制度のきほん

保育士の家賃補助はなくなるのか 上限は下がり、対象は5年までです

「保育士の家賃補助、なくなるらしい」

そんな話を聞いたことがあるかもしれません。正式には「保育士宿舎借り上げ支援事業」、現場では借り上げ社宅と呼ばれている制度です。

結論から書きます。なくなってはいません。 令和9年度の概算要求にも入っています。ただし条件は確実に厳しくなっていて、そこが「なくなる」という話になっているのだと思います。

そもそも、どういう制度か

国の資料はこう説明しています。

保育士確保対策として、保育所等の事業者が保育士用の宿舎を借り上げるための費用の一部を支援することによって、保育士が働きやすい環境を整備する

自分で借りて補助をもらう制度ではありません。 園(事業者)が部屋を借りて、その費用を国と自治体が補助する形です。だから「借り上げ社宅」と呼ばれます。

実施するのは市区町村で、やっていない自治体もあります。

契約は園、補助は保育士ひとりずつ

ここが分かりにくいところなので、先に整理します。部屋を借りるのは園ですが、お金の計算は保育士1人ごとです。

【補助基準額】月額75,000円を上限として、市区町村別に1人当たりの月額(上限)の金額を設定

つまり「この職員は対象か」を1人ずつ判定して、その人数分が園に入る仕組みです。園がまとめて受け取るのではありません。

だから、次に出てくる「採用から5年以内」「1人1回限り」という条件は、園ではなく保育士個人につきます。 部屋の契約相手は園と大家さんでも、補助の単位はあなた自身、ということです。

何が変わってきたのか

概算要求の資料を年度ごとに並べると、はっきりします。

対象期間国の補助上限
令和7年度6年 → 5年(段階的な見直し)月額82,000円
令和8年度5年以内月額75,000円
令和9年度(要求)5年以内月額75,000円

2つ動いています。 対象期間が短くなり、上限額も下がりました。令和7年度の資料には、はっきりこう書かれています。

≪見直し≫対象期間の段階的な見直し(6年→5年)を行う。

「なくなる」ではありませんが、縮小していることは事実です。

いまの条件

令和9年度の要求では、こうなっています。

【対象者】保育士として採用された日から起算して5年以内の常勤の保育士

そして、見落とされやすい条件があります。

本事業を利用し退職した場合は、対象外(1人1回限り)

一度使って辞めると、次の園では原則使えません。 ただし例外も書かれています。

やむを得ない事情による退職と認められる場合に限り、再度対象者とすることができることとし、この場合の対象期間は、5年から、退職した保育所で採用された日から本事業を利用し退職するまでの期間を除く期間とする

残りの期間だけが引き継がれるという意味です。5年まるごと復活するわけではありません。

なお、常勤であることが条件なので、パートや非常勤は対象外です。

東京都は、国と別に持っています

ここが大きいところです。国が上限を75,000円に下げた一方で、東京都の資料には82,000円のまま載っています。

補助基準額 1戸あたり 82,000円/月

負担の内訳も2種類あります。

(国制度)国1/2 都1/4 区市町村1/8 事業者1/8

(都制度)都3/4 区市町村1/8 事業者1/8

都制度では、都が4分の3を出しています。 つまり東京都内では、国の縮小がそのまま届くとは限りません。検索で「保育士 家賃補助 東京」が多いのは、この差があるからだと思います。

対象も都のほうが広く、認可保育所だけでなく認証保育所や小規模保育事業等の常勤保育従事職員も入っています。

来年度、もうひとつ変わりそうなこと

令和9年度の要求に、新しい条件が入りました。補助の割合の話です。

以下の①②を満たす自治体の場合、国:1/3、市区町村:5/12、事業者:1/4とする

①特別区及び財政力指数が1.0を超える自治体

②原則の補助割合で算出した本事業の国庫補助額が1億円を超える自治体

原則は国が2分の1ですが、財政に余裕のある自治体では国の負担を3分の1に下げるという内容です。東京23区が名指しで入っています。

これは保育士の手取りが減るという話ではありません。 国と自治体のどちらが出すかの配分です。ただ、自治体の負担が増えれば、その自治体が制度を続けるかどうかに影響し得ます。

明日、確かめられること

  1. 自分が採用されて何年目か数える。 5年を過ぎると対象から外れます。いつ切れるかは、生活設計に直結します
  2. 自分の自治体がやっているか、上限はいくらか調べる。 国は上限を決めているだけで、実際の額は市区町村ごとに設定されます。「(自治体名) 保育士宿舎借り上げ」で出てきます
  3. 転職を考えているなら、1人1回限りであることを頭に入れる。 使ってから辞めると、次で使えない可能性があります

制度自体は続いていますが、縮む方向に動いているのは確かです。国の資料を見る限り、次に動くとしたら上限額か、自治体の負担割合のあたりになりそうです。

なお、保育士の待遇には処遇改善等加算という別の仕組みもあります。こちらは給与そのものに乗るお金で、家賃補助とは財源も仕組みも別です。

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