音がつらい子に、部屋の側からできること 国の指針には机の脚の例があります
ざわざわした声がつらくて、集団に入れない子がいます。国の幼稚園の資料に書かれている対応は、参加の時間を短くすることとイヤーマフ。けれど、こども家庭庁の障害者差別解消法の対応指針には、保育室の机や椅子の脚に緩衝材を付けるという、部屋の側の例が載っています。2024年4月から、民間の保育所でも合理的配慮は法的義務です。響きを減らす、落ち着ける場所をつくるなど、明日からできることをまとめました。
集団の中のざわざわした声がつらくて、部屋に入れない。耳をふさいで、隅にしゃがみこむ。そういう子を担任したことがある人は多いと思います。
その子への対応として、まず思い浮かぶのはイヤーマフかもしれません。けれど、国の資料をたどると、部屋の側を変える例も載っています。 しかも、2024年4月からは、民間の保育所でも合理的配慮が法律上の義務になりました。
ひとまず、この表だけで足ります
| 子どもの側 | 部屋の側 | |
|---|---|---|
| 国の資料に書かれていること | 参加の時間を短くして少しずつ延ばす、イヤーマフで音を遮る(幼稚園教育要領解説) | 机・椅子の脚に緩衝材を付けて雑音を減らす(こども家庭庁の対応指針) |
| 研究や専門家が挙げていること | — | 部屋の響きを減らす(吸音)、落ち着ける小さな場所をつくる(建築学会・上野 2021) |
| 法律上の位置づけ | 一人ひとりに応じる合理的配慮(2024年4月から法的義務) | 部屋の改善は、前もって行う「環境の整備」(努力義務) |
国の資料に書かれている対応
文部科学省の幼稚園教育要領解説には、困っている場面ごとに配慮の例が書かれています。音については、こうです。
集団の中でざわざわした声などを不快に感じ,集団活動に参加することが難しい場合,集団での活動に慣れるよう,最初から全ての時間に参加させるのではなく,短い時間から始め,徐々に時間を延ばして参加させたり,イヤーマフなどで音を遮断して活動に参加させたりするなどの配慮をする。
診断名ではなく、「ざわざわした声などを不快に感じ」という困っている場面で書かれています。同じ解説は、障害の種類や程度で「一律に指導内容や指導方法が決まるわけではない」とも書いています。
ここに書かれている対応は、どちらも子どもの側です。部屋の響きを変える話は、この部分には出てきません。保育所保育指針解説には、「聴覚過敏」や「クールダウン」という言葉そのものがありません。
対応指針にあるのは、保育室の例
こども家庭庁は、障害者差別解消法にもとづいて、保育所などの事業者向けに「対応指針」を出しています。その中の合理的配慮の例に、こう書かれています。
聴覚過敏のこども等のために保育室の机・椅子の脚に緩衝材を付けて雑音を軽減する、視覚情報の処理が苦手なこども等のために掲示物等の情報量を減らすなど、個別の事案ごとに特性に応じて対応すること。
子どもにイヤーマフを付けるのではなく、保育室の音の出どころを減らす例です。対応指針は、掲載した例は「あくまでも例示」で、すべての事業者が必ず行うものではないとしています。そのうえで、合理的配慮について、こう書いています。
これまで事業者による合理的配慮の提供は努力義務とされていたが、改正法により、法的義務へと改められた。
改正法は2024年4月に施行されました。障害のある子の受け入れと障害者差別解消法の関係は、インクルーシブ保育の記事で書いています。
部屋の響きは、全員の問題
日本建築学会は、2025年11月にこども家庭庁長官あてに出した要望書で、発達障害の傾向のある子は「聴覚の過敏などの非定型な聴覚特性をもつことが多く」、響く部屋の悪い影響が強く表れるとして、吸音の重要性を書いています。
要望書が根拠に挙げている上野佳奈子氏(明治大学)の論文には、特別支援学校の先生の声が載っています。
音に敏感な子が多いのに今はイヤーマフを使うくらいしか手段がない
同じ論文では、別の先生が、音の好き嫌いは子どもによって違うので、音をなくすより「クールダウンスペースがあるとよい」と話しています。論文の中では、吸音材を使って、子ども1人が膝を抱えて入れる小さな空間や、光が入るようにした吸音テントを試作しています。工事の音が続く学校で、この小さな空間を保健室に置いたところ、騒がしい音が苦手な子ども10人ほどが習慣的に使った、という様子も報告されています。ただし、どれだけ楽になったかを数字で測ったものではありません。
部屋の響きを減らすことは、音に敏感な子のためだけの特別な対応ではありません。響く保育室では、先生の言葉も友だちの声も、誰にとっても聞き取りにくくなります。対応指針は、施設の改善のように前もって全員のために行うことを「環境の整備」と呼び、努力義務としています。部屋の響きと吸音の効果については、保育室の音環境の記事に書きました。
子どもから見ると
ざわざわした声がつらくて部屋に入れない子は、わがままを言っているわけではありません。困りごとの原因は、その子の性格や気持ちの持ち方ではなく、部屋の音のほうにあるかもしれません。 耳をふさぐのも、その子なりの対処です。
イヤーマフが助けになる子もいます。一方で、上野氏の論文では、吸音材を入れた箱に頭を入れて使う道具について、イヤホンやイヤーマフに比べて「触覚の過敏が出にくいことが利点」とされています。耳に何かが触れるのがつらい子もいるということです。部屋の側の工夫と組み合わせれば、その子が選べることが増えます。
明日、確かめられること
- 保育室の机や椅子の脚に、緩衝材を付けられるか見てみる。こども家庭庁の対応指針に載っている例です
- 壁の掲示物が多すぎないか見直す。同じ例の後半に書かれています
- 部屋の中に、少し囲われて落ち着ける場所をつくる。閉ざされた場所や暗い場所が苦手な子もいるので、光が入り、いつでも出られるようにする
- その子が、どの場面で、どんな音で困っているかを記録する。保育所保育指針解説は、課題が「生じやすい場面や状況、その理由などを適切に分析する」ことを書いています
- イヤーマフは選択肢の一つとして、使うかどうか、いつ使うかを保護者と相談して決める。合理的配慮は、一人ひとりに応じて決めるものです
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