11時間保育は法律ではありません 原則は8時間、11時間は国の想定です
「保育園の通常保育は11時間と法律で決まっている」「国が保証しているのは8時間まで」。よく聞く話ですが、省令に書かれているのは「八時間を原則」。11時間は、子どもごとの保育時間の上限と、公定価格が想定する開所時間です。11時間開所に何人分の保育士が積まれているかまで、原典から整理しました。
「認可園の通常保育時間は11時間で、法律で決まっている。でも国がお金を出しているのは8時間分だけ」。そんな話を聞いたことがあるかもしれません。
調べると、どちらも原典の書き方とは違っていました。保育時間について省令に書かれているのは「八時間を原則」です。 11時間という数字は、別の2か所に出てきます。
ひとまず、この表だけで足ります
| 数字 | 何の時間か | どこに書いてあるか |
|---|---|---|
| 8時間 | 保育所の保育時間の原則。実際の時間は園長が決める | 設備運営基準(厚生省令)第34条 |
| 8時間 | 保育短時間認定の子が使える上限(1日あたり) | 子ども・子育て支援法施行規則(内閣府令)第4条 |
| 11時間 | 保育標準時間認定の子が使える上限(1日あたり) | 同上 |
| 11時間 | 公定価格が想定している開所時間 | 公定価格に関するFAQ |
どれも法律そのものではありません。省令・内閣府令は、法律にもとづいて国が定めるルールで、FAQは国の解釈を示した資料です。
省令は「八時間を原則」
保育所の運営のルールは「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」という厚生省令に書かれています。保育時間は第34条です。
保育所における保育時間は、一日につき八時間を原則とし、その地方における乳幼児の保護者の労働時間その他家庭の状況等を考慮して、保育所の長がこれを定める。
この基準の中に「十一時間」という言葉は出てきません。
ただし、8時間で閉めることを前提にしているわけでもありません。同じ省令の附則には、8時間を超えて開く保育所のための特例が置かれています。
当分の間、一日につき八時間を超えて開所する保育所において、開所時間を通じて必要となる保育士の総数が、当該保育所に係る利用定員の総数に応じて置かなければならない保育士の数を超えるときは、(略)都道府県知事(略)が保育士と同等の知識及び経験を有すると認める者を、(略)保育士とみなすことができる。
長く開くと、シフトを組むのに保育士が多く要る。その足りない分を、一定の条件で保育士以外の人で埋めてよい、という特例です。
11時間は「子どもごとの上限」
11時間が出てくるのは、まず子ども・子育て支援法施行規則の第4条です。保育園を使うときの「保育の必要量」の認定について、こう書かれています。
保育必要量の認定は、保育の利用について、一月当たり平均二百七十五時間まで(一日当たり十一時間までに限る。)又は平均二百時間まで(一日当たり八時間までに限る。)の区分に分けて行うものとする。
前者が「保育標準時間」、後者が「保育短時間」です。保護者の就労時間などで、子どもごとにどちらかに認定されます。
つまり11時間は、園が開いていなければならない時間ではなく、標準時間の子が使える時間の上限です。
もう1つの11時間は、公定価格の「想定」
園に入るお金(公定価格)の側にも11時間が出てきます。国の公定価格に関するFAQです。
公定価格上、2・3号認定子どもを受け入れる施設については、土曜日も含め、基本的に11時間開所を想定しており、土曜日の利用ニーズがあるにも関わらず、半日開所する場合も含めて開所時間が11時間に満たない場合は、基本的に減算の対象となります。
園に払うお金は「11時間開いている」前提で計算している、ということです。なお同じ回答の続きには、地域のニーズに合わせて土曜日に必要な時間(例えば午前中のみ)だけ開く場合は減算の対象にならない、とも書かれています。
国は「8時間分」しか出していないのか
ここが、いちばん引っかかるところだと思います。
公定価格の中心は「基本分単価」という、子ども1人あたりの月額です。そこにどんな職員の人件費が含まれているかは、国の留意事項通知に書かれています。保育士の部分はこうです。
基本分単価における必要保育士数は以下のⅰとⅱを合計した数であること。また、これとは別に非常勤の保育士が配置されていること。
ⅰは年齢ごとの配置基準どおりの人数です。ここに書かれている比率は「4歳以上児30人につき1人、3歳児20人につき1人」のままで、25対1や15対1への改善分は、別の加算で上乗せされる作りになっています(配置基準の記事で扱いました)。ⅱには、こう並んでいます。
a 利用定員90人以下の施設については1人
b 保育標準時間認定を受けた子どもが利用する施設については1人(注1)
標準時間(11時間)の子がいる園は、配置基準とは別に、保育士がもう1人分積まれています。 さらに別に、非常勤の保育士も含まれています。
(注1)には「施設全体の利用定員に占める保育標準時間認定を受けた子どもの人数の割合が低い場合は非常勤の保育士としても差し支えない」とあります。
この「もう1人」は、計算のうえだけの話でもありません。FAQには、基本分単価に含まれる保育標準時間認定に係る保育士(常勤)等も「年齢別配置基準とは別途配置する必要があり、これを満たさない場合は、指導の対象となります」と書かれています。
単価の差は「半分」ではない
標準時間と短時間で、基本分単価がどれだけ違うかも見ておきます。告示の表から、地域区分20/100の地域の額を抜き出しました(月額・子ども1人あたり)。
| 定員 | 年齢 | 標準時間 | 短時間 | 短時間は標準時間の |
|---|---|---|---|---|
| 20人 | 4歳以上児 | 150,500円 | 118,510円 | 78.7% |
| 20人 | 乳児 | 332,430円 | 300,440円 | 90.4% |
| 171人以上 | 4歳以上児 | 37,340円 | 33,790円 | 90.5% |
| 171人以上 | 乳児 | 219,270円 | 215,720円 | 98.4% |
短時間の単価は、標準時間の8割弱から9割8分です。「8時間を超える3時間分は半分しか出ていない」という形の記述は、告示・留意事項通知・FAQのどこにも見つかりませんでした。
表を見ると、同じ定員なら年齢に関係なく差額が同じで(定員20人なら31,990円、171人以上なら3,550円)、定員が小さいほど差額が大きくなっています。
短時間の子が8時間を超えたら
短時間認定の子が8時間を超えて園にいる場合、その分は公定価格ではなく、市町村の「延長保育事業」で扱われます。延長保育事業実施要綱には、短時間認定の子について、
開所時間内で、各施設等が設定した短時間認定児の保育を行う時間を超えて1時間以上の延長保育を実施しており
という区分が置かれています。開所時間の中であっても、短時間の子にとっては「延長」になる、という作りです。
足りているかどうかは、別の話です
ここまでで分かるのは、11時間開所に対して国が何を積んでいるか、です。それで実際にシフトが回るかどうかは、原典には書かれていません。早番・遅番・休憩・研修を回すと足りない、という現場の実感は、この記事の数字で打ち消せるものではありません。
そして、子どもの側から見れば、11時間は保育標準時間の子が園で過ごしうる時間の上限です。早朝も夕方も、子どもにとっては同じ一日の保育の時間です。人が手薄になりがちな時間帯に誰がいるのかは、子どもが毎日過ごす環境そのものの話でもあります。
ただ「国は8時間分しか出していない」と思い込んでいると、話がそこで止まります。 実際には、標準時間の子のための保育士が1人分、別に積まれています。その1人が園でどう配置されているかは、確かめられることです。
明日、確かめられること
- 園の保育時間を誰が決めているかを知る。 省令では「保育所の長がこれを定める」とされています。11時間は法律で決まった時間ではありません
- 保護者に「8時間を超えると園の負担になる」と説明しない。 標準時間の子の単価は11時間開所を前提に計算されていて、そうした記述は原典にありません
- 自分の園で、配置基準とは別の「標準時間認定に係る保育士」が誰なのかを聞いてみる。 FAQでは、別途配置しないと指導の対象とされています
- 短時間認定の子のお迎えが8時間を超えるときの扱いを確認する。 公定価格ではなく、延長保育事業の側の話になります
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