ニュース解説

園児12人の市立幼稚園、廃園案は否決 閉じる理由は数字でそろっていました

千葉県流山市で、市にひとつだけの市立幼稚園を廃園にする条例案が、2026年10月6日の市議会で否決されました。市の教育委員会が廃園の方針を決めたのは2023年10月です。3年かけて議会に出し、止められたことになります。

市が示した閉じる理由は、数字でそろっていました。 では、残すことになった園はこの先どうなるのか。市と議会の会議録から読んでいきます。

ひとまず、この表だけで足ります

数字
定員60人
園児2018年度 47人 → 2026年度 12人
2026年度に入園した4歳児4人
市内の私立幼稚園にいる、配慮が必要な子2024年4月 138人 → 2026年4月 161人
園の運営費(2023年度予算)5,464万円(園児1人あたり248万円)

運営費は2023年10月の教育委員会、それ以外は2026年6月の市議会教育福祉委員会での市の説明です。4歳児の人数は、同じ委員会での議員の発言と報道によります。

何が起きたのか

廃園の対象は「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園」です。市の幼児教育支援センターに付いた園で、2012年に開きました。センターは市内の園の先生向けの研修や就園相談を担っていて、園を閉じても残す計画です。

2023年、市の諮問を受けた協議会は、存続と廃園の両論を併記した答申を出しました。存続するならどんな園にするか、という案はこうです。

公教育を堅持し、未来への先行投資として附属幼稚園を存続するのであれば、例えば、公立だからこそできる研修の場として、インクルーシブ教育の先鞭をつける施設として、幼児教育支援センターと連携した流山市独自の教育ができる機関となるよう取り組むべきである

教育委員会は、答申から2週間後の会議で廃園の方針を4対2で決めました。

2026年6月、市長が条例案を出します。2028年3月末で廃園にする内容でした。市議会の教育福祉委員会では賛成2・反対2の同数になり、委員長が反対に回って否決。本会議では議案の撤回を求める動議が可決されましたが、市長は撤回せず、結論は秋に持ち越されました。そして10月6日の本会議で否決されています(東京新聞によると反対16、賛成8)。

市が示した、閉じる理由

6月の委員会で、市は理由を3つ挙げています。

1つ目は、幼稚園を選ぶ家庭が減っていること。共働きの増加や2019年からの幼児教育・保育の無償化で、保育所の需要が高まりました。

2つ目は、子どもの集団の大きさです。

さらに、文部科学省が社団法人全国幼児教育研究協会へ委託した調査研究においても、幼稚園における適切な学級規模については集団の形成過程を大切にし、協同性の育ちを培うためには、1学級に3歳児でも20人前後、4、5歳児は21人以上30人ほどの集団が適切だと考察されております。

子どもの側から見ると、2026年度に入った4歳児は4人です。同じ年の子が4人という環境で、園の生活を送っています。市はこれを「園児への教育の観点からも懸念が生じている」と説明しました。少人数ならではの良さがあることも、市は否定していません。そのうえで、集団の中で育つものは少人数では育ちにくい、という立場です。

3つ目は、配慮が必要な子の行き先です。公立幼稚園を残す理由として、いちばん強いのがここです。2019年の国会で、当時の文部科学大臣もこう答えています。

例えば障害児など特別な支援が必要な子供も含めて、当該自治体における教育ニーズを適切に満たすことができるように、必要に応じて公立幼稚園を含めた教育や保育の提供体制を整えていただくことが私は重要だというふうに考えます。

流山市は2025年度から、配慮が必要な子を受け入れた私立幼稚園に補助金を出しています。市内の私立幼稚園にいる配慮が必要な子は、138人、152人、161人と毎年増えました。在籍する子に占める割合は6.9%から10.7%になっています。残す理由のいちばん強いところに、市は数字で答えていました。

反対する側の、いちばん強い言い分

否決した議員の言い分にも、筋の通ったものがあります。6月の委員会の反対討論から引きます。

行政が公共施設の廃止を提案するのであれば、その前提として魅力向上策を十分に試みたのか、また何年連続で何人以下なら廃園を検討するといった明確な基準を市民や議会に提示した上で、合意形成を図る必要があったと考えます。

「何人を下回ったら閉じるのか」という基準は、たしかに市から先に示されていませんでした。

魅力を上げる手、たとえば3年保育や給食を試さなかった点について、市は「私立幼稚園の中でも定員割れしている現状があり、幼稚園ニーズ自体の増加が見込めない」と答えています。3年保育と給食を始めると、増築や調理場も含めて約7億1,000万円かかる、という市の見込みも委員会で出ています。

私立に断られた子がいる、という指摘もありました。議員は、断られて保育所を探すことにした母親がいると述べています。教育長は、補助金を始めた2025年度からは「受入れを断った事例はないです」と答えました。ただ学校教育部長は、就園相談を通らずに断られた家庭は「我々の就園相談のところに、恐らく入ってこない事案」だとも述べています。市の数字に映らない家庭がいるかもしれない、という点は残ります。

公立幼稚園は、1園ずつ二択になる

公立の保育所は、公営が減ったぶん私営が増えてきました。2004年に12,013か所あった公営の保育所は、2024年には6,049か所です(幼保連携型認定こども園に移ったものは入りません)。

道を開いたのは、2003年にできた指定管理者制度です。市が建物を持ったまま、運営を民間などに任せられます。当時の厚生労働省の通知は、保育所もこの制度を使えるとしています。

ところが幼稚園は、学校教育法でいう「学校」です。学校は設置した者が自分で管理すると決まっていて(第5条)、制度ができたときの総務省の通知にはこうあります。

道路法、河川法、学校教育法等個別の法律において公の施設の管理主体が限定される場合には、指定管理者制度を採ることができないものであること。

国家戦略特区の「公設民営学校」という例外はありますが、対象は都道府県や指定都市が設置する中学校・高校などで、幼稚園は入っていません。

つまり公立幼稚園には、「公立のまま、運営を任せる」という中間の道がほとんどありません。だから1園ごとに「廃園か存続か」の二択が議会にかかります。

全国で見ると、公立幼稚園は2004年の5,649園から、2026年には2,169園まで減っています。園児は356,770人から66,976人へ、8割以上の減少です。1園あたりの園児は、約63人から約31人になりました。流山市のような判断は、これからもあちこちで議会にかかります。

残すと決めたなら、次は残してどうするか

市は、園児の数、学級の大きさ、私立での受け入れを数字で示しました。6月の委員会の反対討論は、多くが進め方への批判でした。基準を先に示すべきだったという批判は、そのとおりだと思います。ただ、それは「進め方が悪い」という話です。「この園を残すべきだ」という理由にはなっていません。

否決されたので、園は来年度も園児を募集します(市は7月の委員会で、否決なら例年どおり募集すると答えています)。入園を考える家庭にとって気になるのは、何人になれば園として続けられるのか、そこまでどう園児を戻すのか、何人を下回ったらまた見直すのかです。3年保育を始めるなら、その費用と、近くの私立への影響も関わってきます。基準が無かったことが否決の理由のひとつなら、その基準は市と議会が一緒につくることになります。

これは判断する側に向けた話です。そこに通っている子や家族、働いている先生の話ではありません。

なお、9月の委員会と10月の本会議の会議録は、この記事を書いた時点では公開されていませんでした。議会の判断の理由として原文で確かめられたのは、6月の委員会の討論までです。

明日、確かめられること

  1. 自分の自治体に公立幼稚園があるか調べる。あるなら、「あり方」の方針に、存続や廃園を見直す基準(何人を下回ったら、など)が書かれているかを見る
  2. 配慮が必要な子が、近くの私立幼稚園や保育所に何人受け入れられているかが公表されているか確かめる。流山市は議会で、私立幼稚園での人数を年ごとに示しました
  3. 私立幼稚園や認定こども園で働いているなら、配慮が必要な子を受け入れたときに園が受けられる補助や加算を確かめておく
  4. 公立幼稚園の存廃が議会にかかっていたら、会議録で「何を根拠に」判断したのかを読む

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