「若い人は子どもを作りたくない」って本当? 調べたら保育の話が出てきました
園長先生から聞いた話をきっかけに、元の調査を読んでみました。「子どもを持ちたいか」は聞かれていませんでしたし、「結婚したくない」と答えていたのは若い人よりむしろ上の世代。代わりに出てきたのが、保育サービスの話です。
先日、園長先生と話していて、こんな話が出ました。
「最近の若い人は、子どもを作りたくないらしいよ」
同じ時期に「未婚の35%が結婚したくない」というニュースも流れていました。なんとなく分かる気もしたのですが、元の調査を読んでみたら、思っていたのと少し違っていました。
まず、その調査は「子ども」を聞いていませんでした
ニュースの元になっていたのは、こども家庭庁が8月末に公表した「若者10万人の総合調査」です。約6万8千人分の回答を集計したもので、規模はかなり大きいです。
ひとつ先に書いておくと、この調査の対象は15歳から39歳です。15〜19歳の回答者が全体の1割ほど含まれています。この点は後でもう一度出てきます。
さて、全部で26ページの資料を読んでみたのですが、「子どもを持ちたいか」を聞いた設問がありません。
子どもに関係する項目は、「結婚のハードル」の選択肢に「こどもをもつかどうかの価値観の違い」があるのと、困ったときの情報源として「妊娠・出産についての相談先」が出てくるくらいです。
つまりこの調査は、「若い人は子どもを作りたくない」の根拠にはなりません。 結婚について聞いた調査です。
「35%」も、少し違いました
では結婚のほうはどうか。
未婚の人に「自分の結婚についてどう考えているか」を聞いた設問で、「結婚するつもりはない」を選んだ人が35.1%。ニュースの「35%」はこれです。
ただ、この調査は親切で、その35.1%の人たちにさらに理由を聞いています。
そこで「結婚したいとは思わない」を選んだのは、53.1%。
残りの半分近くは、こういう理由でした。
- 自由な時間がなくなる・趣味の時間が減る(27.6%)
- 結婚したいと思える人がいない(25.5%)
- 安定した結婚生活を送れる収入への不安(23.5%)
「結婚するつもりはない」と「結婚したくない」は、同じではなかったわけです。
掛け算すると、はっきり「結婚したくない」と答えているのは未婚者の2割弱ということになります。35%とはだいぶ印象が違います。
そもそも、15歳に結婚の話を聞いていいのか
ここで引っかかったことがあります。
この調査には15〜19歳が含まれています。 高校生に「結婚するつもりはあるか」と聞いて、「特に考えていない」に近い気持ちで「つもりはない」を選んだ人がいてもおかしくありません。
そう思って年齢別の数字を探したところ、予想と逆の結果が出てきました。
「結婚したいとは思わない」を選んだ人の割合を年齢で見ると、こうなっています。
| 男性 | 女性 | |
|---|---|---|
| 15〜19歳 | 14.6% | 12.4% |
| 25〜29歳 | 20.8% | 16.4% |
| 35〜39歳 | 26.7% | — |
年齢が上がるほど増えています。 いちばん低いのは10代です。
日韓の調査でも同じ方向でした。「生涯結婚するつもりはない」と答えた人は、20〜24歳で37.7%、35〜39歳で51.2%。14ポイントの差があります。
つまり「若い人は結婚したくない」という言い方は、主語が逆ということになります。若い層ほど、まだ結婚に前向きです。
言われてみれば自然かもしれません。10代・20代前半は「これから」の話ですが、30代後半になると、そこまでの経験を踏まえて「自分はしないだろう」と結論を出している人が増える。同じ「結婚するつもりはない」でも、意味が違います。
しかも、別の調査では数字が変わります
ほぼ同じ時期に、もう一つ調査が出ていました。日本と韓国の若者を比べた「日韓若者意識調査2026」です。日韓それぞれ2,000人ずつ、20〜39歳が対象です。
こちらで「生涯結婚するつもりはない」と答えた未婚者は、日本42.4%。先ほどの35.1%と7ポイント違います。
似たような質問なのに数字が変わるのは、調べ方が違うからです。対象年齢が15歳からと20歳からで違いますし、質問文も「結婚するつもりはない」と「生涯結婚するつもりはない」で違います。回答者の集め方も違います。
なので、「◯%が結婚したくない」という数字を1つだけ見て判断するのは、あまり意味がありません。
ちなみに同じ調査で、韓国の同じ回答は18.6%でした。出生率が日本より低い国のほうが、結婚には前向きという結果です。ここも「思っていたのと違う」ところでした。
子どもの話は、こちらの調査にありました
日韓の調査のほうは、子どもについても聞いています。
未婚で結婚したいと思っている人に、理想の子どもの数と、実際に持つ予定の数を聞いた結果がこうです。
| 理想 | 予定 | |
|---|---|---|
| 「0人」と答えた割合 | 23.2% | 30.7% |
理想では0人と答えた人より、予定では0人と答えた人のほうが多い。 調査自身も「理想子ども数よりも予定子ども数が下回る割合が高い」とまとめています。
既婚でまだ子どものいない人だと、差はもっと開きます。理想0人が43.0%に対して、予定0人は55.7%です。
つまり「欲しくない」というより、「欲しいけれど無理そう」に近いということになります。園長先生が言っていた「作りたくない」とは、少し違う話です。
なお、子どもについては年齢別の内訳が公表されていません。 結婚のほうは「年齢が上がるほど『したくない』が増える」と分かりましたが、子どもでも同じことが言えるかは、この調査からは分かりませんでした。
そして、保育の話が出てきます
同じ調査に、こういう設問があります。
あなたは、次のうちどのようなことがあれば、安心して希望通り子どもを産み育てられるようになると思いますか
既婚で子どもを持ちたいと考えている人が、1位から3位まで選ぶ形式です。
いちばん多いのは「妊娠・出産・子育ての経済的負担の軽減」で、6〜7割。次いで「育児休業制度の充実・普及」「職場復帰における保障の充実」と続きます。
そして、「多様な主体による保育サービスの充実」を挙げた人が2〜3割います。
注目したいのは韓国との差です。同じ項目を挙げた韓国の回答者は1〜2割台で、日本のほうが一貫して高い。
つまり日本では、保育サービスが「子どもを持てるかどうか」を左右するものとして意識されているということです。経済的な支援ほどではないにせよ、その次の層にある。
保育の仕事をしていると、日々の業務は目の前の子どもと保護者に向いています。でもこの数字を見ると、保育の受け皿があるかどうかが、まだ子どものいない人の判断にも影響していることが分かります。
実感と統計は、ずれて当たり前です
ここまで書きましたが、園長先生の実感が間違っているとは思いません。
見ている範囲が違うだけだと思います。
この2つの調査は、どちらもインターネットのモニター調査です。無作為に選ばれた人ではありませんし、こども家庭庁の調査は「途中経過の暫定速報」で、資料自身が「全体の値を参照する際は留意が必要」と注意書きをしています。統計だから正しい、というものでもありません。
一方で、園長先生の実感にも見えない部分があります。園に来ている家庭しか目に入りません。 そもそも子どもを持たない選択をした人は、園長先生の視界には入ってこない。
そして地域差があります。前に書いたとおり、全国では子どもの数が減っているのに、東京では逆に増えています。世田谷区の待機児童は1年で47人から166人になりました。
東京の園長先生と、地方の園長先生では、正反対のことを実感していて、どちらも正しい。 そういうことが起きます。
自分の園はどちら側なのか
だとすると、大事なのは全国の数字ではなく、自分の園がどちら側にいるかだと思います。
- 自分の園の定員に対して、実際に何人受け入れているか
- ここ数年、その数は増えているか減っているか
- 近隣に新しくマンションが建つ予定はあるか
こういうことは、園長先生に聞けば分かります。全国調査の数字より、はるかに自分の生活に近い情報です。
「若い人は子どもを作りたくないらしい」という話を聞いたとき、その場で否定する必要はないと思います。ただ、その話が自分の園にそのまま当てはまるとは限らないということは、知っておいてよさそうです。
そしてもう一つ。調べてみて意外だったのは、「結婚したくない」と答えているのは、若い人よりむしろ上の世代だったことです。
「最近の若い人は」という言い方は、つい口をついて出ます。でも数字を見ると、若い人のほうがまだ前向きでした。この記事を書きながら、自分もその言い方を疑わずに使っていたなと思いました。
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