制度のきほん

保育士の紹介手数料は年収の27% 4分野でいちばん高い数字です

保育士が足りない、という話を数字で見ると、こうなっています。

保育士の有効求人倍率は 2.42倍(令和6年4月)と全職種平均(1.18倍)と比べても高い水準となっている

こども家庭庁の資料です。園が人を探すとき、人材紹介会社を使うことが増えます。そのとき園がいくら払っているのかを、厚生労働省が事業者ごとに公表しています。

保育は27.2%

医療・介護・保育の4分野について、事業者ごとの手数料率と離職率を並べた分布図が出ています。

分野平均手数料率6か月以内の離職率対象の事業所数
保育27.2%13.9%99
介護22.3%13.1%453
医師21.5%5.3%91
看護21.4%10.2%319

率でいえば、保育がいちばん高い分野です。 資料の本文はこう書いています。

医師、看護、保育、介護、一般事務・秘書・受付の職業は20.1%~30.0%レンジの割合が高く、法人・団体管理職員、情報処理・通信技術者、経営・金融・保険の専門的職業、営業の職業は30.1%~40.0%レンジの割合が高くなっている。

この「率」の分母が何なのかは、事業者向けの案内に計算式が書かれています。

平均手数料率の計算は、取扱職種ごとに、

求人者から徴収した手数料の総額(常用就職全件分)

求職者の予定年収の総額(常用就職全件分)

で算出し、小数点第2位で四捨五入してください。

資料では、この2行が上下に並んだ分数の形で書かれています。上が分子で、下が分母。つまり27.2%は、その人に払う予定の年収に対する割合ということになります。

金額でも公表されています

別の資料に、地域ブロック別の平均手数料額が載っています(令和5年度実績、単位は千円)。

職種全国南関東北関東・甲信
医師824935751
保育646725534
看護639657472
介護551547393

保育士1人で全国平均64万6千円、南関東だと72万5千円。 金額では医師が上ですが、保育は看護より高くなっています。

なお、この64万6千円と先ほどの27.2%を割り算してはいけません。 金額のほうは令和5年度実績で、4か月以上の有期雇用も含めた件数ベース。率のほうは令和6年度で、資料自身が「事業所ごとの手数料率実績の平均であり、各事業所の就職件数による重みづけを行ったものでないことに留意」と注記しています。別々のものさしなので、割ると意味のない数字が出ます。

もうひとつ、資料が確かめていることがあります。

手数料率実績の高低で離職率に大きな差は見られなかった。

高い手数料を取る事業者ほど長く続く人を紹介している、という関係は見つかっていません。

法律には11%と書いてあります

職業安定法施行規則の別表には、紹介手数料の最高額がこう定められています。

紹介手数料 一 支払われた賃金額の百分の十一(免税事業者にあつては、百分の十・三)に相当する額

11%です。ただしこれは上限制手数料と呼ばれるもので、手数料の取り方はもうひとつあります。職業安定法32条の3が、2つを並べて認めています。

一 職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合

二 あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表(手数料の種類、額その他手数料に関する事項を定めた表をいう。)に基づき手数料を徴収する場合

2号が届出制手数料です。条文に率の上限がありません。 厚生労働大臣が変更を命じられる場合も、次の2つに限られています。

一 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。

二 手数料の種類、額その他手数料に関する事項が明確に定められていないことにより、当該手数料が著しく不当であると認められるとき。

率が高いこと自体は、変更命令の理由に挙げられていません。 11%という数字は法律に書いてありますが、届け出れば適用されない仕組みになっている、ということです。

お祝い金は禁止されています

ここからは園の話ではなく、読む人自身に関わる部分です。令和3年4月1日から、職業紹介事業者にはこういう禁止事項がかかっています。

「お祝い金」その他これに類する名目で、求職者に社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭などを提供することで求職の申し込みの勧奨を行ってはいけません。

自らの紹介により就職した者(無期雇用契約に限ります。)に対して、就職した日から2年間は、転職の勧奨を行ってはいけません。

同じ資料は、何を防ごうとしているのかも書いています。

職業紹介事業者が、自ら紹介した就職者に対し転職したらお祝い金を提供するなどと持ちかけて転職を勧奨し、繰り返し手数料収入を得ようとする事例があります。 このような行為は、労働市場における需給調整機能を歪め、労働者の雇用の安定を阻害する行為であり、行ってはいけません。

紹介会社を通して就職したあと、しばらくして「そろそろ次を考えませんか」と連絡が来ることがあります。無期雇用で入った人への2年以内のその連絡は、国が禁止しているものです。 断りにくいと感じる必要はありません。

今年度から、全部の事業者の率が見られます

令和7年4月1日施行の省令・指針改正で、次の2つが義務になりました。

職業安定法施行規則の一部改正により、令和 7年4月1日以降、職種毎の平均手数料率等の実績を人材サービス総合サイトに掲載することが職業紹介事業者に義務付けられています。

もうひとつが違約金です。

違約金の額、違約金が発生する条件及び解除方法を含む契約の内容(*)について、分かりやすく明瞭かつ正確に記載した書面又は電子メールその他の適切な方法により、あらかじめ求人者に対し誤解が生じないよう明示してください。

(*)本人が採用辞退後に別ルートで採用などの際に違約金を適用する場合や、利用契約の更新に関するルールも含みます。

注記のほうが具体的です。採用を辞退した人を、後から園が直接採る。そのときに違約金がかかる契約があり得る、ということになります。

どちら側の会社かは、番号で分かります

手数料を受け取るのは、許可を受けた職業紹介事業者です。この許可には番号が振られていて、番号の形から何をしている会社かが読み取れます。

この許可番号の設定については、都道府県を示す番号(2桁)、事業の種類を示す記号、事業主の一連番号(6桁)によって構成され、これらを組み合わせたものをもって許可番号としている。

①有料職業紹介事業の例 「01-ユ-300005」の場合、「01」が都道府県番号(北海道)、「ユ」が業種の種類(有料職業紹介事業)、「300005」が事業主の一連番号となる。

②無料職業紹介事業の例 都道府県番号、事業主の一連番号は有料職業紹介事業と同様であるが、業種の種類を「ム」と表記する。

真ん中の記号が種類です。求人情報を載せる側の会社は別の制度で、こちらは許可ではなく届出になります。番号の形も違っていて、こうなります。

届出受理番号 51-募-XXXXXX

保育の情報を載せているサイトにも、この番号が書かれていることがあります。その会社が紹介で手数料を受け取る側なのか、求人を載せる側なのかは、番号を見れば分かります。 どちらが良いという話ではありません。読んでいる記事の書き手がどこから収入を得ているかを、読む側が確かめられるということです。

誰の落ち度でもありません

有効求人倍率2.42倍という数字が先にあります。人が来ないから紹介会社を使う園があり、条件のいい園に移りたいから紹介会社を使う保育士がいます。どちらも、置かれた場所でできることをしているだけです。

国の側も、園の負担を下げる方向で手を打っています。保育士の家賃補助や処遇改善等加算は、人を集め、辞めさせないための仕組みです。手数料の公開もその一つで、高い事業者と安い事業者を園が選べるようにしたという位置づけになっています。

明日、確かめられること

  1. 紹介会社から「お祝い金」の話が出たら、それは禁止されている取り扱いだと知っておく。 受け取る側が悪いのではなく、提供するほうが指針に反しています
  2. 就職から2年以内の転職の勧奨も禁止(無期雇用の場合)。連絡が来たときに、断る理由を自分の中に持てます
  3. 園の採用に関わる立場なら、人材サービス総合サイトで事業者を手数料率の順に並べ替えられます。 保育士の職種コードは「h保育士」。都道府県を選んでから詳細検索条件で職種と率を指定します
  4. 契約でもめたら、都道府県労働局の「医療・介護・保育 求人者向け特別相談窓口」があります
  5. 保育の情報サイトを読んでいて番号が書かれていたら、真ん中の記号を見る。「ユ」なら紹介で手数料を受け取る側、「募」なら求人を載せる側です

数字を見て「紹介会社を使う園はよくない」と読む必要はありません。64万6千円を払ってでも人を採らないと、明日のクラスが回らない園があるというだけの話です。ただ、その金額が公表されるようになったことと、自分に来る連絡のうちどれが禁止されているかは、知っておいて損がないと思います。

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