制度のきほん

第三者評価を受けた保育所は9% 国は「保育を見る」評価を試し始めました

「第三者評価を受けています」と書いてある園を見ると、外の目でしっかり確かめられた園なんだな、と感じます。

ところが、保育所でこの評価を受けているのは、全国で1割に届きません。そして国の調査研究自身が、第三者評価では保育の中身の改善につながりにくいと書いています。国は令和8年度から、評価のやり方を見直すためのモデル事業を始めました。

ひとまず、この表だけで足ります

中身
法律上の位置づけ自己評価は義務、第三者評価は努力義務
受けている保育所全国で9.00%(令和6年度、2,094か所)
受けない理由(未受審の園)準備作業が大変 54.5%、努力義務だから 44.8%、費用が高い 43.0%
課題子どもへの関わりなど保育実践の改善の視点を得るには「十分とは言えない」
国の見直し令和8年度から、保育を観察する物差しを使ったモデル事業(国から自治体への委託、4件程度)
結果の調べ方WAM NET。ただし東京都などは都道府県のサイト

第三者評価は「努力義務」

保育所のルールを定めた厚生省令(設備運営基準)の第36条の2に、評価のことが書かれています。自分たちで行う評価は「図らなければならない」と義務ですが、外部の評価はこうです。

保育所は、定期的に外部の者による評価を受けて、それらの結果を公表し、常にその改善を図るよう努めなければならない。

「努めなければならない」なので、受けなくても違反ではありません。同じ省令でも、乳児院などは第三者評価が義務になっています。

全国社会福祉協議会(全社協)の集計では、令和6年度に第三者評価を受けた保育所は2,094か所、全国の保育所の9.00%でした。幼保連携型認定こども園は1.23%、小規模保育などの地域型保育は0.39%です。全社協の2022年の報告書は、受審した保育所の「そのうち約2/3は東京都」と書いています。地域によって大きな差があります。

受けていないことは、質が低いことの証拠ではありません。 9割の園が受けていない、というだけのことです。

受けない理由、受けても変わらない理由

こども家庭庁の令和4年度の調査研究で、第三者評価を受けていない保育所に、受審が進まない理由として感じていることを聞いています。「まあまあそう思う」と答えた割合は、受審の準備作業が大変 54.5%、努力義務で必須ではない 44.8%、評価費用が高い 43.0%、「abcと評価されることが保育になじまない」34.0%でした。

同じ調査で、第三者評価に期待することとしていちばん多かったのは「具体的な改善提案をしてほしい」(81.0%)でした。

その調査研究の報告書は、こう書いています。

子どもへの関わりなどの保育実践の評価については、網羅的な指導監査や第三者評価では具体的な改善の視点を得る面で十分とは言えない

書類や運営体制は確かめられても、保育士が子どもにどう関わっているかまでは、いまの評価では踏み込みにくい、ということです。

国が試し始めた「保育を見る」物差し

こども家庭庁は令和8年度、「保育所等における第三者評価改善モデル事業」を始めました。公募の文書に、目的がこう書かれています。

現状では、第三者評価が保育の改善に十分踏み込めていないとの指摘もある。

国が自治体に委託する事業です。手を挙げた都道府県や市町村のうち4件程度が選ばれ、国から1件500万円を上限に委託費が出ます。最長3年続けることが想定されています。

委託費の使い道として要領に挙がっているのは、評価する人への謝金や旅費、会議費などです。自治体が、評価の仕組みを作り、評価する人を育て、地域の園で試しに評価してみるための費用です。園に補助金が出る事業ではありません。 試しに評価を受ける園の費用がどう扱われるかは、要領には書かれていませんでした。

使う物差しの一つが、文部科学省の研究所である国立教育政策研究所が開発した「幼児教育における保育実践の質評価スケール案」です。報告書によると、3〜5歳の1つのクラスを対象に、研修を受けた評定者が複数で、約3〜4時間保育を観察し、保育者にインタビューして評定します。書類ではなく、保育そのものを見る物差しです。

9つの項目と112の指標でできていて、評定は「要改善(1)」から「非常に良い(7)」までの7段階です。たとえば「健康と安全」の項目には、こういう指標があります。

室内や戸外で、子供の安全を守るための見守りが、基本的に行われている

これが7段階のうち「まあまあ良い(3)」の段階の指標で、「非常に良い(7)」の段階にはこうあります。

子供が自ら危ないことに気付き、自分で考えながら安全に遊べるように、保育者は援助したり環境を整えたりしている

大人が見守っているかだけでなく、子どもが自分で危険に気づけるように育っているかまで見ている、ということです。子どもの側から見た「いい保育」が、具体的な言葉になっています。

報告書は、このスケールを「評定自体を目的とするより」、研修などで保育を振り返る観点として使うことを想定している、とも書いています。モデル事業の公募の文書にも、こんな注意があります。

園を並べて比較し、相対的な序列付けや優劣の判断につながるような評価にならないよう十分留意すること

採択された自治体は、こども家庭庁の公表資料ではまだ確認できていません。

自分の園の結果は、調べられる

受審した園の評価結果は、公表されています。多くの都道府県は、独立行政法人福祉医療機構の「WAM NET」で検索できます。

ただし、全社協のまとめでは、東京都・埼玉県・群馬県・富山県・石川県はWAM NETで公開していません。東京都の場合は「とうきょう福祉ナビゲーション」で探せます。都道府県によって調べる先が違うので、見つからなければ都道府県の福祉の担当ページを当たってください。

自己評価は、どの園でも義務

第三者評価を受けていない園でも、自己評価は義務です。国の「保育所における自己評価ガイドライン(2020年改訂版)」は、保育の内容の評価は保育士一人ひとりと園の自己評価が基本で、第三者評価はそれに「より多様な視点を取り入れる」方法の一つだ、という位置づけで書いています。

外の評価がない9割の園でも、振り返りの仕組みそのものは、園の中にあるはずです。

明日、確かめられること

  1. 自分の園や、転職を考えている園が第三者評価を受けているか、WAM NET や都道府県のサイトで調べる。受けていれば、結果の「改善が求められる点」まで読む
  2. 受けていない場合は、園の自己評価がどう行われているか聞く。自己評価は義務です
  3. 保育を振り返るとき、「子どもが自分で危ないことに気づけるように、環境や関わりを工夫しているか」という物差しを一つ持ってみる

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