現場の声・比較

通信制高校を選ぶときに見る数字 国の実態調査から拾いました

保育の話ではありません。ただ、このサイトで扱っている一次情報の読み方が、そのまま使える資料が出たので書きます。

文部科学省が8月31日に、令和7年度の通信制高等学校の実態調査を公表しました。全国323校に聞いたもので、90ページあります。同じ日に、通信制高校の質をどう担保するかを議論する検討会議も始まりました。

読んでいて、学校を比べるときに使える数字がかなり載っていると思ったので、そこを拾います。

入学者の57.0%が、中学3年生のときに不登校でした

まず全体像から。令和7年度の入学者は77,998人。そのうち中学3年生のときに不登校だった生徒は44,461人でした。

設置者入学者数うち中3で不登校割合
公立9,9695,33353.5%
私立61,20034,66356.6%
株立6,8294,46565.4%
全体77,99844,46157.0%

半分以上が、中学で学校に行けていなかった生徒です。つまり通信制高校は、そこを前提に選ばれている場所ということになります。

だとすると、選ぶときに見たいのは学習面だけではないはずです。

相談できる人がいるかは、学校によってまるで違います

調査には、スクールカウンセラー(SC)とスクールソーシャルワーカー(SSW)の配置状況が載っています。

スクールカウンセラーに相談できる体制

設置者整えている割合
公立80 / 8198.8%
私立181 / 22779.7%
株立12 / 1580.0%

スクールソーシャルワーカーに相談できる体制

設置者整えている割合
公立74 / 8191.4%
私立44 / 22719.4%
株立6 / 1540.0%

私立は5校に1校しかソーシャルワーカーがいません。 カウンセラーは心理面、ソーシャルワーカーは家庭や制度との橋渡しが役割なので、必要になる場面が違います。

実際に支援を受けた生徒は、SCが延べ21,303人、SSWが延べ5,316人でした。

まず、通い方には幅があります

通信制高校といっても、通う頻度でコースが分かれています。生徒数はこうでした。

コース生徒数
週5通学37,505
週3通学20,013
週1通学36,929
集中スクーリング前提86,961
その他99,722
合計300,406

いちばん多いのが「集中スクーリングを前提としたコース」で86,961人です。普段は家で学習して、年に何日かまとめて通う形になります。

これができるのは、制度に面接指導の時間を減らせる規定があるからです。ガイドラインにこう書かれています。

面接指導等時間数のうち、10分の6以内の時間数を免除することができること

条件は「報告課題の作成等により、その成果が満足できると認められる場合」で、病気などの特別な事情は要りません。 普通に選べる設計です。

さらに事情がある場合は、上限が上がります。

生徒の実態等を考慮して特に必要がある場合は(略)免除する時間数は合わせて10分の8を超えることができない

この「特に必要がある場合」の例として、入院や自宅療養、いじめや人間関係の事情が挙げられています。

オンラインの扱いも書かれていました。

多様なメディアの利用形態は、オンデマンド型のみならず、例えば少人数かつ同時双方向型で行うなど、個別最適で協働的な学びを実現する形での利用も考えられること

オンラインで双方向にやりとりする形も、制度の中にあります。

面接指導は、制度上は対面です

ここで用語を押さえておきます。文部科学省の資料には、通信教育の4つの方法が並べて定義されています。

方法定義
添削指導レポートを教師が添削し、生徒に返送
面接指導(スクーリング)教師から生徒への対面指導、生徒同士の関わり合い等を通じて(略)個人差に応ずる指導を実施
多様なメディアを利用した指導ラジオ・テレビ放送やインターネット等を利用して学習し、報告課題の作成等を通じて指導を実施
試験添削指導・面接指導等を踏まえ、学習状況等を評価

面接指導は対面、オンラインは別枠という整理です。オンラインは面接指導そのものではなく、その時間を6割まで(事情があれば8割まで)減らせる仕組みという位置づけになります。

つまりどれだけ免除を使っても、対面の面接指導は残る建て付けです。

1日も来ていない生徒が8,097人

そのうえで、調査にはこういう項目がありました。

令和7年3月31日時点の在籍生徒数のうち、令和6年度間に添削課題の提出はあるが、面接指導に1日も来ていない生徒数

8,097人。在籍306,711人の2.6%です。コース別では集中スクーリング前提のコースが3,923人(48.5%)と最も多く、週1通学が1,556人(19.2%)でした。

年度途中の入学など、説明のつく場合もあります。ただ制度の建て付けからすると、対面を1日も経ずに1年が過ぎている生徒がこれだけいるという数字ではあります。

理由も学校に聞いていて、多い順に「心身に関すること(感覚の敏感さ、体調不良、不安・抑うつ、朝起きられない、夜眠れない、入院・療養 等)」「学習に関すること」「家庭に関すること」が並んでいました。

なぜ今、国が調べているのか

この調査と検討会議には、40年ぶんの前史があります。同じ資料に制度の変遷が載っていました。

年何があったか
昭和36年広域通信制高校の制度化(文部大臣の承認制)
昭和45年承認制を一部の政令事項に限定
昭和58年広域通信制課程の設置廃止等について「承認制」から「届出制」へ
平成15年構造改革特区法の改正による株式会社立学校の制度化
平成27年ウィッツ青山学園高等学校による高等学校等就学支援金の不正受給事案の発覚
平成28年質の確保・向上のためのガイドライン策定
平成29年広域通信制高校に対する国と所轄庁による共同での点検調査の開始
令和3年通信教育実施計画の策定・明示、サテライト施設ごとの定員の設定、学校の基本情報の公表を義務化
令和4年生徒数80人当たり教諭等が1名以上と規定
令和5年私立高校の認可基準(標準例)の策定
令和8年定通振興法改正(令和8年7月23日公布、令和9年1月23日施行)

流れがはっきりしています。規制を緩めて参入しやすくした(昭和58年の届出制化、平成15年の株式会社立)ところに、平成27年の不正受給事案が起きた。それ以降は、ガイドライン、点検調査、定員設定、情報公表の義務化、教員数の下限と、規制を積み増す方向に戻ってきています。

今回の法改正と検討会議も、その延長線上にあります。8,097人という数字は、その流れの中で国が数えているものということになります。

定員の半分も埋まっていない学校が131校

経営の安定を見る材料もあります。

収容定員の充足率は、「在籍生徒数÷収容定員数×100」とする

50%以上50%未満
公立4819
私立121106
株立96
全体178131

309校中131校が、定員の半分も埋まっていません。 私立に限ると227校中106校です。

ただし資料はこう注記しています。

充足率が50%を満たせばよいというものではない

多ければいいという話でもない、という意味です。少人数を丁寧に見ている学校もあれば、定員を大きく取りすぎている学校もあります。数字だけで判断はできません。

「サポート校」という言葉について

通信制高校の話でよく出てくる「サポート校」ですが、この言葉はガイドラインに一度も出てきません。 実態調査でも1回だけです。制度の言葉は別にあります。

制度上の呼び名中身
面接指導等実施施設スクーリングを行う場所。分校か協力校が基本
学習等支援施設学習の支援などを行う場所。面接指導はしない
(通信教育連携協力施設)上の2つをまとめた呼び方

ガイドラインには、こう書かれています。

面接指導等実施施設は、実施校の分校又は協力校であることを基本とすること

特別の事情があれば、大学や専修学校などを使うこともできます。

いわゆるサポート校は、もともと学校法人ではない民間事業者が、通信制高校の生徒を別料金で支援する形態を指す通称でした。いまは、こうした施設も学則に書くことになっています。

その名称、位置及び定員を含めて通信教育連携協力施設に関する事項を学則に記載すること

つまり自分が通う場所がどの区分なのかは、学校の学則を見れば確かめられます。 キャンパスを学校自身が運営している場合もあれば、外部の事業者の場合もあり、そこは学校ごとに違います。

全国の連携協力施設は4,341ありますが、数字を見ると幅があります。

  • 在籍生徒が0人の施設が1,685。うち1,061は在籍希望者がいない、募集していないなどの理由
  • 収容定員を定めていない施設が121。資料には「収容定員数を定めていない施設については学校に改善指導済み」と注記されています

学校が自分をどう説明しているか

最後に、情報公開の状況です。

自己評価

実施公表
公立98.7%92.1%
私立80.2%64.8%
全体86.1%74.7%

私立は3校に1校が、自己評価を公表していません。 実施率と公表率の差が大きいので、やってはいるが外に出していない学校がそれなりにあることになります。

高等学校通信教育規程で公表が求められている事項についても、公表していない学校が51校、一部公表が63校ありました。

学校を見に行くときに聞けること

資料から、比較の材料になりそうなものを挙げます。

  1. スクールカウンセラーとソーシャルワーカーが、それぞれいるか。 カウンセラーは8割の学校にいますが、ソーシャルワーカーは私立で19.4%です。両方いるかを分けて聞く価値があります
  2. 自分が通うのは本校か、連携協力施設か。 施設側の在籍者数や定員を聞いてみる。定員を定めていない施設が121ありました
  3. 面接指導に来られなくなったとき、どうしているか。 8,097人が一度も来ていません。そのとき学校がどう動くかは、学校ごとに違うはずです
  4. 自己評価を公表しているか。 公表していない学校が全体の4分の1、私立では3分の1です。出しているなら読める材料が増えます
  5. 集中スクーリングの形をよく確かめる。 一度も来ていない生徒の半分近くが、このコースに集まっています

調査結果はPDFで全部公開されています。90ページありますが、目次から必要なところだけ見れば足ります。学校のパンフレットには載っていない数字が並んでいるので、比べるときの下敷きになると思います。

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