中核市の82%が保育料を下げています 完全無償化は2市だけです
福山市が中核市62市に調査をかけた結果が公開されています。独自の軽減や無償化をしている市は82.3%。ただし内容は6種類に分かれていて、完全無償化は2市だけでした。いちばん多いのはきょうだいの数え方を変える措置です。あわせて、保育料が無償になっても残る負担も調べられていました。
東京都の第1子無償化と大阪市の0〜2歳無償化を書きました。では、こういう動きは特別なのか。
広島県福山市が中核市62市に調査をかけた結果が公開されています。答えは、特別ではありませんでした。
中核市62市(福山市含む)を調査。58市から回答あり。(回答率93.6%)
独自の軽減や無償化を実施している中核市が82.3%となっている。
実施51市、実施していない7市、未回答4市。保育料を国の基準より下げているほうが多数派です。
ただし「無償化」の中身は6種類あります
同じ資料に内訳が載っています。ここがこの記事の本題です。
| 実施内容 | 市数 |
|---|---|
| 子順年齢制限撤廃 | 31市 |
| 第2子無償化 | 23市 |
| 低所得世帯の第1子保育料軽減 | 5市 |
| 2歳児クラス無償化 | 4市 |
| 完全無償化 | 2市 |
実施内容は、子順年齢制限撤廃が最も多く、次いで第2子無償化、2歳児クラス無償化となっている。完全無償化は2市(実施予定含む)にとどまっている。
その2市は八王子市と呉市(呉市は2026年10月から)です。「無償化」という同じ言葉で呼ばれていても、全部ただになる市は2つしかありません。
いちばん多いのは、きょうだいの数え方を変える措置です
最多の「子順年齢制限撤廃」は、言葉だけでは何のことか分かりません。福山市自身がこれをやっているので、市の説明がそのまま手がかりになります。
第1子の数え方が変わりました
保育施設の在籍有無や子どもの年齢にかかわらず、同一生計の子どものうち、最年長者を第1子とし、下の子を第2子とカウントします。
わざわざ変えたということは、もとの仕組みでは年齢によって数えてもらえない子がいるということです。東京都の資料は、そこをこう書いています。
国の多子軽減の仕組みでは、年収約360万円以上の世帯は、第1子が小学生以上の場合、認可保育所に通う第2子に対する保育料の減免はない。
上の子が小学生になると、下の子が「第1子」に戻って減免が消える。ここを外すのが子順年齢制限撤廃で、31市がやっています。東京都も2019年10月から、補助という形で同じ穴を埋めていました。
つまり全国で起きていることの主流は、保育料をゼロにすることではなく、きょうだいの数え方の穴をふさぐことだと言えます。
福山市の第2子以降無償化は2024年9月からで、市のページには「所得制限・年齢制限を撤廃し」と書かれています。
そもそも、国の基準どおりには取っていません
なぜこれだけ多くの市が下げられるのか。保育料には国が決めた基準額があり、市はそれ以下なら自由に決められるからです。どれくらい下げているかも調査されていました。
本市の徴収割合は、2024年(令和6年)9月から市独自に第2子以降の無償化を実施したことから2024年度(令和6年度)の徴収割合は 61.2%となり、中核市平均59.2%を僅かに上回る程度の水準となった。また、2025年度(令和7年度)は42.5%で、中核市平均56.5%を下回っている。
中核市の平均が56.5%。国が決めた額の6割弱しか集めていない、ということです。残りは市が公費で埋めています。
無償化はこの延長線上にあります。もともと全市が下げていて、ゼロまで下げた市が2つ、というのが実際の位置関係です。
近いところほど、やっています
範囲を狭めると実施率が上がります。
| 調査範囲 | 実施率 |
|---|---|
| 中核市62市 | 82.3% |
| 広島県内14市 | 85.7% |
| 備後圏域7市2町 | 全市町 |
備後圏域7市2町(福山市含む)を調査。
全ての市町で独自の軽減や無償化を実施している。
2市2町は完全無償化を実施。
隣がやると、やらない選択がしにくくなる。そういう広がり方をしているように読めます。
無償化しても、払うものは残ります
もうひとつ、この資料には保育料以外の負担の調査が入っています。福山市内の認可保育施設159施設に、2026年6月30日から7月10日まで聞いたものです。
まず実費徴収(文房具代、制服代、給食代など)。
| クラス | 月額の目安 |
|---|---|
| 0歳 | 0円〜2,750円 |
| 1歳・2歳 | 0円〜9,500円 |
| 3歳 | 4,820円〜16,760円 |
| 4歳 | 4,480円〜13,180円 |
| 5歳 | 4,470円〜13,180円 |
年齢が上がるにつれて、利用者負担が増加する傾向にある。
3歳クラス以上は給食代により増加。 その他、3歳クラスでは被服代(制服や体操服など)により金額が増加する。
これとは別に、上乗せ徴収のある施設が32施設(20.1%)、体操やピアノなどの付加的サービスのある施設が29施設(18.2%)。付加的サービスは体操が月6,000〜8,000円、ピアノ・音楽が5,000〜9,000円といった水準です。
3歳以上は国の制度でとっくに無償ですが、それでも毎月1万円を超える園があります。 無償化のニュースを見た保護者から「じゃあ何もかからないんですね」と言われたときに、ここを知っていると答えが変わります。
認定に届かない働き方だと、外に出ます
この資料でいちばん考えさせられたのが、保育の必要性の認定を受けられない場合の計算です。就労時間が月48時間に満たないと認定が下りません。
(例)保護者の就労時間が44時間(4時間×11日就労)で子は3歳未満児1人、仕事の間は公立施設の一時預かり事業を利用
利用者負担 @1,100円×11日 = 12,100円
月44時間の働き方だと、一時預かりで月12,100円。保育料の無償化はここには効きません。市の集計でも、一時預かりの利用者負担割合は17.0%で、こう書かれています。
保育所等に入所した場合に比べると、保護者負担の割合は⾼くなっている。
1時間あたりで並べると、保育所入所(標準時間)が207.3円、一時預かり(公立)が275.0円。保育料を下げる話が進むほど、認定に届かない働き方の人との差は開きます。
この資料は、負担の配分そのものにも触れています。
可処分所得に対する保育料の割合は、⾼所得世帯に比べて低所得世帯ほど相対的に低いものの、累進度は低い状況にある。
収入に対する負担の重さは、低い世帯のほうがいくらか軽い。ただしその差は小さい、という指摘です。
明日、確かめられること
- 自分の市が「無償化」と言っているとき、6種類のどれなのかを見る。 完全無償化は例外で、多くは第2子や、きょうだいの数え方の話です
- 保護者に「無償になったんですよね」と聞かれたら、給食代や制服代は別だと伝える。 3歳クラスで月1万円を超える園があります
- 3歳以上の実費は年齢が上がるほど増えます。進級のタイミングで家計の話が出ることを見込んでおく
- 短時間の働き方をしている家庭は、無償化の外にいる可能性があります。一時預かりの料金は施設ごとに違うので、聞かれたら自分の園の表を確認する
「無償化」は一語ですが、中身は市ごとに違い、無償になった後も残るものがあります。言葉のほうが先に広まって、中身の説明が追いついていないというのが、この調査を読んだ印象です。
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