スクリーンタイムを決めているのは大人です 小5の6割が国の目安を超えています
「動画やゲームをさせないと、話題についていけなくてかわいそう」。そんな声がありますが、それを裏づける資料は見当たりません。一方で、国は小学生のスクリーンタイム(画面を見ている時間)を2時間以下と示していて、小学5年生の6割がそれを超えています。画面に向かう時間は、体を動かす時間や眠る時間を削っています。その配分を決められるのは、子どもではなく、機器を渡す大人です。
「動画やゲームをさせないと、クラスの話題についていけなくてかわいそう」。SNSで、そんな声を見かけることがあります。
この「かわいそう」を裏づける資料は、見当たりませんでした。 一方で、スクリーンタイム(テレビやスマホ、タブレット、ゲーム機などの画面を見ている時間)には国が示している目安があり、子どもたちの多くがそれを超えています。
保育士として保護者から相談されたとき、そして自分が親として子どもに機器を渡すとき、知っておきたい数字をまとめました。
ひとまず、この表だけで足ります
| 年齢 | 目安 | 出しているところ | 実態 |
|---|---|---|---|
| 1歳以下 | 見せることは推奨しない | WHO(2019) | 1歳の31.9%がインターネットを利用している |
| 2〜4歳 | 1日1時間以内。少ないほどよい | WHO(2019) | 利用している2歳の平日平均は97.5分 |
| 小・中・高校生 | 1日2時間以下 | 厚生労働省(2023) | 小学5年生の6割前後が、学習以外で平日2時間以上 |
実態の数字は、上2段がこども家庭庁の調査(保護者回答、インターネットでの利用だけで地上波のテレビは含まない。平均は利用している子だけのもの)、下段がスポーツ庁の調査(本人回答、テレビやゲーム機も含む、学習以外)です。調べ方が違うので、行をまたいで比べることはできません。
小学生には、国の目安がある
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、子どもの睡眠を守るための項目として、こう書かれています。
小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています
そしてスポーツ庁が全国の小学5年生に聞いた調査(令和7年度)では、平日に学習以外で画面を見ている時間が2時間以上の子は、男子63.1%、女子57.1%でした。3時間以上でも、男子42.5%、女子37.2%です。
同じ報告書には、画面を見る時間が3時間未満のグループは、体力の合計点が全国の平均より高かった、とも書かれています。
画面に向かう時間は、何かの時間を削っている
1日は24時間しかありません。学校があり、ごはんを食べ、眠る。残った時間を何に使うかで、子どもの毎日はできています。
画面の前にいる時間が2時間、3時間と増えれば、そのぶん、外で体を動かす時間、家族と話す時間、絵本を読んでもらう時間、眠る時間のどれかが減ります。WHOも幼い子について、座って過ごすときは、保護者との読み聞かせやお話を勧めています。
参考までに、授業と比べてみます。小学4〜6年生の授業は、法令の標準どおりなら年間1,015単位時間(1単位45分)、約761時間です。こども家庭庁の調査では、10歳以上の小学生のネット利用は平日1日平均233.6分でした。休日の時間は調べられていないので、仮に休日も平日と同じだけ使うとすると、1年で約1,421時間。授業の約1.9倍になります。学校のある日1日だけで比べれば、授業(約261分)のほうがまだ長いのですが、1年で見ると逆転しうる、ということです。
その時間を決めているのは、子どもではない
ここが一番伝えたいことです。
どれだけ画面を見るかは、子どもが自分で決めているように見えて、実際には機器を渡し、充電し、Wi-Fiにつなぎ、取り上げずにいる大人が決めています。 子どもは機器を自分で買うことも、通信料を払うこともできません。
こども家庭庁の調査では、小学生(6〜9歳)がテレビでインターネットを使っている家庭のうち、「利用してもよい時間や場所を決めて使わせている」のは48.9%でした。スマホやゲーム機では56.5〜66.7%で、テレビはいちばん少なくなっています。
忙しいから仕方ない、では済ませないでほしいのです。 夕食の支度の30分を動画に頼ることと、帰ってから寝るまで画面を開いたままにしておくことは、同じではありません。前者は多くの家庭の現実で、後者は、子どもの一日の使い方を大人が手放している状態です。
「話題についていけない」は、本当か
冒頭の「かわいそう」に戻ります。
未就学児について、見せないと友だち関係で不利になることを示す公的な調査や研究は、見つかりませんでした。民間の調査ですが、ベネッセ教育総合研究所が2017年に首都圏の母親に聞いた調査では、子どもが友だちと「ほとんど毎日」一緒にしていることは、おもちゃ(48.4%)、外遊び(40.9%)が上位で、テレビ番組は報告書の言葉で「サブ的な存在」でした。
話題についていけるかどうかを心配するなら、見せる時間を延ばすより先に、見たものについて一緒に話すほうが、子どもには役に立つはずです。
根拠の強さについて、正直に
1つだけ、正直に書いておきます。WHOは2〜4歳の「1時間以内」を強く推奨していますが、その根拠の質は、WHO自身が「very low(非常に低い)」と評価しています。日本小児科医会の「1日2時間まで」も、生活時間から考えた目安です。
ただ、根拠が弱いことは、見せ放題でいい理由にはなりません。 画面に向かう時間がほかの時間を削っているのは、研究を待つまでもない、時間の割り算の話だからです。
明日からできること
親として
- 画面を渡す前に、終わる時刻を決めてから渡す
- 一緒に見る日を作る。見たあとに「何がおもしろかった?」と1つ聞く
- 平日2時間を超えている日が続いていないか、1週間だけ数えてみる
保育士として
- 保護者に相談されたら、「何分までに」と言う前に、その子が園でいま夢中になっている遊びを伝える。動画の時間を何に置き換えられるか、家で考える手がかりになります
- 「見せないと話題についていけない」と言われたら、根拠は見当たらないと伝えていい
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