制度のきほん

要保護児童と要支援児童の違い 園がやることも変わります

会議の資料やケース記録で、この2つを見かけることがあると思います。要保護児童と要支援児童。

似た言葉ですが、制度の上では別のものです。しかも「どちらに当たるか」で、園がやることが変わります。児童福祉法から整理します。

2つは重なりません

まず要保護児童です。

保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童(以下「要保護児童」という。)

保護者がいないか、その保護者に見させるのが適当でないと判断された子ども。虐待を受けている子どもが典型ですが、それだけではありません。

次に要支援児童です。

保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(第八項に規定する要保護児童に該当するものを除く。以下「要支援児童」という。)

「要保護児童に該当するものを除く」。 ここが決定的です。

つまり2つは入れ子ではなく、排他です。「要支援児童の中でも重い子が要保護児童」ではありません。

中身
要保護児童保護者がいない、または保護者に監護させるのが不適当
要支援児童養育の支援が特に必要。ただし要保護児童は含まない

支援が要る家庭のうち、保護者に任せておけないと判断された段階で要保護児童に移る、という関係になります。

なお、もうひとつ特定妊婦という区分もあります。

出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦(以下「特定妊婦」という。)

この3つをまとめて「要支援児童等」と呼びます。

要保護児童には、通告の義務があります

ここが実務に直結します。

要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない

主語が「発見した者」です。保育士に限らず、誰にでもかかります。そして「しなければならない」。

守秘義務は理由になりません

言いにくさの原因がここにあると思いますが、条文にはっきり書かれています。

刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前項の規定による通告をすることを妨げるものと解釈してはならない

保育士には守秘義務があります。

保育士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない

ですが、通告はこれに反しません。 法律が明示的に打ち消しています。

どこへ通告するのか

条文が挙げているのは、この3つ(と児童委員を介する場合)です。

  • 市町村
  • 都道府県の設置する福祉事務所
  • 児童相談所

ただし市町村の窓口の名前は、自治体によって違います。 「子ども家庭課」「こども家庭センター」など様々で、全国共通の呼び方はありません。園から通告する場合は、まず園の管理者と、自分の自治体の担当課を確認しておくのが実際的です。

全国共通の入口としては、児童相談所につながる189(いちはやく)があります。こども家庭庁の説明はこうです。

児童虐待かも・・・と思ったら、すぐにお電話ください。(略)お住まいの地域の児童相談所につながります。通告・相談は匿名で行うことも可能です。通告・相談をした人やその内容に関する秘密は守られます。

園が入る「要対協」とは

正式には要保護児童対策地域協議会。長いので現場では要対協と呼ばれます。

地方公共団体は、単独で又は共同して、要保護児童(略)の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者(以下「関係機関等」という。)により構成される要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」という。)を置くように努めなければならない

何をする場かというと、

協議会は、要保護児童若しくは要支援児童及びその保護者又は特定妊婦(略)に関する情報その他要保護児童の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るために必要な情報の交換を行うとともに、支援対象児童等に対する支援の内容に関する協議を行うものとする

情報を交換して、支援の中身を決める場です。市町村が設置します。

保育所保育指針の解説には、園の関わり方が書かれています。

要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)に参画し、地域の専門機関や専門職等との関係を深めることが重要である

具体的な支援策を協議する個別ケース検討会議には積極的に参加し、情報の提供及び共有や連携体制の構築に努める

そして、この協議会には守秘義務がかかります。

ここで共有された情報については、守秘義務が課せられる

外に出ない前提だから、踏み込んだ情報を出せるという設計です。

卒園しても、切れません

ここが園にとって大きいところだと思います。

卒園時に小学校へ送るものとして「保育所児童保育要録」があります。指針解説にこう書かれています。

保育所に入所している全ての子どもについて、保育所から就学先となる小学校へ、子どもの育ちを支える資料を「保育所児童保育要録」(以下「保育要録」という。)として送付する

全員分を、就学のときに一度渡すものです。一方、要対協は市町村が持っているネットワークなので、園を出ても続きます。

指針解説には、園の役割がこう書かれています。

保育所がこの協議会の一員となることによって関係機関との密接な連携を図り、子育て家庭への支援を関係機関と共に担っていくことが重要である

気になる家庭がいたとき、引き継ぎ先は小学校だけではない、ということになります。

では、どこにつながるのか

指針解説には、園が連携する相手が具体的に挙げられています。

保育所が特に連携や協働を必要とする地域の関係機関や関係者としては、市町村(保健センター等の母子保健部門・子育て支援部門等)、要保護児童対策地域協議会、児童相談所、福祉事務所(家庭児童相談室)、児童発達支援センター、児童発達支援事業所、民生委員、児童委員(主任児童委員)、教育委員会、小学校、中学校、高等学校、地域子育て支援拠点、地域型保育(家庭的保育、小規模保育、居宅訪問型保育、事業所内保育)、市区町村子ども家庭総合支援拠点、子育て世代包括支援センター、ファミリー・サポート・センター事業(子育て援助活動支援事業)、関連NPO法人等が挙げられる

長い列挙ですが、性格で分けると見通しが立ちます。

具体的には
市町村の窓口保健センター(母子保健)、子育て支援部門、福祉事務所(家庭児童相談室)
専門機関児童相談所、児童発達支援センター・事業所
地域の人民生委員、児童委員(主任児童委員)
教育教育委員会、小学校、中学校、高等学校
子育ての場地域子育て支援拠点、ファミリー・サポート・センター

中学校・高校まで入っているのが目を引きます。園を出たあとも長く続く話として想定されている、ということだと思います。

実際にどこへつなぐかは、要対協で協議して決まります。 園が単独で振り分けるものではありません。

確かめられること

  1. 自分の園が要対協に入っているか聞いてみる。 入っていれば、個別ケース検討会議に誰が出ているかも分かります
  2. 「要保護」と「要支援」を区別して聞く。 会議で名前が挙がる家庭が、どちらの区分なのかで、園に求められることが変わります
  3. 自分の自治体の通告先を調べておく。 窓口の名前は自治体ごとに違います。分からないときの入口として189があります
  4. 通告は守秘義務違反にならないと知っておく。 迷ったときの判断が変わります

日々の保育でこの言葉を使う場面は多くありません。でも、気になる家庭がいるときに、園の外にどんな仕組みがあるかを知っておくことは、無駄にならないと思います。

なお、園の職員による虐待については別の枠組みがあり、こちらの記事に書きました。通告の義務という点では共通していますが、対象も手続きも別のものです。

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