
この経験のあと、先生は「毎日一つでも心に残る出来事を探したい」と思うようになったと書かれています。全員分を書かなくていい。1日1つ、はっとした場面でいいのです。
「子どもの姿」と「自分が感じ取ったこと」を分けて書く
指導資料には、紙を2つの欄に分けた記録も載っています。左に「幼児の姿」、右に「教師が感じ取ったこと」。4歳児が「探検に行こう」と小学校の裏庭を回った日の記録で、右の欄には、子どもたちのイメージが一人ずつ違っていたこと、それが面白かったこと、明日はどうなるだろうという期待が書かれています。
この記録について、指導資料はこう説明しています。
このようなことが読み取れるのは、表面的な行動だけではなく、教師の感じ取ったことが述べられ、指導を振り返って継続的に記録されているからであり、遊びの捉え方や指導の方法の改善へとつながっていきます。
感じたことを書いていいのか、と迷う必要はありません。 そこが、次の保育を考える材料になります。
同じ先生の記録には、うまくいかなかった日のことも残っています。夏休み明け、先生は1学期の探検の続きが始まることを期待していましたが、探検は始まりませんでした。その日の記録には「昨日の最後の思いが今日の朝に続くと言うのは、私が勝手に思い込んでいたことなのかもしれない」とあります。外れた日の記録も、次に何を置くかを考える材料です。
書いていない子に気づく
記録を続けていると、もうひとつ分かることがあります。指導資料は、エピソードを拾うことで、教師の関心が特定の子に偏っていることや、「自分の視野に入りにくい幼児がいること」にも気づくようになる、と書いています。
1週間分の記録を見返して、一度も名前が出てこない子がいたら、それがその子です。その子が悪いのではなく、自分の目が届いていなかったという手がかりです。次の週は、その子がどこで何をしているかを少し意識して見てみる。記録は、そのために使えます。
週の終わりに、共通する姿を書き出す
5歳児の1月の事例では、コマ回しやドッジボールの場面の記録から、子どもが経験していると思うことを書き出し、1週間分をまとめて「学級の実態」にしています。たとえば「遊びのルールを理解し、ルールのあるおもしろさが分かってきた」。そこから次の週のねらいと内容を決めています。
毎日の1つの場面が、週の終わりには学級の姿になり、次の週の計画になる。活動を先に決めて週案を書くのとは、順番が逆です。
記録は、子どもを採点するものではない
幼稚園教育要領には、子どもの理解に基づいた評価について、こう書かれています。
他の幼児との比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではないことに留意すること。
記録に書くのは「できた・できない」ではなく、その子のよさや、伸びようとしているところです。指導資料も、子どもの内面にある願いや伸びようとする力を、肯定的に見ていくようにしたいと書いています。
明日、やってみること
- 今日の保育で、はっとした場面を1つだけ書く。全員分は書かない
- 紙を2つに分けて、左に「子どもの姿」、右に「自分が感じ取ったこと」を書く
- 書いた場面から、明日置くものを1つ考える(考え方は環境を作りはじめた先生の5つの悩みにも書いています)
- 金曜日に1週間分を見返して、名前が一度も出てこなかった子を探す
- 1週間分から、学級に共通していると思う姿を3つ書き出してみる
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