保育園の倒産・廃業が過去最多 1〜8月で36件、7割が地方
帝国データバンクが9月4日に発表しました。2026年1〜8月に廃業した保育園は30件で前年同期の1.5倍、倒産6件と合わせて36件。同期間としては過去最多です。地方が7割を超えました。挙げられている原因は、国の資料の数字ときれいに重なります。
今日(9月4日)、帝国データバンクが保育園の倒産と廃業の集計を発表しました。同じ期間としては過去最多です。
数字だけ見ると暗い話ですが、挙げられている原因を国の資料と突き合わせると、すでに数字で見えていたことでした。順に整理します。
まず、何件だったのか
2026年1〜8月の集計です。
| 2026年1〜8月 | 前年同期 | |
|---|---|---|
| 休廃業・解散 | 30件 | 20件 |
| 倒産 | 6件 | — |
| 合計 | 36件 | — |
2026年1-8月に発生した「保育園」運営事業者の休廃業・解散は30件発生し、前年同期(20件)から10件・1.5倍となった。また、倒産は6件発生し、同期間では累計で過去最多となる計36件の保育園が消滅した
見出しは「3年連続で最多更新へ」となっています。今年だけの話ではない、ということです。
言葉の意味を先に押さえておきます。 この集計での「倒産」は負債1000万円以上の法的整理を指します。「休廃業・解散」は倒産以外で、手続きを取らずに活動が止まった場合や、登記上の解散を確認した場合です。数として多いのは倒産ではなく廃業のほうで、30件対6件でした。
地方が7割を超えました
もうひとつの数字です。
2026年に発生した保育園の倒産・廃業のうち、首都圏・京阪神・中京以外の「地方」が占める割合が7割超となった。5割を下回っていた10年前の2016年(47.1%)に比べて大幅に上昇
10年で47.1%から7割超まで動いています。
ここは読み違えやすいので補足します。 これは「消滅した36件のうち、地方の園が7割」という内訳の話です。「地方の園の7割が潰れた」ではありません。
挙げられている原因は3つ
発表では「三重苦」という言い方をしています。
- 子どもの減少による園児獲得競争の激化
- 保育士不足
- 運営コストの上昇
このうち上の2つは、こども家庭庁の資料に数字が出ています。この統計の背景は、国の側からも見えていました。
子どもの減少
定員に対して実際に何人通っているかの割合(定員充足率)が、こうなっています。
| 定員充足率(令和7年4月1日) | 5年前 | |
|---|---|---|
| 全国 | 88.4% | — |
| 都市部 | 91.3% | 94.5% |
| 過疎地域 | 74.6% | 83.0% |
過疎地域では4分の1が空いています。 しかも5年間の下がり方が、都市部の3.2ポイントに対して過疎地域は8.4ポイント。差が開いています。
国はこう書いていました。
定員充足率が下がることで、安定的な運営が困難になる施設や、統廃合等が必要となる施設が生じる可能性がある
今回の統計は、その「可能性」が件数として出たもの、という読み方ができます。
保育士不足
こちらも数字が出ています。ハローワークで仕事を探している人1人あたり、求人が何件あるかという指標です。
| 保育士 | 全職種平均 | |
|---|---|---|
| 令和6年4月 | 2.42倍 | 1.18倍 |
| 令和7年10月 | 3.10倍 | 1.20倍 |
保育士1人を3つの園が取り合っている状態で、しかも1年半で悪化しています。
いちばん現場に近い指摘
発表の中に、経営の話としてではなく保育の現場の順番で書かれている部分があります。
保育士の退職や採用難により配置基準を満たせず、自主的な定員枠の縮小や預かり制限を余儀なくされ、機会損失による減収に直面しているケースは少なくない
人が採れない → 定員を減らす → 収入が減る。 この順番です。
園の収入は在籍している子どもの数で決まるので、保育士が足りないこと自体が、直接お金に効きます。 「人手が足りなくてしんどい」と「園の経営が苦しい」は、別々の話ではなく地続きだということになります。
3〜5歳児クラスの話
もうひとつ、園の種類による違いも指摘されています。
従来型の保育園は、制度上「親の就労」が預かりの必須要件である一方、こども園は「就労の有無に関わらない受け入れ」も可能で、最初からこども園を選ぶ保護者も多い。特に3歳児以降はより「教育的なカリキュラム」を求めて、幼稚園やこども園へ転園する動きが加速している
その結果どうなるか。
従来型保育園は単価や配置基準の面で採算が見込めた「3〜5歳児クラス」の定員割れを起こしやすくなっていることも、収益バランスの悪化を招く要因
3〜5歳児は、園の収支を支えている年齢です。0〜2歳児は職員が手厚く必要な分だけ費用がかかるので、3歳以上のクラスがまとまって埋まることで全体が回ります。そこが薄くなると効きます。
なお、これは帝国データバンクの分析であって、国の資料に同じ記述があるわけではありません。
悪い話だけではない、とも書かれています
発表の締めくくりは、こうです。
2026年は、保育士の配置基準や処遇の改善など政策面で「量」重視から「質」重視へのシフトが鮮明で、経営改善やサービスの質確保に意欲的な保育園にとっては強い追い風となる
そのうえで、こう続きます。
保育サービス業界全体で「選ばれる園」と「選ばれない園」の二極化が一段と進む可能性がある
明日、確かめられること
- 自分の園の在籍数を、定員と比べてみる。 全国平均は88.4%です。それより低いか高いかで、置かれている状況がだいぶ違います
- 3〜5歳児クラスが埋まっているか見てみる。 経営に効くのはここだと指摘されています
- 「人が足りない」と「経営が苦しい」を別の話だと思わない。 配置基準を満たせず定員を減らせば、そのまま収入が減ります
数字は厳しいですが、原因はどれも突然出てきたものではありません。 定員充足率も有効求人倍率も、国の資料に前から載っていました。
なお、人口減少地域の小さい園については、今年度から新しい加算ができています。対象はかなり狭いのですが、「園が減るのは仕方ない」で終わらせない仕組みも動いてはいます。
この記事はいかがでしたか?
もう少し詳しく伝えたいことがあればご意見・お問い合わせからどうぞ。 いただいた内容は公開されません。